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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
228/395

討伐完遂

ギラギラとした太陽がまだ高い位置にある。

旨味のあるクエストにありつけなかった冒険者たちがギルドを避暑地にしていた。

夏の間にだけ売られている、少々割高な瓶入りの麦酒を片手に。


アイシャ・パーティは、揃って街歩きでもした帰りにふらっと立ち寄ったかのように、ギルドの扉を開けて受付カウンターに向かう。


「先程、呼称あり個体『三日月』を討伐した」

「証拠らしいものに迷ったが、結局、コレにしたよ」


イザベラが小脇に抱えていた防水布をカウンターの上に乗せる。


「あまり上手に採取出来なかったが、三日月の胸部の皮だ」


アイシャとロザリーが、防水布と一緒に丸めてあったものを延ばす。

まだ、血脂が残るごつごつとした皮は、獣のものとは別物だと一目で分かる。

ざっくりと抉られたような大きな三日月型の傷。


一度でも、『三日月』と対峙したことがあれば、これが本物であるということを疑いはしない、そういう類の圧倒的な存在感。


「所詮は、ただの襤褸皮(ぼろかわ)

「あとの処分はギルドに任せるよ」

「私達はただ、己の闘争の結果を誇るのみだ」


イザベラの言葉に、アイシャ、ロザリー、シャアリィは頷き、真夏の日差しの下へと身を投げ出す。


「さぁ、シャアリィ所望の祝勝会だがね」

「アイシャ、まさか割り勘とは言うまいね?」


ロザリーの挑発を、アイシャは快く受ける。


「応とも」

「好きなだけ飲むがいいさ」

「払いは勿論、私持ちだ」


イザベラは往来の真ん中にも関わらず、アイシャに喝采を浴びせる。


「宴とは、何時も、出し惜しみしないもの」

「リーダーが板に着いて来たじゃあないか」


シャアリィは嬉しそうに、くるくると回って、アイシャの耳にちょっかいを掛ける。

その様子を遠巻きに眺めていたアンソニーの視界は少しだけ、曇っていた。

こんなに生き生きとしているシャアリィの姿を見るのは、初めてだった。


ザグレブホーンの短い夏は、もうすぐ終わる。

何時か迷宮の街でなくなる日が来るとしても、それはまだまだ先のこと。

まだ、出会ってもいない新たな凶獣が何処かで爪を研いでいるやもしれないのだから。


アイシャ・パーティは、シャアリィの宣言通りに、これから山鳥亭に雪崩込み、昼間から酒を飲んで騒ぐらしい。

それが四人で酌み交わす最後の酒になるならば、湿っぽいのはご法度だ。

間もなくやってくる、因縁との決別に相応しい宴。


今日ばかりは、このアイシャ・パーティがザグレブホーンの主役だ。


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