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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
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逃走劇

シャアリィの予想に反して、現在、『三日月』を先頭に、百五十を超える群れがイザベラを追っている。

イザベラは一瞬振り返り、『アテが外れた』かなと、頭の片隅で考えた。

しかし、逆境になれば、むしろ興が乗るというもの。


シャアリィに指摘された通り、イザベラはこれまで全力疾走をしていたわけではない。

縦列に追跡者を整えながら、最初にアイシャに示したタイミング通りの速度を維持していたのだ。


今回に限っては、移動速度を上げ、後続を突き放す策に出た。

驚くべきことに、『三日月』も又、その追跡の速度を増す。

何処かで追い抜き、叩き伏せるつもりでいたのだろう。


集落外郭まで走り続け、さらに大回りで駆け抜ければ大きく引き離された後続は、イザベラと『三日月』の姿を見失うことは容易に想定出来た。


そして、そのルートには、シャアリィの砲撃の跡がある分、森林の中を駆けるよりも幾分は走りやすい箇所がある。


小さな地響きで、背中を追う『三日月』との距離は十分に把握出来るが、他の追跡者はどうだろうか。


(まさか、こんなに上首尾に運ぶとはね)

(琥珀の感性というのは、本当にわからないものだ)


既に後続者たちは置き去りにされ、逃走劇は騎士と裸の王のみの二人芝居となっていた。

そして、二十カウント・ウォーター・キャノンの砲撃跡に達した時、『三日月』が激しい遠吠えを挙げた。


そこら中に散らばるオーガの(むくろ)、今、追っている者こそが、大量殺戮の首謀者であると、『三日月』は、悟ったのだ。


そして、今、自分がその賊を追い続け、この場所にいることを群れに知らしめた。


イザベラは再び警戒を強め、時折、集落の方向を意識する。

もし、『三日月』の咆哮に呼応して、新手が現れるならば、必然、集落側からになる。


だが、位置を確認し合う為に吹くはずの法螺貝の音は、全く聞こえてこない。

それは、つまり・・・


シャアリィが言っていた通りのことが起きているからに他ならない。

『三日月』は、群れに見捨てられたのだ。


ほんの数日で、群れが半分になってしまった原因。

それは『三日月』のせいだと、オーガ達は理解してしまったのだ。

このまま『三日月』に従えば、自分たちも殺される。


『三日月』が恐れていた反逆、それが現在進行形で起きている。


・・・


シャアリィとアイシャは、その頃、舞台を整えていた。

この逃走劇を締めくくるのは、自分達ではない。

そして、今、大活躍をしている最中の騎士でもない。


裸の王を葬るのは、魔眼の持ち主であり、このザグレブホーンのもう一人の主役。


『鏖殺のロザリー』


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