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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
224/395

王手(チェック)

アイシャ・パーティが今日の二回の戦闘で得た魔石は、百二十七個。

今までの作戦の集大成と言える上出来。

その内、雌個体の撃破は七十九、雄個体の四十八を大きく上回る。

イザベラの秘手たるディセイブル・アローの効果は凄まじい。


余裕のあるうちに狩りを切り上げて、ギルドに報告。


「本日はお早い戻りにも関わらず、百二十七個・・・」

「相変わらず凄まじいですね」

「そろそろ、殲滅戦も終盤と察しますが、くれぐれもご無事で」


シャアリィが、笑顔で返答する。


「命あっての物種、だものね?」

「ちょっと、洒落てみました」


アイシャ・パーティの面々は、義理でも面白いと言えない会話に苦笑した。

ギルドの受付嬢には、ほんの少し刺さったらしい。


報告の後は、反省会。

黒猫のテラスのように『reserved』のプレートが掛けてあるわけでもないが、何時の間にか最奥の席にはアイシャ・パーティが座るようになって久しい。


アイシャの思惑の中で、一つ解せないことと言えば、これだけの狩りをしながらも、シャーマンやメイジ等の変異種に出会わないことだ。


だが、イザベラは説明可能だと言う。


「子は親に似る」

「私の先代が若かった頃、今よりもオーガは一回り小さかったらしい」

「それが今ほどの巨体になったのは、『三日月』の影響で間違いない」

「この限られた狭い地域で偏った交配を繰り返せば、自然と似たような個体が生まれる」

「特に父系の割合が『三日月』に偏れば、強靭な『戦士』の個体が多くなるのは必定」

「遺伝の淘汰の中で、変異種が生まれるような多様性がこの三十年は特に少なかった」

「例え、一つ、二つ、いたとしても術式の継承がないシャーマンやメイジ等、大した敵にはならないさ」


その考察には、アイシャもロザリーも納得した。


最後にして最大の難関にアイシャは顔を曇らせる。


「いよいよ、明日から本陣を攻める地道な作業が始まるな・・・」

「さすがに『三日月』直下の群れを丸ごと吸引するのは無謀だ」

「しかし、これ以上、『三日月』の目に触れず、今の方法が出来るとも思えない」

「だが、ゆっくりと進軍していては、『三日月』を取り逃がす可能性も大きい」


ジレンマに陥るアイシャにロザリーも同意する。


「いっそ、『三日月』直下の残党をまるごと引いて琥珀の全力砲撃が正しい、のかもね」

「問題は、倒しきれなかった個体がどれくらい残るか・・・」

「やはり、この方法は無謀すぎるか、ね・・・」


シャアリィは、少しばかり疑問があるらしい。


「私たちの目的はどちら?」

「イザベラの言う、ハイランド・オーガそのものの殲滅か」

「それとも、『三日月』本体の討伐か」

「私は別に、『三日月』直下の群れ全部を丸ごと持ってくる必要性を感じないのよね?」

「やっぱ、結果的にそうなっちゃうのかなぁ」


ワインの瓶とグラスを交互にみやって、シャアリィは首を傾げる。


「シャアリィ、ならば、どうする?」


イザベラが、シャアリィの真意を問う。


「私ならね、『三日月』本体の一本釣りだよ」

「ヘイトを浴びせるのは『三日月』だけ」

「そもそも、『三日月』と他の個体では、かなりの能力差があると思うし」

「イザベラは、まだ、最大速力を出していないでしょう?」

「全力疾走なら、掃討に回る余裕なんて無いはずだし」


シャアリィの勘の良さには、さすがのイザベラも肝を冷やす。


「それに、私の勘が正しければ、群れは誰も追って来ないよ」

「既に群れが半分近く削られている以上、『三日月』の信頼は地に落ちている」

「心中覚悟で付き従う配下がいるとは思えないのよね」


シャアリィの勘が正しければ、既に三日月に王手(チェック)を掛けているということに他ならない。


―――殲滅戦リザルト。


四戦目まで:

スノウ・ウルフ五十体。

ハイランド・オーガ雄個体二百二十五体、但し、未確認殲滅数を除外。

ハイランド・オーガ雌個体百体。


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