敵陣での休憩
イザベラの走破力、アイシャの索敵、シャアリィの攻撃力、そしてロザリーのリカバリー、その全てが寸分のズレもなく噛み合う時、このパーティの最大能力が発揮される。
その脅威は、呼称名付きとして広く存在を知られながらも、三十年もの間、ハイランド・オーガの長として君臨してきた『三日月』の牙城を荒波のように削る。
「砲撃!」
初見でシャアリィのキャノンを躱すには、類稀な幸運が必要だ。
そして、シャアリィのキャノンを躱した魔物でさえも、その命運は間を置かず尽きる。
二十カウントのウォーター・キャノンは、想定通りの破壊を滞りなく完遂する。
直撃を避けられたとしても余波の水圧でさえ致命の一撃、その直径は三十メートルを超える。
イザベラの完全な吸引誘導で縦列化した群れが、それを避ける方法などない。
ただ後方に位置し、ただ外側を追走していたかどうかだけの運、不運。
たった一頭の雌がそれを成した所で、最早、遁走も叶わぬままに・・・
嵐の痕跡を辿るのは、介錯の刃を持つ騎士と、雪のような白い肌の獣人。
四肢が千切れ、内臓が爆ぜ、意識を奪われ、既に亡骸にも等しいものを虱潰しに壊してゆく。
五十四もの胸を抉り、掌だけを赤く染め、命の石を奪い尽くす。
そして、牙城の主は、この狼藉を未だに知らぬままに、王の玉座たる集落の中央から動かない。
「少し休憩しよう」
アイシャが他のメンバーに提案した。
「ロザリー、イザベラの体力が肝要だ」
「十二分の治癒を頼む」
シャアリィが面白いことを思いついたらしい。
「みんな、水筒出して?」
訳のわからないまま、シャアリィの足元に水筒が集められる。
「凍れ」
目の前に極小のアイス・ウォールを展開し、そこに水筒を乗せる。
「魔力が散逸する前にどれくらい冷えるかなぁ」
それを見ていたロザリーが、
「冒険者あがったら、アイスクリーム屋になるといいね」
などと、ほのぼのしたことを言う。
シャアリィが氷結術で冷やした水筒は、意外にも良い出来だ。
「おお、冷たい水というのは、こんなにも美味いものか」
「水筒も冷えていて、張った筋肉に心地良いな」
アイシャも自身の水筒をイザベラに渡し、
「もう片方の脚も冷やすといいよ」
すっかり気の抜けた顔で水筒の冷たさを楽しむイザベラ。
ロザリーは、その表情を目にしっかりと焼き付けた。




