外郭強襲
不都合は付き物とは言え、何度も全滅の危機を味わいながら、誰一人失うことなくこの段階に辿り着いた。
此処にいる四名は、その誰もが兵の中の兵。
だが、その兵であっても『数の暴力』に抗うことは、なかなかにして叶うことではない。
もし、当初の予定通り、三人で挑んでいたならば、パーティ全滅の可能性は格段に上がり、それでなくとも、これ程の短期間でこの成果を出すことは不可能だっただろう。
じりじりと果物の外皮を剥き続け、芯に至るような地道な作業を強いられ、毎日が命掛けでありながら、得る物は少ない日々を根気強く続けなければならなかったはずだ。
そこにシャアリィとアイシャの和解という転換点があり、イザベラとロザリーの協調という変化があり、今日、こうして敵の本陣への強襲が叶ったのだ。
「ウィンド・ウォーク」:移動速度向上
「ストロンゲスト・ボディ」:防御力向上
「ディセイブル・アロー」:投射武器無効化
「マッスル・アップ」:筋力強化
イザベラが始動する。
最初は左廻りのルートから、視界に入った雌個体は全て吸引し、雄個体に至っては、『魅了』の術式で、注意力さえも削ぎ落す。
群れと出会えば、ヘイト・オーラで吸引し、往路で三十ものオーガを釣り上げた。
イザベラにしてみれば少々、思案のし所だ。
無理な吸引だけは避けなければならないが、三十では少な過ぎる。
だが、自重はやはり大切であり、多くの雄個体を釣るために危険を侵すには、まだ早い。
新たな斥候の発見を狙って三十メートル程斜行し、復路の中間を過ぎてから数を整えることにした。
イザベラの始動から約二十五分。
これまでより、僅かに長いルートを走ることは最初から想定されていた。
故にアイシャはただ、イザベラの存在を捉えることに集中する。
「戻ってきたな」
「雌雄混成、割合はちょうど半々という所」
「数にして五十少々、理想的な吸引だ」
「シャアリィ、準備を!」
ロザリーが視線で、イザベラの様子を問う。
「勿論、イザベラは健在だ」
それを聞き、僅かに安堵した後、ロザリーは右手に持つ大きい方のメイスに力を込める。
こういう時は、アタッカーが羨ましい。
だが、傷ついた者を見れば、何時だって己の使命に気付くのだ。
結局、ひとは『ないものねだり』を繰り返す。
シャアリィは二択のどちらが来るかで、そわそわしている。
だが、アイシャは初撃は余程敵の数が少なくない限り、二十カウントと決めていた。
破壊の規模、手間、より負担の重い戦術を、体力が消耗していない時点で試すほうがいい。
問題の炙り出しは、戦術立案の上で極めて重要な事項だ。
「トゥエンティ・カウント、チャージ開始!」
シャアリィの金色の目が怪しく光る。
魔法風が一帯を包み渦を巻く、時折、キラリと光るのは濃密な水分を含む風が強い日差しを反射する煌めき。
「砲撃まで十七・・・十六・・・十五・・・」
アイシャとロザリーは、イザベラが自分達の横を通り抜けるまで、その無事を願う。
そのイザベラは、戻ると同時、そのまま殲滅戦に入らなければならない。
連日、これだけの疾走を繰り広げて尚、泣き言一つ言わないのは、本物の騎士を通り越して、聖人にも匹敵する超人的な覚悟。
シャアリィへの敵接近がないと判断すれば、ロザリーも殲滅戦に参加したい所だが、万一の新手の出現に備えなければならない役回りに歯噛みする。




