20カウント
――― 殲滅戦四日目。
あの日、三人が『三日月』の集落で確認した総数は凡そ五百。
まだまだ多数の雌個体が生存しているものの、雄個体に関しては、ほぼ半数をアイシャ・パーティが撃破した。
戦術の変更は効果的で、『三日月』には種が割れていないことも理解している。
その証拠は、未だ斥候を放つという段階であることが物語っている。
正体が割れるまで、まだ多少は削れるとイザベラは判断していた。
「伐採地の跡も、もう残り少ない」
「今日は、いよいよ集落の外郭から削ろう、と、思う」
「斥候をあれだけ配置していたのだから、『三日月』には、まだ種が割れていない」
「それに、もし、今日、私たちの存在が白日の下になったとしても、既に優位は揺らぎない、と、私は考える」
イザベラの提案に、アイシャも頷く。
「はぐれのオーガを何体狩った所で時間の無駄だ」
「より、本体に近い群れを狩ることには賛成だ、が」
「想定よりも多い群れを吸引してしまった場合はどうする?」
ロザリーが、提案する。
「その場合には、もう、魔石の心配をしている余裕はないね」
「アイシャならば索敵の段階で凡その数がわかるはず」
「そこは琥珀が撃つキャノンの出力をアイシャが臨機応変に調整指示すればどうかね」
アイシャは、ロザリーの難しい注文に応じる。
「さすがにフル・チャージを撃つには、百もの群れだと見切り発車なんだ」
「でも、テン(10)・カウントから、トゥエンティ(20)・カウントに変更ならば制御可能だ」
「イザベラのディセイブル・アローがあれば、キャノンを避ける雌個体が少々多く残った所で急いで救出する必要性も薄いだろう」
シャアリィは、三人の遣り取りを眺めながら、結果が出るのを待っている。
戦術立案は、素人が思う程簡単ではない。
上手く行かなかった場合のことや、不測の事態が起きるならば、どんな時かを把握していなければ、少数パーティはあっという間に全滅する。
自分が多角的に物事を考えることに不向きであると、シャアリィは自覚しているのだ。
意見が出揃った所で、イザベラが何時ものように総括する。
「基本はテンカウント砲撃、場合によってはトゥエンティ・カウントに変更」
「私は、最大で八十までを念頭に、その半数を基準に吸引する」
「テンカウントの場合には、シャアリィにも殲滅に参加してもらう」
「ロザリーは、残党を一つづつ吸引遊撃、アイシャは被弾した生き残りの排除」
「トゥエンティ・カウントを撃った場合には、ロザリーはシャアリィの護衛に」
「アイシャと私で、撃ち漏らしの殲滅と残存排除を行う」
整然としたイザベラの戦術提案に皆が同意する。
「アイシャ、地図を」
イザベラが地図上で最終点検を行う。
「今回は、この前、我々が集落を観察した場所」
「高山稜線側の集落の外れにしよう」
「この位置だ」
地図上で指を動かしながら、イザベラが二つのルートを示す。
「右廻りと、左廻り、集落の外郭に沿って進行し、やや内側を掠めて戻る」
「この二回でも、相当の直属が釣れるはずだ」
「欲張り過ぎないことを肝に銘じておくよ」
冒険者ギルドのテーブル。
アイシャは地図を片付け、シャアリィはチョコレートの在庫を確認し、ロザリーは昨夕治癒した場所の違和感の程度を確認、イザベラは耳の装飾品をチェックした。
「安全第一、命大事に!」
シャアリィの少々気の抜ける号令が、出発の合図だった。




