用意周到
イザベラを除く三人が、今日の狩りの中止を求めたが、イザベラがそれを拒否した。
「準備不足だったのさ」
「相手の手の内が分かれば何ということはない」
「私には投射武器を無効化する術式がある」
「それに防御力向上も予め使っておこう」
「それでも未だ足りなければ、戻って作戦会議」
「この屈辱は、此処で取り戻すことが私には必要だ」
それは騎士としての意地。
譲れないと、イザベラは頑なだ。
「約束してくれ」
「二十以上、吸引しない、と」
「それならば、イザベラのやり方に従おう」
それは最低限の妥協案であり、イザベラにしてみれば選択の余地もない。
目の前で昏倒したというだけで、本来であれば全滅必至の状況を生み出したのだ。
「我儘を利いて貰って申し訳ない」
「この借りは何処かで埋め合わせする」
・・・
アイシャが斥候を見つけるか、或いは伐採地で準備を整えるか、どちらかの条件で本日二度目の狩りがスタートする。
「いた」
アイシャの索敵に引っ掛かったのは、またしても斥候、つまりは雌個体だ。
イザベラは獰猛な笑みを浮かべ、意趣返しの準備を始める。
「ウィンド・ウォーク」:移動速度向上
「ストロンゲスト・ボディ」:防御力向上
「ディセイブル・アロー」:投射武器無効化
「マッスル・アップ」:筋力強化
一体どれだけの数のスキルを持っているのだろうか。
イザベラは一人、口角を吊り上げたままで、
「では、行ってくる」
と。
十五分程が経過し、アイシャが索敵範囲にイザベラの疾走を捉えた。
その速力は十分、敵との間合いさえも完璧。
「十六、十七、十八、十九、二十、丁度か」
思わずアイシャも笑ってしまう。
転んでも只では起きないとは、即ち、こういうことなのだと!
「シャアリィ、ロザリー、イザベラは健在だ」
「今度は、我々がトチらないように迎撃する番だよ」
「特にロザリーは、撃ち漏らしの吸収という難度の高いミッションだ」
僅かな沈黙の後、アイシャが号令を発する。
「テンカウント・キャノン、チャージ開始!」
各々が為すべきことを為せば、それが勝利。
「七・・・六・・・五・・・」
イザベラが完璧なタイミングで戻ってきた。
目の前で投石の被弾を浴びても、痛痒も感じていない恐るべき高速戦車。
「三・・・二・・・」
迎撃チームと擦れ違い様、イザベラは囁く。
「私たちの勝ちだ」




