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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
217/395

戒律違反と失態

ロザリーが目を覚まさなければ、パーティが全滅する・・・

アイシャがそう思った矢先、幸いにもロザリーは意識を取り戻した。


「戒律違反のペナルティで・・・」


その言いながら左手の甲をロザリーがアイシャに見せる。

まるで鍛冶屋の道具で無理やり剝ぎ取ったかのように、五指の爪が全て喪失していた。


「今回は初回だからコレで済んだよ」

「術式や魔力上限は健在ね」


イザベラは重篤だ。

美貌や装甲のある部分こそ無事だが、頭部にも、二の腕にも、太腿にも激しい打撃で出来たような傷が散見される。


ロザリーは躊躇なく、イザベラの治療を最優先した。

一先ず安堵したアイシャは、シャアリィの口に魔力回復薬を流し込む。


「ぐぇ、ふぇ、びやぁああ、まずいぃいい」


シャアリィのポーチからチョコレートを取り出し、鼻先に近付けると、ぱくんという音と共にシャアリィの唇がそれを捉える。


ロザリーが更なるヒールの必要があるかをアイシャに確認。


「大丈夫だよ」

「被弾や物理ダメージを負ったのは、二人だけだ」

「安心して、自分の治療をしなよ」


ロザリーは小さなため息をついて、右手を左手に翳し、


「キュア・ブリード」


と、最下級の血止めの術式を短縮詠唱した。


「私はね・・・自分を治癒するための術式は、最低限のものしかないんだ」

「セルフ・ヒールすら持ち合わせていない」

「これで聖職者の司祭だというんだから、御笑い(ぐさ)だね」


まだ意識を回復しないイザベラの顔を見つめて、


「ヒーラーなら、ましてこのパーティなら、何の問題もないことね」

「イザベラには内緒にしておいて貰えると助かるよ」


歯車が軋むと、即、全滅する戦域で戦っていることはわかっていた。

ただ情報になかったのは、雌個体の戦闘方法。

そもそも、雌個体との遭遇例自体が稀過ぎて、情報が不足していたのだ。


イザベラが目覚めたら、また、戦術を変更する必要があるだろう。


・・・


アイシャの索敵がさらなる敵を捉える前に、一人をイザベラの元に残し、残りの二人で手早く魔石を回収することにした。

十分程が経過し、半ば魔石の回収が終わった所で、イザベラの目がゆっくりと開いた。


「大失態だな」

「非力な雌だと思っていたら、オーガはやっぱりオーガだ」


たまたま番をしていたシャアリィが、大声でイザベラの覚醒を皆に知らせた。


「まぁまぁ・・・」

「失態なんかじゃないよ」

「不測の事態が起きただけ」

「それでもイザベラは、ちゃんと此処まで戻ってきた、すごいよ!」

「とりあえずは、コレを食べて落ち着こう」


相手の返事も待たずに、シャアリィはチョコレートをイザベラの口に放り込む。


「旨い、なぁ」

「今回も、なんとか勝利だ」

「最大の成果を手放すことがなくて、良かったよ」


その瞳には、涙が滲んでいた。

悔し涙か、それとも生還の喜びか、それを問わない程度にはシャアリィも空気が読める。


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