良き友
――― 恋の終わりは新しい恋で上書き出来るだろう。
だが、友を失うことはこの世の終わりまで続く永劫の痛み。
・・・
ロザリーは窓を開け放った教会の宿所で、一人、想いに更ける。
あまりにも傍若無人に振舞ったが故の末路。
思えば友と呼べる者はなく、ただ神のみが彼女の支えだった。
しかし、その神は自分の前に一度も姿を現したことはない。
揺らぐ信仰を戒めるために、自らに課す罪科は鍛錬という試練。
骨格こそ戦士のそれだが、育ち盛りに清貧を貫いたことが仇となり、成長期が終わる頃には、背丈だけが伸びていた。
自ら家督を捨てたというのは美談でしかなく、代々繋いで来た学者という堅苦しい家系に嫌気が差し、教会に逃げ込んだというのが事実。
何もかもを失っても、神の使徒たる身となれば、迷いなど消えると幼い日のロザリーは信じていた。
試練を越える度に、神の恩恵たる治癒術を覚えた。
自分の孤独の理由を他者に求め、その心を覗き見ようと目を凝らせば、その目が魔眼になった。
試練を求め、克服することだけが彼女の悦楽。
そんな色素の薄い瞳が捉えた美しいエルフの少女。
他者の愛によって救われた者。
その愛は、外見の美しさという、偽物の愛!
許せなかった、羨望した、嫉妬した、否定した。
まさか、彼女が友になる日など、微塵も思いもしなかった・・・。
――― 殲滅戦三日目。
まるで昨夜の決闘申し込みが夢幻であったかのように、イザベラは昨日と何も変わらない。
それだけでなく、アイシャも、シャアリィもまた、何も変わらない。
「ロザリー、ちゃんと眠れたかな?」
不意に投げ掛けられたイザベラの言葉に、身体が固まる。
それを持前の胆力で捻じ伏せ、ロザリーは返答する。
「少々浅かったけれど、仕事に支障はないね」
シャアリィ、アイシャは勿論、ロザリーが眠れていないことなど気付いている。
それでも、ロザリーという少女は、こんなことくらいでは挫けないだろう、と。
・・・
「む・・・いる」
アイシャが消えそうな程に小さな魔物の気配を感じ取った。
動かない気配は、それが斥候であることを語っている。
「イザベラ、斥候だ」
「生憎、弩弓は持ってきていない・・・シャアリィの術式でも狙撃用のものはない」
「反応は一つ、どうする?」
イザベラは即答。
「拠点を作ってからやりたかったが、斥候を逃がすわけにはいかない」
「速度向上スキルを使って追い付いて、吸引するよ」
「群れの吸引が少し雑になるが、そこは臨機応変と行こうか」
ロザリーが応じる。
「大丈夫、『三日月』を倒すまでは、私は神に誓って全力を尽くすね」
「どんな状況にも対応してみせるよ」
その声を聞き届け、イザベラは『ウィンド・ウォーク』身に纏い駆け出した。




