凡人
夕刻、冒険者ギルドに持ち込まれた魔石に冒険者達は騒然。
「ハイランド・オーガ百四十五で、宜しいでしょうか?」
たった四人のパーティで、レイド・パーティを超える数の魔石を持ち帰った事実。
それのみならず、メンバー全員が健在の上、被弾すら認められないという埒外っぷり。
「山道を歩けば魔石が落ちてる、て、わけでもないよな・・・」
「俺達とあいつらの何処がそんなに違うっていうんだ」
「神は不公平に世界を作ったってことさ・・・仕方あるまい」
「所詮、俺達は咬ませ犬か・・・くそうっ」
普段ならば平然としているイザベラが。
「私がどうやってこの身体を手にいれたか教えてやろうか」
「毎日、小魚の骨をすり潰したものを主食にし、生肉、生き胆を喰らい」
「口に入れただけで失神しそうな野草の磨り潰し汁を飲み」
「倒れるまで、ただ走り続け、腕の筋肉が断裂する程に大剣を振った」
「たった、それだけのことさ」
「泣き言をほざく暇があるならば、今日より強い明日の自分を作るがいい」
「私はお前たちよりも惨めな薄汚い奴隷娼婦から、立ち上がった」
「それでも、まだ、言いたいことがあるなら、吠えていろ」
「だが、剣を振らぬ者に倒せる魔物はおるまいよ!」
彼女は、凡人にもさえも足りなかった己を振り返る。
「くれぐれも・・・命だけは大切にな」
イザベラは余程我慢ならなかったのだろう。
「アイシャ、ロザリー、シャアリィ、悪いが先に行って喉を湿らせておくよ」
扉を静かに開き、イザベラはゆっくりとギルドから退出した。
静まり返ったギルドの中で、一人の青年が拳を突き上げる。
「もう、負け犬でいることはやめようぜ」
「悔しいが、あの女の言うことは何もかもが正しい」
「まだ、俺達には迷宮踏破っていう晴れ舞台が残ってるじゃないか!」
「焦らず、ちゃんと向き合って、辿り着こうぜ」
その青年は、アンソニー・レジータ。
短剣と長弓を使う斥候、クラス1のしがない冒険者。
ここで拗ねるようならば、最早、救いようもない。
「くそう、くそう、くそう、恰好悪すぎるだろうが、このままじゃ!」
「だな・・・まだやってないことは山程ある」
「間違いねぇ、間違いねぇよ・・・頭が悪すぎるぞ、俺」
アイシャはミヤマの言葉を思い出した。
「お前が弱いのは当然さ、何の不思議もなく、当たり前の事」
「私の武具を持ってしても、お前を英雄にすることは叶わない」
「但し、お前が英雄になれないわけじゃない」
「いいか・・・英雄は生まれないんだよ、育つんだ」
それは、冒険者になる前、今となっては遠い過去の記憶。




