本領発揮
拠点制圧後、イザベラが『行ってくる』と軽快に走り出す。
果たして思惑通り、ウォーター・キャノンでの殲滅は叶うのだろうか。
それは驚く程に快適で、なおかつ各自の負担も今までの狩りとは比べようもなく楽なもの。
イザベラは走破する距離を減らし、アイシャは力むまでもなく生き残りを始末。
そこには余裕十分なシャアリィも参加し、吸引誘導した全てのオーガの魔石を手に入れることが叶った。
ただ、ロザリーだけは自分に割り当てられているヒールと吸引の機会が無く、やけくそのようにオーガから魔石を抉る作業に没頭しなければならなかった。
三箇所目、四箇所目となっても、それは続き、傾き始めるとあっと言う間に沈んでしまう山の太陽を背に、百四十五個もの魔石を手に入れた。
そして、控え目ながら、オーガの肉だけはシャアリィの希望によって確保された。
最早、オーガの装備品など漁るまでもなく、二日目の成果は大勝利。
初日とは、帰路に着く足取りも違う。
イザベラは気付く。
こんな狩り方をしていれば、注意力が育つはずもない、と。
何処か冒険者らしくないシャアリィの性格、その理由を垣間見た。
「ふっふー、ウォーター・キャノン大正解」
「たまには私も満点を貰えるかなって」
それは、アイシャへの要求であり、アイシャもそれに応じる。
シャアリィの柔らかな金色の髪を慣れた仕草で撫でれば、心地良さそうなシャアリィの満面の笑み。
何時もならば、この幸せな瞬間に刹那を感じ、少し感傷的にもなるのだが、今日ばかりはそれもない。
イザベラが戯れに、ロザリーに冗談を言う。
「ロザリー、シャアリィが羨ましいならば、撫でてやらんこともないよ?」
「私は纏めた髪が崩れるのが気になるから撫でられるのは遠慮するがね」
「気に掛けてなかったが、シャアリィと髪色も似ているし、私が嫌ならアイシャにでも頼むがいいさ」
ロザリーは少し顔を赤らめたものの、気丈に言い放つ。
「そんなことをアイシャに頼んだら、私の命が凍るね」
「メイスの射程外から、一方的に瞬殺なんて御免被るよ」
シャアリィがぽつりと零す。
「イザベラならいいんだ?」
その一言で、二人の顔が赤らむ。
かつて、殺し合うことを望むように互いを睨んでいた二人。
四人で並んで歩くこの帰路には、その面影はない。
イザベラが話を逸らすように、三人に尋ねる。
「今日も山鳥亭でいいのかな?」
「私は走り回ったせいで、空腹も限界に近いんだ」
「キャラメルで誤魔化せるような段階は、とうに越えている」
「街についたら、換金を後回しにしたいくらいだ」
アイシャがそれを笑って咎める。
「帰るまでが遠足だ」
「遠足の後は報告、反省会はその後だよイザベラ」
「本物の騎士なんだろう?」
シャアリィが笑いながら、とっておきをイザベラに渡す。
「なんと、イチゴ味のチョコレートです」
「これを食べて、もう少しだけ頑張りましょうね」
―――殲滅戦リザルト。
二戦目まで:
スノウ・ウルフ五十体。
ハイランド・オーガ百四十五体、但し、未確認殲滅数を除外。




