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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
210/395

大量殺戮

イザベラが原生林の木陰に消えてから、約二十分。

最早、アイシャが索敵をするまでもなく地響きが伝わってくる。


「結構、派手に集めたね」

「アイシャ、カウントと戦術指揮任せたよ」


ロザリーの薄い色素の瞳が、殺戮者のものへと変わる。

アイシャは、神経を索敵に集中させ、状況を把握した。


「敵数七十以上・・・多過ぎて判別が追い付かない」

「ほぼオーガの全力での追跡速度からして、イザベラは余裕で健在だな」

「シャアリィ、準備して」

「私の開始の合図で、チャージだよ」


沈黙の数秒が、じれったく長く、三人にプレッシャーを与える。

地響きに交じって、倒木の音が聞こえ始めた、その時、アイシャが沈黙を破る。


「フル・チャージ開始!」


シャアリィの足元から突風が巻き上がり、カウントが始まる。


「全力砲撃、射出まで残り二十九秒」


まるで森林の氷結精霊全てを搔き集めたかのような、濃密な魔力風は湿気を帯びている。

僅かにだが、酸素の濃度さえもが減り、アイシャとロザリーは息苦しさを覚えた。


「二十・・・十九・・・十八・・・十七・・・」


小型の竜巻が複数発生し、その中では放電現象が火花を散らす。


「十二・・・十一・・・十・・・九・・・八・・・」


イザベラの姿をアイシャが視認、シャアリィのワンドが最終段階の砲撃補正に入る。


「四・・・三・・・二・・・」


張り巡らせた根でしっかり大地に固定されているはずの切り株の幾つかが隆起し、その中の一つが空高く巻き上げられた。

待機していた三人の横を擦り抜け、イザベラはそのまま少し走った所で振り返る。

それはシャアリィの全力砲撃と同時。


「砲撃!薙ぎ払えぇええええ!」


シャアリィの全身から立ち上る氷結のオーラ。

構えたワンドの先端から放たれる落雷をも超える超出力の一撃!

オーガは、先頭から十体程が完全に消滅し、後続は次々と全身を蹂躙され弾け飛ぶ!

大きな氷の粒子がぶつかる度、閃光が奔り、硬質な氷結音がシンフォニーを奏でる!

かつての全力砲撃ですらネームド二体を串刺しにする威力なのだ。

今のシャアリィは、当時のレベルの二倍の経験値を積み、此処はザグレブホーン。

其の一撃は、直径五十メートル、距離にして五百メートルにも及ぶ大破壊!


撃ち漏らしなどあるわけがない。

イザベラが引き連れてきた百体近いオーガを一撃で全て駆逐した。


(みぞれ)・・・真夏のザグレブホーンに、雪と雨が入り混じった霙が降る。

それは、シャアリィが放ったキャノンから解放された精霊の名残り。

直後、シャアリィに向かって吹き戻しの冷たい風が返ってきた。

ロザリーは、慌ててパーティを集め、範囲治癒術のヒーリング・サークルを展開。

自らのパーティにさえダメージを与える、寒冷の余波を凌いだ。


ふらふらと、踏鞴(たたら)を踏んで、シャアリィの身体が重力に抗えずに倒れる。

アイシャはその肩を胸で抱き留め、優しく(うずくま)る。

凄惨な砲撃後を眺めて、ロザリーは震えながら、


「魔石の回収・・・どうするね」


と、深刻な顔でパーティに訴えた。


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