貴族邸、再び
シュベルドの屋敷、その敷地の入り口、慌ただしく使用人達が動く。
来訪の挨拶の言葉を発する前に、執事の一人と思われる若い男性がアイシャ達に声を掛ける。
「シュベルド家の末席執事、パトリック・ミューゼルと申します」
「本日のお客様・・・」
「アイシャ・セロニアス様」
「ロザリー・イグシエンヌ様」
「シャアリィ・スノウ様」
「お待ちいたしておりました」
その所作は一種の凄みがあり、微笑みを張り付けた表情の中に光る眼光。
名前を呼んだ際の反応で、即座に体の向きを僅かに正対に入れ替え、客人を滞りなく認識する。
こういう所作をエレガントというのだろうか。
東の達人、ランドウ・ミヤマとは全く違う意味での洗練。
ロザリーが、三人を代表し、パトリックに礼を述べる。
「この度は、晩餐の席にお招き頂き感謝致します」
「皆、普段は冒険者稼業のならず者故、無作法につきましてはご容赦下さい」
互いに向かい合って深い礼をした後、パトリックの先導でシュベルド邸の庭を歩く。
「なかなかの激戦だったようですね」
「イザベラ様が緊急の装備修復を命ぜられたので、少し騒がしいのですが、ご容赦を」
「普段は非常に優しい方なのですが、魔物討伐となると血が逸ってしまうようですね」
広い庭も、お喋りをしながらであれば苦痛を感じる間もなく、玄関に辿りつく。
パトリックは自らの手で扉を開き、アイシャ達を屋敷の中に招き入れた。
イザベラはロビーのソファに腰を下ろして、アイシャ達の到着を待っていた。
「皆、揃ってるね」
「新しいメンバーも増えたことだし、今日はちょっとした宴といこうじゃないか」
此処がシュベルド邸のロビーということも気にせず、ロザリーがぼそりと呟く。
「毎日、宴みたいなものね」
思わず、アイシャも、シャアリィも、少し吹き出した。
晩餐の正装に着替えたイザベラは、そんな様子さえも楽し気に見守り、
「食事が出来上がるまで、談話室で過ごそう」
「パトリック、今日も暑い」
「冷たいものを用意してもらえないか」
主の命に、大きな礼で答えたパトリックが懐からチャイムを取り出し、鳴らす。
すぐさま現れた侍従の女性に、冷えたスパークリング・ワインを談話室に届けるように伝えた。
「では、私は控えます」
「侍従を残しますので、御用の際には何なりとお申し付けください」
気品に満ちた背中を見送り、四人は談話室へと向かった。
固いブーツの足音が、柔らかな絨毯で無音となる異質な階段。
その階段のすぐ脇の部屋、シュベルドの屋敷の部屋としては、もっとも小さな部屋なのだろう。
扉を開くとすぐに目に飛び込んでくるのは、大理石のテーブルと六脚の一人用のソファ。
シャアリィが、その座り心地を確認するように掌でソファ背凭れに触れる。
「パンケーキみたいにふわふわだ・・・」




