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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
205/395

殲滅戦の鮮烈な幕開け

多くの離脱者を出し、それは既にザグレブホーンの街中に広まっている。

商店の品物の価格は僅かばかりだが値を上げ、諦めの迷宮の街も諦観に染まる。

掲示板に新しく貼られるクエストはギルド指定が目立ち、再び、過疎の始まりの鐘が鳴らされたと残った冒険者が嘆く。


そこに戻った、アイシャ、ロザリー、シャアリィ。

隊列にイザベラの姿がないことが周囲の目に留まるや否や、殲滅戦の失敗を嗅ぎつけた野次馬の下衆な視線がパーティに注がれる。


「こちらを換金してもらいたい」


アイシャが差し出した革袋から覗いたのは、極上の氷結魔石。

年に数度もお目に掛かれないスノウ・ウルフのものだ。

ギルド職員が、それを鑑定皿に乗せようとして、革袋の重さに小さな悲鳴を上げる。


「ちなみに、幾つくらいありますか?」


ロザリーが事も無げに片手を開く。

それが五十だという意味は、誰の目にも伝わった。

鑑定皿の上に晒された魔石は、その全てがスノウ・ウルフから採取されたもの。

大きさ次第では、一粒で金貨一枚に達することもある。


「スノウ・ウルフ五十・・・さすがにこれだけの価値のある魔石の場合には、詳細鑑定も必要ですので、少々、お時間を頂きます」

「ちなみにイザベラ嬢の姿が見当たらないようですが・・・」


誰もが聞きたかったその答えを発したのは、シャアリィだった。


「ロースト・ウルフを作りに、先にお家に帰ったよ?」


よく見れば、此処に来ている三人の誰もが、傷一つ負っていないことに今更ながらに周囲の者は気付かされた。

野次馬の一人が、帰還したパーティメンバーに問う。


「じゃあ、イザベラは健在・・・初日でスノウ・ウルフ五十撃破ってことか?」


アイシャが呆れて、少し大きめの声で返答する。


「それ以外にどんなことがあるっていうんだ」

「さすがに五十もやれば疲れもする」

「今日は早めの手仕舞い・・・それだけだ」


ざわめきが起き、冒険者連中が掲示板に急ぎ足で駆け寄る。


「狩れるものを狩らなきゃ、奴らに全部喰われるぜ?」

「まずは、旨味のあるクエストから片付けよう」

「ちょっと、そこの伝票!俺が受けようとしてたやつ!」

「早い者勝ちって言葉知ってるか?」


小さな『さざ波』かも知れない。

だが、諦めの迷宮には、まだ、冒険者が残っている。

その光景に、受付嬢は少しばかり期待を膨らませ、


「殲滅戦、無理しないで下さいね」

「あなたたちの成功をギルド一同、心から願っていますから!」


此処はザグレブホーン。

終わらない迷宮に心を折られ、それでも、まだ、挑む者がいる街。

その行方の天秤を傾けるのは、アイシャ達の殲滅戦パーティ。


「少しばかり休息を挟むが、殲滅戦は続行するね」

「私達は『三日月』討伐を必ず成し遂げる」

「今後も魔石の買い取り、宜しく頼むね」


厳かに、必勝を言い放つ殺戮者の若草色の瞳が、この殲滅戦の苛烈さを物語っていた。


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