最も大きな戦果
まだ太陽が真上に近い帰路。
パーティの足取りは軽くない。
「初日から酷い目にあったな」
イザベラが苦笑いしながら、パーティメンバーに同意を求める。
その言葉で、シャアリィは俯いた。
その頭の上からロザリーが、茶化す。
「こんな時こそ、空気なんて読んじゃだめね」
「琥珀はちゃんとやれてたし、私達だってキャノンの試し打ちに同意したよ」
「良い教訓になったね」
アイシャも、少々落ち込んでいるようだ。
「私がアレを提案しなければ、もっと、楽な行軍だったんだ」
「済まない・・・」
イザベラが場の雰囲気を一転させるべく、総括。
「負け戦みたいな顔をしてて、どうする?」
「少なくとも私は、初日、否、ザグレブホーン始まって以来の戦果を誇るよ」
「私の宿敵はハイランド・オーガだが、スノウ・ウルフにも相当やられた」
「その意趣返しが出来て、ちょっとばかり気分がいい」
それに・・・と、言葉を続ける。
「生き残ったじゃあないか」
「それが最大の戦果だよ」
ロザリーも大きく頷いて、
「装備の修理に時間が掛かっても、また、同じメンバーで挑めるね」
「忘れがちだけど、生き残ることは、最大の戦果」
「アイシャも、恥を捨てて生き残ったからこそ、私達と会えたし琥珀ともイチャつける」
シャアリィが神妙な顔で、アイシャを見つめる。
自分の知らない所で、こんなに愛されてるなんて・・・
でも、不思議なことに嫉妬の炎はまったく揺らめかない。
「今日も、山鳥亭?」
「私もあそこ気に入っちゃったんだ」
「三人だけで何時も楽しんでたのは、ちょっと不満だけどさ」
イザベラが提案する。
「今日はウチで食事しないか?」
「琥珀の気に掛けていたウルフの肉もあることだし」
「うちの料理長にとびきりの奴を作ってもらおう」
「ギルドで魔石の精算をしておいてくれ、私は先に一度、邸宅に戻る」
アイシャが、魔石の入った革袋の口を少しだけ開けて、ひとつを手に持つ。
魔物が凶悪であればあるほどに、それから獲れる魔石は美しい。
宝石と見紛う、否、これは魔力の宝石。
「綺麗だねー」
「少しだけ青み掛かってるけれど、水晶みたいにピカピカだ」
シャアリィは、目を輝かせてアイシャの手にある魔石を見やる。
アイシャは思う、もし、シャアリィの胸の中にある『魔核』を見ることが出来たなら、きっと、これが硝子玉のようにしか見えない程に、美しいのだろう、と。
それは、多分、生涯見ることの叶わないものだが。
「今日、回収した分は、まず、イザベラの装備の修理費にしよう」
「私達が無傷で、イザベラだけが損をするのは良くない」
「イザベラが金持ちかどうかなんて、関係ない」
アイシャはきっぱりと言い切った。
皆、忘れていない、このパーティのリーダーは、アイシャなのだ。
リーダーの提案でなくとも、皆、同意する。
――― 殲滅戦リザルト。
初日の戦果・・・スノウ・ウルフ五十体。




