空気が読めないなら
結局、ショートカットとしては大した意味のない砲撃だったが、シャアリィの規格外の攻撃能力をお披露目するには絶好のタイミングだった。
正気に戻ったイザベラが、アイシャに問う。
「きみほどの戦士が尻に敷かれても、あれならば納得だ」
「くれぐれもザグレブホーンで痴話喧嘩は勘弁してもらいたいね」
「仲裁に領主軍の出撃を進言することになりかねない」
何処までが冗談で、何処までが本気か、よくわからない。
・・・
湖を掠め歩を進めているというのに、獣にさえ遭遇しない。
「数十分は、会敵しないかもね」
「最早、本当の魔法砲台を見るとは思わなかったよ」
「よくもまぁ、あんな馬鹿気た魔力をコントール出来るものだと感心するね」
ロザリーは完全にシャアリィにビビってる。
それでも尚、軽口を叩こうとしている所が、少々可愛らしくもある。
対比的に、可愛らしく振舞っているシャアリィが、アイシャ以外には少しも可愛くない。
勿論、パーティを組むならば、強いに越したことはない。
それを十二分に理解した上でも、ロザリーはシャアリィとは金輪際だと決めた。
「ロザリー、きみの予測は外れたね」
「木立のかなり向こうだが、こちらと並行して移動する魔物がいる」
「恐らくスノウ・ウルフだ」
「数は不明・・・増えそうな気配だ」
「現状十体前後」
シャアリィが傍にいるせいなのか、それとも、これが実力なのか。
アイシャの鋭敏な耳が敵の気配を捉えた。
イザベラはルートに変更なしを告げる。
「向こうにしてみれば、恐らく一方的に観測出来る距離だと思っているのだろう」
「並みのパーティなら、実際、そうだった」
「来るなら、後方からだと思う」
「スノウ・ウルフだけじゃなく、オオカミというのは追い込み猟の名手だ」
「別に会話をやめる必要もないし、むしろ、錯覚させたほうが得策」
イザベラの指示に皆が頷き、先程までと同じような全方位警戒を続けながらの行軍。
「スノウ・ウルフって美味しい?」
「この前、ハイランド・オーガ食べたけど、結構美味しかったから」
「もし、美味しいなら、倒した後、肉の採取したいなって」
こちらが食われるかもしれないのに、シャアリィは相変わらずだ。
「成程・・・」
「アイシャが言っていたのは、こういう所なのだな」
「注意力が欠落している、と」
アイシャは無言で頷く。
「シャアリィには悪気はないんだ」
「常人の感覚というものが、多少、理解出来ない部分があるのは、多めに見てほしい」
シャアリィも、少し気まずい雰囲気を察し、
「なんか、ごめんね」
「私、黙っといたほうがいい?」
「ちゃんと大人しく出来るよ?」
イザベラ、ロザリーは互いの顔を見合わせて、小さく頷く。
「否、私達がシャアリィに合わせるね」
「豪胆なのは嫌いじゃない」
そう許しの意見がロザリーから出された。
「今まで、アイシャ以外と狩りをする時、大体の場合、しっくりこなかっただろう?」
「このパーティでは、それも気にすることはない」
「シャアリィ、空気が読めないならば、読まなくてもいいさ」
「折角、一緒にやるんだ」
「居心地を悪くするまでもなく、私たちのもてなし不足だよ」
アイシャは初めて、このメンバーで来て良かったと感じた。
戦闘力でなく、シャアリィという少女が受け入れてもらえたようで嬉しく思った。




