ファンファーレ
「じゃあ、皆、射線から離れてね」
「チャージ開始・・・氷結臨界九秒前」
ザグレブホーンの氷結精霊の密度は、グリーン・ノウズの倍にも達する。
その精霊が集い、巻き上げる魔法風は予想よりも遥かに激しく十カウントですら、小枝をへし折る突風!
「五・・・四・・・三・・・」
魔法砲台であるシャアリィの足元には、既に枯れ枝一つなく、濃密な水分の集中によって、パーティメンバーの前髪は額に張り付いた。
さざ波が砕ける潮騒のような音が大きくなり、ついに周辺の大木が傾き始めた。
「一・・・砲撃!」
圧倒的な直進力を誇る魔力が森林を貫き、圧縮された空気と凝結寸前の水分がその通り道を瞬時に氷結させる。
直径約七メートル、距離八十メートルにも及ぶ大破壊。
大木が弾け飛び砂塵が舞い上がり、氷結の魔力が水に分解された後、何もない空間がシャアリィの目の前に広がった。
「あっれえ、十カウントってこんなに強かったっけ、てへぺろ」
そう、これで最大出力の三分の一未満。
「これが・・・フローズン・キャノン・・・」
ロザリーは、自身が感じたシャアリィへの恐怖が証明され、その場にへたり込む。
何度もコレを目撃してきたはずのアイシャでさえもが、フル・チャージに迫る破壊に苦笑いするしかないのだから、初めて見せられたロザリーやイザベラの心中は察しようもない。
「み、見事なファンファーレだった!」
ここが原生林の入り口であるということも忘れ、イザベラはシャアリィに喝采を送る。
だが、その心中は、畏怖、困惑、賞賛で乱れ、それ以上、言葉にならない。
「で、ここ、まっすぐ歩いちゃっていいの?」
まだ、正気に返るには時間の掛かりそうなパーティ・メンバー。
シャアリィは、念のため、と、あの物騒な黒い液体を飲み干して、口直しのキャンディを急いで包みから取り出し口に放り込んですぐに嚙み砕く。
「おーい、みんな、どうしたー?」
「戻っておいでー?」
「ああ、そっか、ここザグレブホーンだからねー」
「氷結属性溢れまくりの土地柄、キャノンも元気数倍ってわけだね」
「道理で迷宮でも、狩りが呆気なかったわけだ」
一人、腑に落ちたシャアリィが、楽し気に笑う。
「魔物、逃げちゃったねー」
「さすがアイシャ、いいこと思いつくじゃん」
背伸びしてアイシャの頭を撫でるシャアリィに好き放題されるまま、
「こんなに凄まじいとは、思ってなかった」
「今日、キャノンは五カウントで十分だと思うよ・・・」
出力制限を間違った、と、己の判断を後悔した。




