魔人シャアリィ・スノウ
「あれ・・・私、生きてる?」
記憶も視界も少し混濁している。
程よく温まった暖炉の熱が、再びシャアリィを眠りの世界へと導きそうだ。
シャアリィ・スノウの心臓は確かに、あの時、あの場所で停止した。
それにも関わらず、今、彼女に思考する意識がある理由・・・。
「やはり再生しましたか」
二度目の眠りに落ちそうなシャアリィに、そう問い掛けたのは、真っ白な獣人の少女だった。
真っ白。
肌も、長い髪も、耳としっぽにある体毛も、全てが白金のように白い。
ただ瞳だけはエメラルドのような知性に満ちた深い緑色をしている。
細身でシャアリィより一回り程身長が高い。
「あなたが助けてくれたの?」
「で、此処は何処?」
「あ、まずはお礼を言わなくてはね」
「私はシャアリィ・スノウ・・・氷結の魔術師です」
「ありがとう、助かりました」
シャアリィの言葉に、何故か白毛獣人の少女は顔を曇らせた。
「あなたのことは知ってる・・・ちょっとした有名人だもの」
「私はアイシャ・セロニアス・・・ここは私の宿です」
「他に同居はいませんので、ご安心下さい」
「あの・・・信じ難い話でしょうが、落ち着いて聞いて下さい」
「あなたは・・・あのフローズン・ドラゴンのブレスで死んでいました」
「しかし、奇妙にも、あなたの身体は氷結から開放されていた・・・」
「再生の兆しでは、と思い」
「氷のように冷たくなったあなたを回収したのは私ですから、間違いありません」
返された言葉にシャアリィは、一瞬、ぞわっとしたが、現にこうして会話をしているのだ。
「いや、体も五体満足だし、こうして話も出来るし」
「助からなかったなんて・・・私、生きてますよ」
思わず胸に手を当てた時、シャアリィの顔が強張った。
「心臓・・・動いてないですよね?」
「体温も少し低いし、多分、呼吸しなくても平気なはずです・・・」
「あなたは死んでるのに、動いているのですよ」
・・・全てが獣人の少女の言う通りだった。
何が起きている・・・のか、シャアリィには理解出来ない。
「フローズン・ドラゴンのブレスを受けたが、何らかの不条理であなたの身体が適応した」
「あなたも氷結属性だった為にブレスの魔力を吸収したからではないか、と」
「結果、あなたの心臓は破壊されたけれど、魔核が形成された」
「即ち、今のあなたは氷結の魔人ということに」
冗談のような話だ。
「え・・・あはははははは、冗談でしょう?」
「心臓・・・何処・・・本当に動いてない」
「魔人・・・私が?」
獣人の少女は答える。
「実はあのドラゴンが浅い階層まで来てしまったのは、私のせいなのです」
「私達のパーティが、地下七階でアレに遭遇しました」
「他のメンバーは全てやられて、私だけが気配遮断のスキルで上層に逃げ延びました」
「多分、アレは、私を追ってきたけれど、途中であなたと遭遇して私を見失った」




