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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
198/455

閑話:取扱説明

アイシャの心配は、実は他にもある。

それは、シャアリィの集団行動への適正の欠如と『暴走』だ。


経験を積む毎に、その傾向が減ってきたと言っても、シャアリィの感情の起伏に関しては何が起きるか予想出来ないだけに、先にイザベラ、ロザリーに教えておく必要がある。


「えっとだな・・・シャアリィはとても嫉妬心が強くて」

「その結果、時折、暴走してしまうことがあるんだ」

「それと、シャアリィの最大火力は、一瞬でオーガ百頭を吹き飛ばせるが・・・」

「術式発動まで三十秒の完全無防備なチャージタイム、発動後には完全な魔力枯渇に至る」

「相手の術式を破壊するジャミングを持ち、自分の術式は短縮詠唱で発動できる」

「全部の術式は公開出来ないが、土石、氷結、陰根源転換の三属性持ち」

「あと・・・アレだ、やたら動体視力が良くて、短剣を扱うのも上手い」


イザベラとロザリーは揃って顔を青くする。

一度でも問題を起こせば、教会に封印指定されかねない程の戦力。

術式使いでありながら、近接戦闘まで出来るという化け物中の化け物。


「だが、防御力に関しては皆無なんだ」

「ガーゴイルとの戦闘で死にかけたこともあるくらいに、ぺらっぺら」

「体力、膂力、スタミナに関しては町娘と大差ない」

「それに危険に対する注意力が明らかに欠落している」

「回避を度外視にしてでも、攻撃という思考になり易い」


ヘラっと笑っているシャアリィと、その隣で真剣に説明するアイシャのコントラスト。

イザベラは『火薬庫を持ち歩く』アイシャに同情する。

最早、ロザリーは、ただ、シャアリィと敵対しないようにと身を縮める。


これだけ取扱について説明しておけば、簡単なことでは問題は起きまい。


「イザベラって、貴族で騎士なんだよね?」

「童話の絵本でしか騎士なんて見たことなかったから、感激」

「ちょー綺麗だし、スタイルもちょーナイスだし!」


少し酔いが回ってきたシャアリィが、とんでもないことを口走る。


「耳・・・触りたい・・・触っちゃだめ?」


その一言にイザベラの顔が引き攣る。

如何に自分が戦車(タンク)でも、一応は年頃の乙女であるという自覚。

誰にも一度も触らせたことのない、耳・・・。


「うぅ、ほんのすこし、本当にほんのすこしだけ、だからな」


シャアリィが、目を輝かせて喜ぶ。


「いーの!?まじで!?じゃあ、そっと、ね」


予期せぬ失態を起こさぬように、イザベラが身体を強張らせて唾を飲み込んだ。

シャアリィの少し冷たい指先が、耳の先を撫でる。

イザベラの身体が、がくがくと震えて、次の瞬間、耐えられずシャアリィから離れた。


「・・・き、は、済んだ、か、な・・・はぁ、きみたちは何時もこんなことを・・・」


夜の営みに無縁なのは、ロザリーも同じ。

二人の遣り取りで、何処か、変なスイッチが入ってしまったようで顔を赤らめた。


自分の耳を触って確認した所で、何もわからないアイシャだった。


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