飛び入り
アイシャ、イザベラ、ロザリーの三人は、腹を括った。
最早、当初の決行日程を待つ必要もなくなった。
夕暮れ、三人は最後の晩餐になるかもと冗談を飛ばしながら、山鳥亭に向かう。
からんからん、と、何時ものように食欲を掻き立てるドアベルを鳴らせて店に入り、お気に入りの最奥席に行ってみれば、アイシャには見慣れた、イザベラとロザリーには、ほぼ初顔合わせとなるシャアリィが座っていた。
思わず戦慄したロザリーが、
「げぇ、琥珀!なんで此処に?」
と、率直な感想を漏らす。
何時ものシャアリィならば、『いちゃいけないの?』と、少しばかり不機嫌になる所だが、満面の笑顔のままで答えた。
「そりゃあ、待ち伏せしてたからでしょう」
「私が此処にいる理由、もう、三人共理解してるんじゃない?」
「まぁ、先に座って下さいな」
シャアリィを間近で見るのが初となるイザベラが、その端正な顔立ちに驚く。
そして最初に椅子を引き、シャアリィと同じテーブルに腰掛けた。
「全然、イメージと違ったな」
「知っていると思うが、私はイザベラ」
「はじめまして、シャアリィ・スノウ」
置いてきぼりにされていたアイシャが、無言でシャアリィの隣に座る。
ロザリーは、イザベラに倣いシャアリィに挨拶をして着席。
「ろ、ロザリー・イグシエンヌ、普通にロザリーと呼んでくれていいね」
皆が着席した所で、アイシャが口を開く。
「私は前以て言った通り、シャアリィの参加は反対だ」
「此処まで準備を積み重ねて辿り着いたのはイザベラ、ロザリーの協力があったからこそで、特別扱いするわけにはいかないよ」
ロザリーが、手を叩き、ウェイターを呼ぶ。
「まぁ、まずは一杯ね」
「酒も料理も頼まないうちから、テーブルを使うのはマナー違反よ」
「ここん所シケた顔しか見てなかったから、たまには皆で麦酒を飲むことを提案するよ」
この蒸し暑い夏の宴の一杯目、反対する者はいない。
「何より、一番早くテーブルに酒が揃うからね」
シャアリィを見たロザリーは、一種の恐怖を感じ、すぐに飲まずにいられなくなったのだ。
その向かい側では、シャアリィがアイシャのしっぽを愛でている。
どう見てもそれは、既に完全な和解を果たした仲睦まじい恋人同士。
「シャアリィ、おとなしくして」
「私、少し怒ってるんだから」
「勝手に飛び入りするなんて全然知らなかった」
「最低でも、二人の説得は自分でするんだよ」
そう言いつつもアイシャは、もう、絆されていた。




