薔薇色の終焉
「今日が此処での最後の狩り」
「今まで本当にありがとうね」
「でも、まだまだザグレブホーンには滞在してるから、見かけたら声掛けてよ」
夕暮れ、何時ものように狩りを終えた、シャアリィとアンソニー。
小奇麗な茶髪の青年は名残惜しそうに、じっとシャアリィを見つめる。
「告白の返事・・・聞かせてもらってもいいかな?」
「今は未だ全然なんだけど、きっと、ずっと、今より強くなるし!」
「それに俺ん家、漁師なんだけど船持ちの網元ってやつだから、冒険者止めても生活はちゃんとやってけるんだ」
「それに・・・それに・・・俺、シャアリィが好きだから!」
シャアリィは、既にアンソニーへの興味を失いつつあった。
あまりアイシャを長く待たせるわけにもいかない。
有体に言えば、潮時が来たのだ。
「私、好きなひとがいて、その人も、私を好きでいてくれるんだ」
「多分、一度くらい見たこと、聞いたことあるでしょう?」
「アイシャ・セロニアス」
知っていたよ・・・と、アンソニーは俯く。
あの真っ白な美形の獣人。
でも、あのひとはシャアリィと同じ女じゃないか。
「シャアリィは、男が好きじゃないの?」
「女同士なんて間違ってないか?」
今までもたまに小耳に挟んだ余計なお世話。
こうして面と向かって言う者がいるなんて、シャアリィは思いもしなかった。
でも、別に怒る気もしない。
「そうねぇ、間違ってるかもねー」
「私は、男だからとか、女だからとか、考えないからねー」
「将来のこととかも、別に心配してないし」
「私、意外にお金持ちなんだよ?」
「ここの迷宮だけで、どれくらい稼いだかってアンソニーも知ってるじゃない」
「お友達じゃダメなの?」
長い間、シャアリィの時間を独占してきた。
勿論、狩りの時間や、たまに食事をする程度だったけれど。
それでも周囲からの羨望の眼差しは心地良くて、このまま付き合えるかもとアンソニーは期待していたのだから、今更、友達と言われても引き返せはしない。
「わかったよ」
「もう、いい」
「俺はフラれたってことだな」
シャアリィは、後味よく自然消滅出来ればと思っていたが、決定打を本人が所望するならば、仕方ないなと、それに応じる。
「そうね」
「私はアンソニーの彼女にはならない」
「友達という選択肢しかあげられないんだ」
「それが駄目なら、本当のお別れだね」
「じゃあ、元気で」
シャアリィにしては珍しい程に、わざと傷つける言葉を言うわけでもなく。
アンソニーにとっての薔薇色の時間は終わりを告げた。
シャアリィも、アンソニーも、失ったものは何もない。
互いに仕事を支え合っただけなのだから。
むしろ、アンソニーにしてみれば、手堅く稼げる相方を失う方が、失恋の痛手よりも辛いと感じるかも知れない。
身軽になったシャアリィは、明日から空いた予定をどうするか、それに悩むのだった。




