パーシモン・ルイス
翌日、やることもなく、漠然と三人は冒険者ギルドに足を向けた。
それを迎えたのは、パーティ・リーダーの唯一の生き残りパーシモンだ。
肩幅こそ広いが長身痩躯、どちらかと言えば槍使いを思わせる長い手足。
実際、パーシモンは、槍職からタンクにコンバートして半年。
それを可能にしたのが、彼の固有スキルである自己再生、瞬時に自身の体力を大幅に回復するという驚異的なスキル。
再使用には二十分という長いクールタイムが必要だが、絶体絶命のピンチを自らの力で回避できる効果は継続戦闘においてタンクを担うに値する。
「イザベラさん、ロザリーさん、アイシャさん・・・お願いがあります」
「僕を・・・殲滅戦に同行させて下さい」
近しい年齢のパーシモンに頭を下げられて、イザベラは困惑した。
「正気で言ってるのか?」
「お前、今度こそ死ぬぞ?」
ロザリーもイザベラ同様、パーシモンの参加には否定の意志を示す。
「どの道わかることだから、ここでバラすね」
「私達は『三日月』の集落を襲撃する」
「そこにいる個体数は、雌雄含めて五百は下らない」
「私達でさえのんびり出来るような場所じゃないんだよ」
パーシモンは折れない。
「本気です」
「皆さんに比べれば、僕なんて数合わせにもならない弱小な冒険者だってわかってます」
「足を引っ張って、余計な手間を増やすことだって・・・承知の上です」
「途中で死んだら放り捨てておいて貰っても構いません」
「でも、僕は・・・例え自分の手でアレを殺せなくても、せめて見届けたい」
「そうしなければ、僕の冒険者人生は終わる」
「自己満足の我儘を押し付けているのは承知で、お願いします、同行を!お願いします!」
頭を下げるパーシモンの右手をアイシャが握る。
「気持ちはわかるんだ・・・痛い程に、私も仲間を失った経験がある」
「だからこそ、はっきりと言うよ」
「きみの手で倒せないならば、来るべきじゃない、と」
「もしも、道中できみが死んだならば、私達はギャレット達に顔向け出来ない」
「自分の命を賭して、きみを遺したんだから」
パーシモンは泣き崩れる。
あの地獄を背に走って戻った時でさえ涙を零さなかったのに!
その涙は、彼のレイドの終わりを告げた。
未だ熱に浮かされたままだった全身から力が抜ける。
足が震え、視界が霞む。
そして・・・たった一言呟いて、ギルドの床に寝そべったまま、泣き続けた。
「もう、嫌だ」
と。




