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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
189/455

ルート変更

最初に異変に気付いたのは、レイド・パーティの中で図抜けた視力を誇る弓兵のベルク。

初日の進軍コースの延長線上、普段ならば探すのに事欠かないオーガの姿がない。

否、いることはいる。

だが、それらの群れは、群れとも呼べない数、つまりは三匹にも満たないものだ。


少ない獲物を奪い合うようにレイド・パーティが駆け寄ると多勢に恐れをなしたのか、オーガ達はすぐに遁走する。

何時ものような邪悪さは影を潜め、まるでオーガという種が臆病な亜人であるかのような錯覚。

逃げるオーガを独断専行にならないように追うのは神経を使う作業になった。


最早、会敵すらが困難になった。

サーチ・アンド・デストロイさえもが叶わないフラストレーション。

二日目午前、倒したオーガの数は僅か二頭。

狙撃の矢が首筋を貫いたラッキー・ショットと、逃げ遅れた個体を袋叩きにした二回のみの会敵。


「どうなってやがる」

「確かに乱獲したが、この変わり身の早さはなんだ?」

「このままじゃ、『三日月』と遭遇なんて、夢また夢だぜ・・・」


ただ歩き続ける頭上から、今日に限って雲一つない快晴の太陽が容赦なく照らす。

流れる滝のような汗、渇く喉。

ルートが決まっているだけが救いだ。

これでアテもなく闇雲に捜索するだけならば、最早、狩りとさえも呼べない。


レイド・パーティは、ただ無為に六キロ以上を歩かされ、休息を余儀なくされた。

荷を背中から卸し、岩肌に体を投げ出せば心地よい風が汗ばんだ身体を癒す。

すっかり温くなった水を水筒から喉に流して人心地着く。


「これは完全に我々の戦術ルートがバレているな・・・」

「ここからならば、まだ、湖方面への進行ルート変更が可能だ」

「だが・・・どうにもおかしい」

「百やそこら狩った所で、一晩で種全体に情報が共有されることなんてあり得るのか?」

「オーガにそんな知性があるとは思えないんだが・・・」


パーティ・リーダーを集め、ギャレットは状況の把握を試みる。


「この大部隊が目立つんじゃないでしょうかね?」

「仮に我々の弓兵のように視力の良い個体が存在するなら、警戒行動を促してるのでは、と」

「この様子では警戒されているのは明白」

「予定していたルートは役に立たないでしょう」


第五パーティのリーダー、ジョーの意見にカシアス、パーシモンが賛同する。

女伊達で名を知られるベルリネッタが、ギャレットにルート変更を進言。


「昨日の成果はフロックじゃあないさ」

「うまいこと群れをバラせば、結果は出せる」


皆がそれに頷きルートを湖方面に向けることに同意した。


「なるべく視界の開けた所を通ろう、奇襲や挟撃を避けるためにも、それだけは必須」


そうは言うものの、九十名余が通るには獣道の類を縦列で通る他ないだろう。

理想と現実は食い違い、レイド・パーティは死地への一歩を進み始めた。


「まずは湖畔の開けた場所まで移動し、野営設営の準備に取り掛かろう」

「アルゴは、ベースキャンプに進軍変更を連絡してくれ」


『韋駄天のアルゴ』と呼ばれる俊足のダガー使いは、ギャレットからの指示を承諾し、一人、レイド・パーティから離脱した。


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