進軍開始
初日。
午前九時より号令と共に進軍を開始した人類軍全七パーティ九十三名。
第一部隊ルシアノ、第二部隊カシアス、第三部隊にレイド・リーダー、ギャレット。
続く第四部隊ロッキー、第五部隊ジョー、第六部隊紅一点ベルリネッタ。
殿第七部隊は、最年少PLパーシモン。
九名のエンチャンターは、各部隊に一人配置、適宜交代を行う。
ヒーラーは第三部隊のみ二名、他部隊に三名づつ。
前衛アタッカーは概ね六名づつを配置。
中長距離アタッカーのうち弓兵五名は狙撃手として常時遊撃戦闘。
術式師七名はヒーラーのサポートとして配置された。
『三日月』と遭遇するまでは、面制圧の布陣を取りながら進行する。
出来る限りパーティ数以上の同時戦闘とならないように慎重に進軍することが求められる。
一度に三体以上の相手と交戦するには、タンクの数が心細い。
パーティ間の連携は必須となり、全体の連携を失えばレイドは破綻する。
「独断専行や単独行動は絶対に謹んでくれ!」
「敵は超重量級、それを駆逐殲滅するためには、皆の協力が必要だ」
「一つ、二つ、多く倒した所で報酬は均等割、良いことは何もない」
「残された時間の間に、『三日月』と遭遇出来ることを願って!」
ギャレットから進軍前の最初の激が飛ぶ。
七つのレイド・パーティ九十三人の雄叫び、高く掲げる己の武具。
ここから先は、人類軍とハイランド・オーガの全面戦争だ。
小さな丘の向こう、まだ、殆どの者が気付いていない場所に、最初の一撃が弓兵から放たれる。
直後聞こえる野太い叫び、そして、岩をも砕く足音が接近してくる。
小規模のオーガの群れ、総数九!
「各部隊タンク、オーガを吸収しつつ散開!」
ギャレットの指示によって、第一部隊から順にヘイトスキルが飛び、群れの分解に成功。
第一部隊、第五部隊が、他部隊よりも一体ずつ多くオーガを吸収し、近接戦闘が始まった。
オーガの正面にタンク、側面、背面に様々な武具の近接アタッカー。
タンクの背後には、術式師とヒーラーが援護に備える。
「地の守り手、風の御使い、水の戒め、炎の力」
「数多の精霊の恵み、借り受ける時は今」
「阻み、裂き、穿ち、叩く!」
「力よ満ちよ、彼の敵を蹂躙せしめる為に!」
「バトル・コーラス!」
特上の十二節エンチャント、バトル・コーラス。
四属性攻撃強化と物理攻撃力、防御力、斬撃、打撃の向上、一時間にも及ぶ体力と精神力の底上げ。
上級エンチャンターの本領発揮を見せつける総合術式!
次々とエンチャントの光の柱が上がり、レイド・パーティの戦力は六割もの増大。
初戦を余裕でこなし、魔石を抉りだし革袋に放り込む。
小さな収穫であろうと、積もれば大金となるのだから、皆、真剣だ。
今回のレイドに関しては参加費もなく、ギルド公認レイドということで補助もある。
レイドで得た魔石の買い取り額には五パーセントの上乗せ、回収素材も同様だ。
しかし、今は未だ嵩張る素材を搔き集める時ではない。
それは、帰りの道中にやればいいことなのだから。




