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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
186/450

レイド・パーティ

アイシャ達が宣言した殲滅戦開始日まで、残り二週間を切り。

難航していたレイド・パーティの編成がやっと完了したようだ。


タンカー七名、ヒーラー二十名、近距離アタッカー四十五名、中長距離アタッカー十二名。

そこにエンチャンター九名が加わる。


パーティ参加総数九十名余の大部隊。

さらに現地ベース・キャンプと街を繋ぎ、荷を運ぶポーター部隊三十名。

ベース・キャンプには、森林限界に最も近いアルマンド農場の放牧地の一角が提供された。


どうやら、レイド・パーティは森林限界の針葉樹林に沿って移動し、『三日月』だけではなく、ハイランド・オーガを狩り尽くすつもりらしい。


確かにその道順であれば、遭遇するオーガの数も多く、一定の成果を上げられるだろう。

しかし、アイシャ達が突き止めた『三日月』の集落は、原生林の奥であり、森林限界からは遠く離れているため、『三日月』との遭遇については絶望的だ。


勿論、確率的にはゼロではない。

あの集落を維持するために必要な資源は、想像を遥かに超えるだろう。

食料だけでなく、生活に必要な衣類などの原材料を確保するために、『三日月』直下の群れが大きな移動をする場合もある。

そこに鉢合わせ出来たならば、『三日月』本体との接触も場合によっては有り得る。


「おお、イザベラ、ロザリー、アイシャ!」

「精鋭と言うよりも総力戦、お世辞にも上出来とは呼べないが、私たちもやっとパーティの編成が完了したよ」

「ここから二週間、運が良ければ『三日月』にも遭遇出来るだろう」

「もしかしたら、君たちの出番はなくなるかも知れないが、そうなった場合には勘弁し給えよ?」


後は運次第と軽口を発したのは、この辺りでは少しばかり名の通ったギャレットという男だ。

貴族ご用達の服飾職人の家に生まれながら、道楽で冒険者となった男。

歴は長く、ダンジョンの到達階層は深層十階。

イザベラやロザリーを除けば、今回のレイド・パーティのリーダーに相応しい猛者だ。


「これだけの人数を束ねるのは大変だっただろう?」

「やるからには、きみ達の成功も応援させてもらおう」

「オーガが減って、魔石が譲って貰えるならば、私達にも利益がある」

「むしろ、無茶な討伐をやらなくて済むだけ有難いという本音を零したくなる所さ」


イザベラ、ギャレットの紳士淑女の会話に、冷や水を浴びせるのがロザリーだ。


「私達は殲滅戦開始日まで、のんびり過ごさせて貰うね」

「レイドの現地まで治癒術の派遣要請があっても行くつもりはない」

「オーガ狩りは甘くない、それを忘れないことね」


アイシャは、ロザリーの物言いを咎めることもなく・・・

レイド・パーティのメンバー表に、シャアリィの名前がないかを探す。

ただでさえ団体行動が苦手なシャアリィの名前が其処にあるはずもなく、


「すごいね」

「ザグレブホーンにも、こんなに冒険者がいたんだ」


もっと過疎化していると感じていたザグレブホーンにも、これだけの冒険者が残っていることを実感し、他人事だが少々嬉しく感じた。

イザベラの言う通り、アイシャも自分たちの出番はなくても構わない、と、思った。


だが・・・残念なことに彼らが為し果せないだろうということも予感していた。


それは、あのハイランド・オーガの営みを見たからだ。

奴らにも社会があって、システムがある。

今回集ったレイド・パーティと同様に、役割分担さえあるのだから、一筋縄で御せる相手ではない。

現実的に見て、レイドとは数の暴力で対抗する方法だが、その数の暴力さえもが、奴らのほうが勝っているならば、勝機は奇襲にしかない。


百二十名という大所帯が動けば、当然、奴らも組織的に対抗する・・・。

あくまで、それはアイシャの予感でしかないが。


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