表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
174/457

ハッピー・バース・デイ

喧嘩中。

だから、どうした、と、アイシャは開き直った。

二人は未だ互いの誕生日を祝ったことがないのだ。

思いついてしまった以上、自分を偽ることは難しい。


「シャアリィ」


不意に呼び止めたアイシャも、呼び止められたシャアリィも、あの頃のような笑顔ではない。

ただの顔見知りに呼び止められたかのように、シャアリィは面倒そうに頭を掻いた。

その仕草が示すものは拒絶。

しかし、言葉が続いた。


「アイシャ・・・元気にしてるの?」


その言葉にアイシャの表情が崩れる。

大して感情のこもっていない言葉でさえ、涙が出そうになる。


「ああ、問題ないよ」

「実はちょっとした提案があるんだ」


シャアリィは、『三日月』狩りのことかと思い、身体を強張らせた。

自分の中でもアイシャのパーティが『三日月』を単独パーティで狩ることに少なからぬ拒否感があるからだ。

例え誘われた所で今更ではあるし、断るつもりだが、その言葉を用意していなかった。


「一緒に食事・・・じゃなくて・・・だけじゃなくて祝わないか?」

「私達は未だ互いに誕生日の祝いみたいなことをしたことがない、から」


アイシャが何を言っているのか、シャアリィには一瞬わからなかった。

ただ、レイド・パーティへの誘いをどんな言葉で断るかしか、思考が巡っていなかった。

だから、思わず、遠慮するわ、と、言い掛けて慌てて言葉を飲み込んだ。


「やっぱり、まだ、一緒にいるのは嫌だろうか」


此処が冒険者ギルドだと言うことも忘れ、アイシャの視線にはシャアリィしか映っていない。

ただ、以前のように、柔らかな髪を撫でることが叶うのであれば、この瞬間、欲しいものなど何もない。

二人の間に緊張が高まり、ついにシャアリィは耐えられなくなって吹き出した。


「いいよ。一度、休戦だね」

「その代わり条件がある」

「私は、まだ、自分の答えに至っていないんだ」

「だから、必要以上に求められても応えることは出来ない」

「それを理解してくれるなら、一緒に食事に行こう」


まるで告白が成就した少女のように、アイシャの顔が赤く染まって、小さなガッツポーズを取る。

これから一ヶ月も経たないうちに、かつてない程の暴力を振るう少女であることなど、誰が見た所で信じられない。


「ありがとう」

「明日、夕方四時に此処で待ち合わせでいい?」


さすがにシャアリィは、苦虫を噛み潰した顔をした。


「アイシャ・・・待ち合わせは夕方六時、場所は、あなた達が溜まり場にしている山鳥亭」

「冒険者ギルドでデートの待ち合わせするバカなんて、見たことないんだから」

「もう少しくらい、しっかりしてよね?」


喜びの顔のまま、アイシャの顔色が羞恥でさらに赤く染まる。

それを見ていた受付嬢の、『よかったね』の、一言で居たたまれなくなったアイシャ。

走り去ろうとしたものの、開けていない扉に阻まれて焦って尻もちをつく。


「あは、あはは、じゃあ、シャアリィ、明日ね?」


アクシデントから逃げるべく、急ぎ足で帰るアイシャを見送ったシャアリィが、ぽつりと呟く。


「私がいないと、アイシャは駄目ね」


その表情は、今まで誰にも一度も見せたことない優しい微笑みだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ