もうひとりの協力者
アイシャへの同行に声を発したのはロザリーだけではなかった。
しかも、それが少々珍しい種族の者だっただけに、アイシャは困惑する。
「イザベラ・リリィ・シュベルド・・・百錬のイザベラと呼ばれている」
エルフ・・・だ。
亜人の中でも人種に分類される程に知性が高く、手先が起用、そして長寿、容姿淡麗。
人間が欲しがるものを全て兼ね備えていると言っても過言ではないだろう。
もう、実在などしていないかと言われる程に、その数は獣人のそれよりも、さらに少ない。
「申し出感謝する」
それ以上、今、アイシャは何を言って良いのかわからない。
もっとわからないのは、イザベラの思惑だ。
「鳩が豆鉄砲・・・の、ような顔をしているが、そこの腹黒い女と少々の因縁があるだけだ」
「君が気にするようなことじゃあないよ」
「戦力になれるかどうかなど、君くらいの戦士ならば即断出来るだろう?」
アイシャは、そう確認される前から感じていた、居心地の悪さをイザベラに見出す。
それは清廉過ぎて、誰も近寄らないような気品、その上で非道な殺戮者の眼光。
「百錬・・・とは?」
そう、二つ名の由来を問われてイザベラは簡潔に答える。
「私には相手のスキルを模倣する能力が備わっている」
「とは、いうものの魔術のような素養が必要なものは全く手に負えないのだけれど」
「練習や、コツというもので構成されているスキルならば、オリジナルであろうと伝来の技術であろうと、私に習得出来ないスキルは存在しない」
「防御のような自らの質量を利用したものに限定すれば、オリジナルには劣ることになろうだろうが」
否、そうではない。
アイシャが問わねばならない質問は他にある。
此処にきて、ただの負け犬に加担する理由など、協力を申し出た二人にはあるはずもない。
興味本位か、或いはアイシャの知らない、知り得ない思惑か。
それを思慮した所で、時間の浪費であることは間違いないだろう。
「もし、打ち合わせが必要であれば、この後、席を用意するが、二人とも時間はあるか?」
場のリーダーとして振る舞うには、そう切り出す以外になく、まさか、こんな最果ての見捨てられたような迷宮街で出会うには、あまりに二人共が手練過ぎる。
勿論、まだ、ロザリーにしても、イザベラにしても、その実力を直に見たわけではないが、ハッタリで出せるような威圧感ではない。
イザベラの乱入など意にも介さず、ロザリーは飄々と一言だけ。
「リーダーの奢りなら喜んで」
イザベラは小さな舌打ちをしながらも、それに同意する。
「一緒に呑むような相手ではないが、合いている時間を虚無で過ごすよりは有意義だろう」
断定は出来ないが、二人共、シャアリィとアイシャがザグレブホーンに着いて以来、眼を付けていたのかもしれない。
そして、『味見』の機会を得たのだから、堂々とそれに乗ってきた。
そう解釈すれば、腑に落ちる。
だが、シャアリィに比すれば、今のアイシャの価値というならば『鵺斬の保持者』というだけだ。
ロザリーのメイスは、どうみても特級品であることは間違いなく、イザベラの両手剣に至っては、その有り様はヌエキリと遜色はない。
刀身を見たわけではないが、その鞘から感じられるのは、ミヤマと同じ魔物殺しのための剣だ。
「では、半刻後、通りの外れにある山鳥亭にて」
そう、締めくくって解散した。
解散を告げなければ、新たな協力者と名乗る、別の思惑を持った埒外者が名乗り出るかもと、注意を払ったアイシャ。
そうでなくとも、自分の目的からすれば、シャアリィの眼の前で、新パーティ結成のような雰囲気になるのは、居たたまれなかったのだ。




