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氷結のシャアリィ  作者: 黒猫テラス運営部
氷結龍討伐編
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真実の欠片

「リーダー・・・否、アイシャだったな」

「よろしく頼む」


山鳥亭に三名が揃い、最初に声をあげたのはイザベラだった。

その振る舞いは何処か華やかであり、容姿には文句のつけようがない。

プラチナブロンドの髪は綺麗に纏め上げられており、関節にはミスリルと思われる美しい意匠を施した当て物。

標準より多少豊かな胸を隠すように首から着るタイプの上部甲冑。

そして、強化繊維のスパッツに合わせて腰回りにも、同じくミスリルの下部鎧。

腹部周辺は動きを重視して防具の類はないが、王宮の騎士と見紛う程の装備だ。

青い瞳は大粒のサファイヤのようであり、長い睫が彩を添える。

耳、首の飾りにしても、その全てが一流と思われる装備に身を包んでいる。


まじまじと、イザベラを見すぎてしまって、失礼に思われたのではないかと、アイシャは謝罪する。


「すまない、あまりに見事な装備、容姿なので、つい見惚れてしまった」


世辞のつもりはないが、口に出してみれば、まるで男が女を口説くようなセリフではないか。

それを感慨もなく見ていてロザリーが揶揄する。


「ご覧の通り、彼女は貴族の未亡人の騎士様だよ」

「よくぞ市場に並んでいた奴隷如きが、ここまで成り上がったものだと、巷では陰口を叩かれるね」


こんな美しい騎士にも、傷の一つくらいあるのだろうが、それにしても決して揶揄して良いものではない。

イザベラが、ロザリーを腹黒いと罵ったことに、アイシャは一つの答えを得た。

この場での話を進め始めたのはロザリーだった。

本来、アイシャがリーダーで仕切るはずだが、このメンツでは仕方ないのかもしれない。


「私は必要な情報を提供して、貴殿に対する些末で尾鰭のついた話を先にリーダーに伝えたまでだよ」

「揶揄したと感じたのならば、己の心の汚さを悔いたほうがいいね」

「まぁ、ここまでは余談も余談のこと」


そこで、ロザリーの表情、声色、喋り方までが一変する。


「アイシャ、我は汝の求めている情報の欠片を知っている」

「だがね、利益相反という言葉があってね、教会に属する人間としては直接的に答えを示せないんだ」

「それをすれば、同胞を売るという罪を犯し、ヴァーチューに瑕を受ける」

「率直に言えば、言いたくても、言えない」


アイシャと、イザベラが同じ線に並び運ばれてきたテーブルの飲み物を飲み干す。


「アイシャ、こいつに無理矢理情報を吐かせよう等とは考えるな」

「危害を加えようとすれば、カウンターと見做され反撃対象に成り得る」


イザベラの言葉に頷き、アイシャは作り笑顔のままで応じる。


「ロザリーは、多分、こう言っているのだ」

「私が不意に零してしまう言葉や所作から情報を読み取るならば、徳に瑕もつかないし、知ったことではない、と」

「ロザリーは聖職者として、私を導く」

「その言葉には嘘の気配は微塵もなかった」


さすがは、この最果ての迷宮に集う程の人間だ。

アイシャの思惑の一つは共有された。

だが、イザベラは何故、アイシャに肩入れしてくれるのだろうか。


「ふむ・・・まぁ、正直な話をしよう」

「アイシャが狩っているエリアに土足で踏み込むわけにはいかないだろう?」

「それに上手く行かなければ、秋、冬になってから被害が出るようなことに成りかねない」

「つまりは、誰か手伝わなければ、この店のテーブルにならぶ肉や野菜が食えなくなる」

「そういう事態に陥る危険は排除しなくてはならない」

「私の家はこのザグレブホーンの正式な領主ではないが、相応の対価を税として受け取っている」

「面倒な話だから多く語るつもりはないが、シュベルド家にはハイランド・オーガを根絶する使命があるんだ」


アイシャは、クスっと嗤ってイザベラに返す。


「君は、良い妻であり、良い騎士であり、良い冒険者であり、良い住人・・・あと、どれだけ『良い』を並べればいいかわからないが、良い奴だと私は思う」


パーティのバランスは悪くない。

魔法術式を使えるのはロザリーだけであり、それは即ちロザリーは後衛。

前衛を務めるのは、互いに技巧派の剣士だ。

イザベラが、腹を括ったように簡単に戦闘の在り方を共有する。


「こちらの数が多いなら、何もいうことはないが」

「相手が複数の場合には乱戦・・・それも多少酷い状態になるのは仕方あるまい」

「まぁ、所詮は即席パーティだからな」

「戦略なんてものよりも、臨機応変であることが肝要だろう」


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