閑話~三國志と古代中国史 その十~
袁術が揚州を目指しているのを知ったとき、孫策は天命を授かったと思ったのではなかろうか。孫武を祖とする孫氏一門にとって、孫武の活躍した「呉」の地には格別な思いがあったであろう。その地に孫一門の棟梁たる自分が立てるかもしれない、孫策はそこに運命を感じざるを得なかったに違いない。孫策は自己の地位を固めるため、祖先の霊を慰めるため、揚州攻略に注力していくこととなる。
まず孫策は遠征するにあたり大義名分を得ようとした。私欲が目立ってしまうと、袁術は元より周囲の者達にも警戒されてしまうのは自立の理である。そこで孫策は、袁術に揚州で陣を張る叔父の呉景への援軍を申し出たる。この呉景は、孫策が戦場に出た時から苦楽を共にした仲である。援軍を行くことは全くおかしな話ではなかった。また孫策が何度も約束を反故にされながらキレずにいたことも有利に働いた。猜疑心の強い袁術は、自分の下を離れることによって多少は独立等を疑ってはいただろう。そもそも自分が約束を守っていれば、援軍に行かせなくてもすんだ話なのであるが。しかしこの援軍は筋からも、心情からも何らおかしな物ではなかった。この援軍を行かせなければ、孫策も気分を害するであろうし、配下の者達も孫策への同情を禁じえず、流石に袁術への不信感を持つものも出ると考えたのではないか。とにかく孫策は袁術からの許可を得て、旗下の者達と共に江東へと進軍したのであった。
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