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…こんなにパンツが飛び交う話を書いたのは初めてだ

国王「じゃあそういうわけで今日は食パンをくわえて走って投稿する美少女について話し合おう」


イナカ「一応、話だけは聞いてあげるので理由を話してください」


マリア「国王に対して上から目線なイナカさん…嫌いじゃないわ」


国王「それじゃあ、いつものように説明してやれ、大臣」


大臣「はは。皆様も知っての通り古今東西、古より伝わりしボーイミーツガールの典型的古典表現の代表として登校時に食パンをくわえて走る女子に衝突するというものがありますよね?」


マリア「『いっけなーい☆チコクチコクゥ!!』ってやつね」


クルス「有名なお約束ですよね」


大臣「そしてこのボーイミーツガールは我々のような多くの思春期男児の生きる糧のための妄想として日々お世話になっております。どんなに辛い時でも、窮地に追いやられた時でも、いつかは登校時に食パンをくわえた女子に出会えると思えば禿げても、歯が抜けても、頑張って生きてみようという力が湧いて来るものです」


イナカ「…いや、それは言い過ぎでしょ」


マリア「しかも大臣の場合、とっくの昔に学校は卒業しているんだから登校ってものをそもそもしないじゃない」


国王「細かいことはさておき、大切なのは食パンをくわえた女子という存在はこの国の大部分の思春期男子の精神を支えているということだ」


大臣「アンケートを取ったところ、男性の136%が『食パンをくわえた女子と出会うために生きている』と答えています」


マリア「100%を上回るって…どんな集計方法を取ったのか…」


イナカ「まぁ、この国の国民がおかしいのは今に始まったことじゃありませんからね。そのくらいなら別におかしくないですね」


マリア「イナカさんもすっかり染まってしまったわね」


イナカ「それで、その妄想がどうかしたんですか?」


国王「それがだな…先日、この国の全てのパンの破棄を義務付ける法律を制定しただろ?」


イナカ「そういえばそんなことしてましたよね、2話くらい前に」


国王「そう、この国ではもはや食パンを含むパンを食べることはできないのだ。…つまり、この国では食パンをくわえる女子と出会える確率がゼロになってしまったということだ」


イナカ「…いや、もともと限りなくゼロに近い確率じゃないですか?」


国王「ゼロとゼロに近いでは全く違うのだよ。確率がゼロということは現実では確実にありえないということなのだ…その意味がわかるか?」


イナカ「いえ、分かりません。分かりたくもありません」


国王「確かにお前の主張するように、食パンをくわえた女子と出会う確率は限りなくゼロに近い。だが、確率はゼロではない、運が良ければ現実世界で成し得ることというわけなのだ。可能性がゼロではなく、現実味を帯びていることだからこそ、思春期男子はこの妄想で明日への希望が保てるのだ。しかしだ、パンが廃止されたことによって食パンの存在そのものがなくなってしまえばどうだ?。食パンをくわえた女子の存在そのものが消滅してしまったのだ。こうなってしまった以上、食パンをくわえた女子というものは架空上の生き物に過ぎなくなってしまう。エルフやドラゴンといったファンタジー世界の空想上の生き物と同列になってしまうのだよ。そうなってしまえば女子をくわえた女子の妄想というものは今までとは本質が変わって来る。ファンタジー世界の妄想は明日への生きる希望のための妄想ではなく、夢を膨らますための妄想だ。思春期男子の生きる希望には成り得ないのだ」


イナカ「…おっしゃっていることがよく分からないのですが」


国王「とにかく、パンが廃止されたことによって食パンをくわえた女子という妄想は意味が無くなってしまったのだ。依存する妄想が無くなってしまうということは…それはもはや生きる意味を失ってしまうということなのだよ」


イナカ「そんなバカな…」


大臣「笑い話ではありません。これによって、我が国の男性の98%が自殺未遂まで陥ってしまったのですよ」


イナカ「ほぉ、さすがはエルムの国民。メンタルは豆腐クラスだな」


大臣「感心している場合ではありませんぞ。…幸い、まだ一人も死者が出てないからよかったものの…」


イナカ「国民の98%が自殺しようとして誰一人死んでないってどういうことだよ?」


大臣「みんな、途中で死ぬのが怖くなってやめたそうです」


イナカ「さすがはエルムの国民。その優柔不断さは世界一だな」


国王「感心している場合ではないぞ、イナカ。いつ死者が出てもおかしくはない状況には変わりないのだからな」


イナカ「それもそうですね。早急に対策を練る必要がありますね」


国王「その通りだ。…ほら、そこに転がっているサンダー将軍を見てみろ、あいつも生きるための妄想を奪われた被害者だ」


サンダー「…食パンをくわえた幼女に出会えない世界に生きる意味などあるものか?…いや、ありはしない。…死のう」


イナカ「…なるほど、こんな身近なところにも被害者がいたとは…。国王、ここは自体の重大さを再確認するためにも、対策を練るのはサンダー将軍が死去されてからの方がいいのではないでしょうか?」


国王「適当な理由をつけてサンダー将軍を見殺しにしようとするな。最悪、サンダー将軍はいいとしても、この国の男性の98%までも見殺しにするつもりか?」


イナカ「サンダー将軍をブッコロするためにも致し方ない犠牲かと…」


クルス「敵を撃つためならばどれだけ犠牲が出ても構わないというのか…」


マリア「サイコパスを通り越してもはや悪魔ね」


国王「…まぁ、さすがに国王として、この自体を黙って見ているわけにはいかないからな。今日は食パンをくわえた女子に代わる新しいボーイミーツガールをみんなで考えようと思う」


イナカ「ボーイミーツガールなんて他にもいろいろあるじゃないですか。例えば…本屋で同じ本を同時に手に取ろうとして出会うとか」


マリア「そうね。女性側としてはそっちの方がロマンチックな気がするわ」


サンダー「ダメだな。お前らは何も分かっちゃいない。なぜ食パンをくわえた女子がこんなにも世に名を馳せる妄想となったのかを、お前らは何も分かっちゃいない。食パンをくわえた女子に出会うというあのワンシーンにどれだけの素晴らしさが詰まっているかを、お前らは分かっちゃいない」


国王「と、言うと?」


サンダー「あの一瞬のシチュエーションにはな、3つの利点が詰まっているのだ。まず一つがボディタッチ、ぶつかった時に触れ合うことができる。上級者ともなれば、あの一瞬で胸の感触まで味わうことが出来るのだ。そして二つ目が因縁、衝突するという好感度がマイナスのところからスタートするという王道展開に持っていけるところだ。そして最大の利点である三つ目が…パンツが見れるというところだ。ぶつかって転んだ拍子に垣間見える花園、これによってヒロインとの距離は一気に縮まり、妄想が捗るのだよ」


国王「なるほど…あのワンシーンにそれだけの利点が詰まっていたのか…」


イナカ「いや、おかしいでしょ。普通、パンツ見られて距離が縮まる女子なんていませんよ?」


国王「お前は本当に何も分かってないな。例え悪い印象でも、パンツを見られるという特別な出来事は良かれ悪かれ二人を赤の他人から知り合いにランクアップさせてくれるのだよ」


サンダー「そういうわけで、本屋で同じ本を手に取るなんていうパンツも見れないような出会いが食パンをくわえた女子に勝るわけがないのだよ」


国王「そうだな、ボーイミーツガールはせめてパンツは見えないとダメだよな」


イナカ「じゃあもう初めからヒロインをパンイチにしておいたらどうですか?」


国王「おめえはバカか!?!?登場からパンツしか履いてない痴女なんぞで妄想が捗るわけねえだろ!?!?こういうのは見せられるんじゃなくて、不可抗力で見えちゃうのがいいんだよ!?!?お前はそんなこともわからない愚か者だったのか!?!?」


イナカ「…え?なんでパンイチ発言しただけで私こんなに怒られてるんだろう?」


クルス「男心としては、恥じらいを持った女の子だからこそいいんだよ」


国王「そういうわけだ。ボーイミーツガールの前提として『出会いが不可抗力であること』と『パンツが見える』ことは絶対条件だ。それは肝に命じて末代まで伝承させろ」


イナカ「嫌です」


国王「そういうわけで、他に何かボーイミーツガールの案はないか?」


マリア「それなんだけど、別にくわえるのは食パンじゃなきゃダメなの?。別におにぎりとかでもよくない?」


国王「ダメだ。おにぎりは食パンと違って口で咥えっぱなしにするのは難しい。手を使わざるを得ないから、咥えて走るには向いていない。それに…おにぎりくわえた女子は食パンと違って…なんか可愛くない」


イナカ「なんか可愛くないってどういう意味ですか?」


国王「うぅむ、なぜだろうな。おにぎりをくわえた女子だとなんだか食い意地を張っているように見えてしまってな…食いしん坊の女子もそれはそれで趣があっていとよろしなんだが…ボーイミーツガールは綺麗じゃないとダメだからな」


イナカ「綺麗って…パンツが見えてるのに綺麗もへったくれもないのでは?」


国王「パンツは別腹だ」


サンダー「そうだな、パンツは別だ」


大臣「その通りですな、パンツは別ですな」


クルス「以下同文」


イナカ「…なぜパンツを前にこいつらは一致団結するのか」


マリア「女子には分からないことね」


国王「そういうわけでおにぎりは却下だ。他に代表的な朝ごはんで適したものがあればいいのだが…」


イナカ「あ、それならウインナーはどうですか?」


サンダー「ウインナー咥えた女子とか朝から卑猥すぎるだろ!?」


イナカ「その発想が卑猥だろ!!」


国王「うーむ…どうやら食パンに代わる食材を見つけるのも難しいようだな。なにか他のボーイミーツガールを考える他あるまい」


マリア「その前に…ボーイミーツガールにはどういった要素が必要なのかを改めて考える必要がありますわ。『不可抗力の出会い』『パンツが見える』だけでは考えるヒントが少ないわ」


国王「それもそうだな。ボーイミーツガールには他にどんな要素が必要なのかを考える必要があるな」


クルス「先ほどもちらっと話に出たことですけど、今後につながるような因縁も必要ですよね」


国王「そうだな。『特別な因縁』があった方がいいな」


サンダー「国王、それと『日常的な場面』という要素も加えてくれ。いつ何時自分の身に降りかかってもおかしくない状況であった方が期待が持てる」


国王「それもそうだな、『日常的な場面』もボーイミーツガールには必要だろう」


イナカ「日常的な場面というと…例えばなんでしょうか?」


国王「普段よく使うところとか、誰でも行くところ…例えば電車の中とかだろうな」


マリア「それでしたら痴漢されているところを助けるとかはどうでしょうか?。嫌がっている女の子を助けるためという『不可抗力の出会い』も、助けてあげたという『特別な因縁』も、電車の中という『日常的な場面』も満たしておりますわ」


国王「…甘いな、マリアよ。その場合だと『不可抗力の出会い』は満たされていないぞ?」


マリア「どういうことかしら?」


国王「そういう出会い方の場合だと、わざわざ『痴漢から女の子を助ける』という労力を払う必要があるだろ?」


マリア「確かに女の子を助けるという労力は必要だけど、別にそのくらい…」


国王「だから甘いというのだ。『わざわざ』助ける必要がある時点で『不可抗力の出会い』は満たされていないのだ。必要がないのに女の子を助けている時点で女の子に下心があるんじゃないかと思われるリスクが伴うからな。妄想大好きな思春期男児としてはな、もっと少ない労力とリスクで女の子と出会ってイチャイチャしたいのだよ」


マリア「で、ですが…女性としては自分のために頑張って欲しいと考えるものですわ」


国王「愚か者め。なぜわざわざ妄想の中の女の子の都合を考える必要があるのだ?。妄想の中なのだから、そんなことを気にせずにもっと簡単にイチャイチャしたいのだよ」


マリア「そんな…」


国王「思春期男児の妄想ではな、『女の子と出会う過程で自分からわざわざ何かをする』ということはご法度なのだよ!!何一つリスクを犯すことなく、女の子と出会う…それが『不可抗力の出会い』というものだ!!」


マリア「そんな…自分の都合しか考えていない」


国王「その通り、奴らは何一つリスクを犯すことなく女の子と出会いたいのだよ」


イナカ「よっぽどのイケメンでもない限りそれは無理ですね」


国王「現実世界ではな。だが、妄想の中なら別だ。それと補足として言っておくが、『自分からわざわざ女の子を助ける』のは無しだが、『気がつけば助けていた』ならアリだからな」


イナカ「…なにが違うんですか?それは」


国王「『わざわざ助けた』だと下心があるように思えるが、『気がつけば助けていた』なら下心は無いからな。そういう違いだ」


イナカ「いや、だからそれの何が違うっていうんですか?」


国王「下心があるように思われるか思われないかのリスクの違いがある」


イナカ「…それって、そんな重要なんですか?」


国王「重要だ…妄想の中ならな」


マリア「要するに、何の下心ややましさ見せることなく、女の子と出会う必要があるのね。…なんかムカついてきたわ、自分の都合しか考えてない妄想の主人公に対して。やっぱり女性としては自分に対して気があって欲しいわ。それでいて、卑怯な手を使うことなく私のために頑張って欲しいわ」


国王「まぁまぁ、妄想の中くらい好きにさせてやれ」


イナカ「出会うために何かするのが嫌だったら、初めっから自分に気がある女の子にすればいいじゃ無いですか?」


国王「それもダメだ。妄想の中の女の子には最初から自分に気があるのではなく、何かしらのきっかけで自分のことを好きになってもらいたいのだ」


マリア「え?めんどくさ…。自分から何かする気は無いのに、何か女の子が自分のことが好きになるきっかけが必要なの?。なにそれ?ほんと自分の都合のいいことしか考えてなくない?死ねばいいのに」


国王「妄想だから、許してやってくれ」


イナカ「…じゃあもう電車で痴漢にあっている女の子がいて、電車が揺れた拍子になんか気がつけば痴漢の手を握っていて、気がつけば女の子を助けていたっていうのでいいんじゃないですか?」


国王「うむ、それなら『不可抗力の出会い』も『特別な因縁』も『日常的な場面』も満たしているな」


イナカ「じゃあもうこれでいいですよね?」


国王「だがな…肝心なことを忘れてしまっているぞ、イナカ。この場合だと…パンツが見えていない」


イナカ「あぁ、そういえば忘れてた…」


マリア「ほんとめんどくさいわね、思春期男児の妄想って」


国王「まぁ、最悪パンツは妥協してもいいんだがな。最初に見えてしまうよりも、後々のお楽しみにとっておく方が趣があるからな」


イナカ「じゃあもうパンツなんてどうでもいいじゃないですか」


サンダー「馬鹿者!パンツを疎かにするんじゃない!確かに、先出しパンツも後出しパンツもどちらもそれぞれに違った趣があってどちらもいとよろしではある!。だからと言って、どっちでもいいなどとパンツを蔑むことは決して許されない!。後出しパンツか、先出しパンツか悩むこともまた妄想の一興であるのだ!それをどっちでもいいなどと言うお前は妄想がなんたるかを理解していない!!」


イナカ「…うん、理解したくもないからね」


国王「…さっきサンダー将軍がさらっと言ったが、『パンツを疎かにするんじゃない!』って言葉は個人的に名言だと思う。なかなか聞く機会ないぞ、『パンツを疎かにするんじゃない!』なんて言葉は」


イナカ「なんでそんな微妙なところピックアップしてるんですか?どう考えてもただの迷言じゃないですか?」


国王「なんだろうな…聞いていて感銘を受けたので、個人的に『パンツを疎かにするんじゃない!』と言う言葉をもっと世に知らしめたい気持ちに駆られたのだ」


マリア「そんな言葉を広めても言う機会がないじゃない」


国王「…それもそうだな。でも機会があれば言ってみたい言葉だな」


クルス「死ぬまでに言ってみたい一言に『パンツを疎かにするんじゃない!』がノミネートされました」


国王「それでだ、話を戻すと…サンダー将軍の言う通りやはりパンツを疎かにするのはよろしくない。みんなもっとパンツに正面から向き合う必要がある」


イナカ「死ぬまでに言ってみたい一言がさっそく言えたじゃないですか、よかったですね、国王」


国王「そうだな」


イナカ「これで心置きなく王位を継承できますね」


国王「待て待て、こんなんじゃまだまだ言い足りんぞ」


イナカ「…っていうか、今日ほとんどパンツの話じゃないですか。過去最低の下品な会議ですね」


国王「そんなこと言って…ほんとは結構ノリノリなんじゃないか?」


イナカ「そんなわけないですよ。私はあのジャンヌダルクみたいになりたくてこの国の参謀指揮官になったんですよ?。それなのにパンツパンツって…私はここに何しに来ているんですかね?」


サンダー「仕方ないさ。エルム王国にとってパンツは文化だからな、切っても切り離せない関係なんだ」


イナカ「そんな残酷な因果初耳なんですが、それは…」


クルス「…まぁ、確かに国を挙げて定期的に女の子が履いたパンツを配ってるくらいですからね。…パンツが文化と言われても否定できない」


イナカ「そう言われたらそうですね。…祖国の文化がパンツとか、亡命したくなる」


国王「…なるほど、その手があったか」


大臣「国王?」


国王「よくよく考えてみれば、別に国民に新しいボーイミーツガールの妄想を与えなくても、代わりとなる生きる希望を与えればいいのだ」


イナカ「何か案があるんですか?」


国王「…時にイナカよ、お主、ジャンヌダルクに憧れていると言っていたな?」


イナカ「そうですけど…それがなにか?」


国王「なってみないか?エルム王国のジャンヌダルクに」


イナカ「えっと…まぁ、なりたいですけど…」







数日後…


イナカ「…なんなんですか?この格好は?」


国王の命令によってボロボロの布切れに身を包んだ彼女の姿が中央会議室にはあった。


国王「ジャンヌダルクのような皆を勇気付けるカリスマ的存在になるには大事なことだからな。今日はその格好であざといくらいに悲劇のヒロインぶってカメラに映ってくれ」


イナカ「えぇ…なんか嫌だぁ…」


国王「エルムのジャンヌダルクになりたくないのか?そのためには致し方のない犠牲だ、我慢しろ」


イナカ「…分かりました。我慢します」


こうして、国王の指導のもと、5時間にも及ぶイナカの撮影会が行われた。







国王「…はい!カット!!いいよ!!今のは最高だ!!」


イナカ「はぁ…やっと終わった…」


国王「うむ、よく頑張ったな、イナカよ。普段のお前からは考えられないくらいあざと可愛い女の子の絵が撮れたぞ」


イナカ「そうですか…それで、それをどうするんですか?」


国王「いずれ分かる。今日は疲れただろう、もう帰っていいぞ」


イナカ「…それじゃあお言葉に甘えてお先に失礼します」


イナカがトボトボと帰ったのを見送った後、撮影をしていた大臣が国王に小声で尋ねた。


大臣「それで、いかがなさいましょう、国王」


国王「ふむ、時に大臣よ。お主はジャンヌダルクに関するこんな話を聞いたことはあるか?」


大臣「なんでしょうか?」


国王「ジャンヌダルクは別に本当に神の声が聞こえていた特別な少女などではなく、ただの幻聴が聞こえる痛い子で、当時の国王によって英雄に仕立て上げられ、利用された挙句最後には国に見捨てられたという話だ」


大臣「そうなんですか?」


国王「まぁ、諸説あるから確かなことは分からないが、ジャンヌダルクはただの少女だったという話は有力なものだ。…さて、果たしてイナカは作り上げられた偶像のバルキュリアか…それとも国を導く本物の女神になるか…」


大臣「………」








さらに数日後…


庶民「…あーあ、国王がパンを廃止して食パンをくわえた女の子と出会う妄想が打ち砕かれてから早一ヶ月…食パンをくわえた女の子と出会えない世界に生きる価値などあるのか…」


庶民2「あるわけがない。食パンをくわえた女の子と出会えないなら…いっそ死んでしまった方が…」


庶民「…あ、でも、そういえばそろそろ国から女の子の使用済みパンツが届けられる日だな」


庶民2「馬鹿野郎、それがなんだっていうんだ?。本当に女の子の使用済みパンツかも分からないんだぞ?。仮に女の子だとしても超絶ブサイクの可能性だってあるんだぞ?それなのにそんな布切れ一枚のためにこんな世界生きていくなんて辛すぎる…」


大塚「ねえねえ、こんな話を聞いたことあるかい?」


庶民「…どうしたんだ?大塚くん」


庶民2「流石の大塚くんでも今回ばかりはどうしようもできないよ…」


大塚「実はね、そのパンツを使用した女の子の映像が大々的にテレビで放送されるらしいぞ」


庶民「そ、そうなのか?」


庶民2「でも、どうせ軽々しく他人に使用済みパンツを渡すようなクソビッチなんだろ?」


大塚「さあ、どうだろうね。…ちょうど今からその番組が始まるらしいよ?」


庶民「…まぁ、見てやるか」


庶民2「…どうせクソビッチなんだろ?期待してないけど、暇だから見てやるよ」


そんなことを言いながらテレビの前に釘付けになる庶民達…そんな彼らの目に映ったのは可愛い衣装を身に纏ったイナカの姿であった。


イナカ「お母さん、薬持ってきたよ」


マリア「…いつもありがとうね…ゴホッゴホッ」


イナカ「大丈夫?お母さん?」


マリア「ごめんね…いつも迷惑かけて…」


サンダー「おい!酒がねえぞ!?どういうことだ!?」


イナカ「ごめんなさい、お父さん。今お金がなくてお酒を切らしてて…」


サンダー「ああ!?ふざけんじゃねぇぞ!?このチビが!?」


イナカ「キャア!!」


テレビの中では貧相な家の中で病弱な母親と暴力的な父親に挟まれて貧しい生活を送るかわいそうな娘の姿が描かれていた。


そんなある日…


大臣「はっはっは、母親の命を助けたければ、全国民分のお前の使用済みパンツを用意することだな」


イナカ「そ、そんな…」


大臣「ん?嫌ならいいんだぞ?。その場合、お前の母親は薬代を払えなくなって死ぬことになるがな、あっはっはっは…」


イナカ「…分かりました、用意します」


そして最終的に母を助けるためになんやかんやで全国民分の使用済みパンツを用意することになったイナカの悲劇的な姿が描かれて、そのドラマは幕を閉じていった。


庶民「うっうっ…俺、間違ってたよ。食パンをくわえた女の子と出会えないからって死のうとしてたなんて馬鹿だったよ」


庶民2「そうだな、そんなものがなくても俺たちにはあんなにもいたいけで健気で可愛らしい少女のパンツが付いていたというのに、死ぬなんて馬鹿らしいな」


安っぽいドラマを見終えた庶民達は自分の愚かさに気付かされて号泣していた。


庶民「俺、ちゃんと生きてみるよ、あの子のパンツのために」


庶民2「ああ、胸を張って生きるよ、あの子のパンツのために」


こうして、テレビの中の偶像の少女のパンツのために男達は再び立ち上がったのだ。


そして、この放送で一躍有名人になったイナカは人々に希望を与えるエルム王国のヴァルキュリア、ジャンヌダルクことパンツダルクとして国中に名を馳せることになったとさ、めでたしめでたし。





イナカ「………いや、パンツダルクってなんだよ!?」

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