ー名前ー
僕は、不思議と考えていたー彼女は…見ていたのか?それとも本当に、偶然後から来たのか?そんな疑問ばかりが頭を駆け抜け…
「…先生!高鍋先生!」
「あ…すいません…それで授業のやり方ですよね…」
「そうですよ!先生、全然私語を注意しないそうじゃないですか!保護者からクレームが…」
はあ…また面倒なことになってしまった。とりあえず、表面上だけでも誠意を見せておかないと。
「すいません。以後、気を付けます」
「本当にいつもいつも…しっかりしてくださいよね!」
今日もあの場所へ行こう。それだけが僕の頭を満たす。
屋上の鍵を勝手に拝借し、ドアを開ける。涼しい風が一気に駆け抜ける。そこにー彼女はいた。
「君も好きだね。ここ」
「ああ」
夏もすぐそこまで来ているが、ここは本当に涼しかった。半袖に身を包んだ彼女は少しだけ僕を見てから…すぐにまた夕焼けに目を移した。
「そういえば…名前知らないな…」
「名前なんて…ないよ」
「あのなあ…名前くらい教えてくれたって」
「じゃあ…君は?」
「高鍋、高鍋真人」
「ふぅん…私はーみらい」
「みらい?」
「そう…みらい。平仮名でみらい」
みらいはそう言って僕を見つめ直した。
「今度から、みらいでいいよ。君は…君でいいね」
「せめて…先生って呼んで欲しいなあ…」
「呼びたくない」
はっきりとした拒絶。
心の底から嫌そうな感じで…何か先生と問題でもあったのだろうか…?
「君は…この世界に希望はあると思う?信じても…いいことってあると思う?」
「え…っと。ある…とは言えないかな。でも、あるって思いたい」
「そっか…ない…か。」
今にも落ちそうなくらいの距離に、みらいは近づく。
「危ないよ…落ちたら」
「絶対落ちない自信あるよ。かけてもいい」
ここ一番の笑顔だろうか。きらきらと笑っていた。
「…あ、ここって鍵…かかってるよね?どうやって入ったの?」
少なくとも僕が入る前までは鍵がかかっていた。みらいはどうやって入ったのだろう?
「私…?私は…写真部だからね」
「写真部?」
「うん、だから特別に許可もらって鍵持ってる」
「じゃあ、何も外から鍵かけなくったって…」
「誰にも邪魔されたくないから。この場所は。絶対」
「もしかして…僕邪魔かな?」
「君は特別。私が許可する」
また少しだけ笑って、
「このこと…ここの事は誰にも言わないで。特に私の事は…ね」




