閻魔様ご勘弁ください
流石に偶然にしても有り得ない。
清と慈円を吊し上げようとしていていた二人が同時に倒れるだなんて。
神様の仕業?いいや!閻魔様に違いない。
一か八か。あの時と同じ様に南無阿弥陀仏!神様!仏様!閻魔様!手を合わせて叫ぶ清。
ピカッ!!物置小屋が眩く光に包まれる。
瞼を開けると、あの時の閻魔様が現れる。
今回は真っ黒の装束を着ており、何か胡桃の様なものをゴリゴリと掌で遊ばせている。
心なしかその表情はすっきりと、満足そうな笑顔である。
「わしも暇ではない。
礼が言いたいならさっさとせよ。」
何と伝えたものか。
閻魔様は助け舟のつもりで、二人を始末したようだ。
「た、大変ありがとうございました!!」
言葉選びを間違えれば自分も危うい。
心を読める閻魔様である。こんなこと考えるだけで危ういぞ!
…えぇ〜い!知ったことか!
思考を読まれまいと思ったことを口に出すことにした清。
「人生最大のピンチを救って頂きめちゃくちゃ感謝です!閻魔様に一生ついていきます!
ところであの二人はどうなるのでしょうか?」
「はっはっは!そうであろうそうであろう。
こいつらは地獄に連れてっても良いが処理が面倒だ。
後で食う。」
先ほどからゴリゴリとしていた二つの物体を親指と人差し指で器用に掴んで見せる閻魔様。
「そ、その茶色と赤茶色の物は…まさか二人の魂ですか?」
「だいぶ圧縮したからな〜お前にも見える様だな。
魂が濁っておるからこんな色になる。まぁ味は変わらんだろ」
こ、これはまずい。
「閻魔様!その様な汚い色をした魂を食べたら閻魔様が汚れてしまいます!どうか!ゴミはゴミ箱に!」
「ゴミ箱だと?そんなものどこにある?」
「あそこに汚い死体が二つございます!
一旦あの中に戻していただければ、私が責任持って美味しくしてから地獄に届けて見せます!」
「蘇らせろと申すか。
お前のためにやってやったのだぞ」
ギロリと睨む閻魔様。
「大変感謝してます!ただ周りでコロコロと人が死ねば…まるで、どこぞの少年探偵のように見られます!」
しまった!脳を通さず話してるから盛大に滑ってる!
「や、疫病神の様に」
訂正しようと必死に言葉を繋いでいく。
「ふむ。確かにその通りやも知れぬな。
だが此奴らを蘇らせれば再び猜疑の目を向けてこよう」
なんだ?伝わったのか?
「その通りです。ただスキルを使えれば何とかなるはずです!使い方がわかりません!」
「何を言うておる?念仏を唱えれば聞こえるであろう?
ついこの間使っていたであろうが」
「へ?それだけですか?
毎日念仏は唱えておりますが何も起きません」
はぁ〜盛大に溜息を吐く閻魔様。
「魂共が喋ってなければ聴こえるわけもないではないか。この寺にはおらんし聴こえるわけがない。何を言うておる」
そんな簡単なことだったのね。
少し落ち込む清。
「もしや、お前はワシが与えた使命すら確認しておらんな?」
「え?何のはな」
カァッーーぺっ!!!
べちょりっ
え?
今俺は、おでこと髪の毛の境界線、どちらかといえば髪の毛寄りに唾を吐かれた。
あまりの衝撃にフリーズする清。
「すまんすまん。ゴミはゴミ箱にだったな。
つい痰壺に見えてな。
お前は前任者とはえらい違いだな。
前任者の晴明は何も教えずとも上手い事やっておったわ。
今では俺の秘書までやっておる。」
泣きそうである。
「スキルボードを横にスライドしたら全部書いておるわ!
あ〜なんぞしらけた。」
ぽいっと汚物色の物体を清に投げる。
慌てて受け取ると目の前に閻魔様はいなかった。
泣きたい様な叫びたい様な。
垂れ落ちてくる唾により、現実に戻る。
この糞玉のせいで!!!
二つの魂を睨みつけ、床に叩きつけたい衝動に駆られつつも、ギュッと握って物置部屋を出る清であった。




