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針の筵地獄②

これは困ったぞ。

遅かれ早かれ、いずれ鮮烈デビューする計画であった。

有名になればお金を稼げるし、親に会いに行った時の信頼度が違う。何よりもお金を稼げる。

あんた死ぬわよの決め台詞で有名な、この道の大御所オバサンが俺のライバルだな。

なんて考えていたが、慈円に迷惑が掛かるのは話が違う。

まだスキルを使いこなせない清にとっては、この状況は今世で最大のピンチである。


どうしたもんかと考えていると総会が始まった様だ。

「あ〜総会を始める前に、高山さん。

お孫さんのこと、お悔やみ申し上げます。

喪中なんやから会計報告は誰かに任せてくれて良かったのに、ありがとう。」

代表者(総代)と思われる、かなり年配の声が聞こえる。

寺の造りのせいか、清の聴力のお陰か。かなり鮮明に聞き取れる。

「いえ。慈円さんのおかげで立ち直れました。

あの時は直接お礼できてなかったね。

孫のこと本当に感謝している。息子夫婦も君たちのおかげで歩み出せたよ。ありがとう」

室内が静寂に…いや、ビリビリと空気が固まったのが伝わってくる。


「いえ、あの」

慈円が返そうとした時

「その件やが〜」

「さっそく前月の会計報告させてもらいます。」

総代が口を挟もうとして、高山さんに遮られる。

バチバチじゃないか!

慈円が面食らって呆然としているのが手に取るように伝わってくる。

恐らく、タカシ君の納骨式に同席していたのであろう高山さんが俺たちを庇ってくれている。

ただそちらの空気が地獄と化していますが大丈夫でしょうか?冷や汗をかく清。


「〜〜繰越金は427万3200円となってます。」

「あちゃ〜だいぶ減ってもうたな。」

「仕方ないだろ。震災の義援金を結構な額、寺の予算で送ったからな」

「あの塀の落書きどうにかならへんか?

入る時も恥ずかしいわ、コケにされてる気分や。

犯人もまだ見つからんのか?」

「ホンマに誰があんな罰当たりな。

土塀やからペンキで上塗りなんて簡単にできへん。

金が掛かるからな〜もう少し貯まるまで待ちたいな。

それに業者も神戸の方でてんやわんやしとって捕まらん」

「では一旦ブルーシートで覆いましょうか」

「せやな。それがええ」


話がひと段落して再び静寂になる。

「さっきの続きやが高山さん。それに慈円」

再び斬り込む総代。流石にこの流れには逆らえない。

「この寺に変な噂が出回っとる。霊能力者を名乗ったガキの話や。」

ガタッ!誰かが席を立つ音がする。

「慈円さん、すまない!

家族には口外禁止と伝えたはずが、うちの嫁がぽろっと近所の人に言うてしまったようで。本当にすまない!」

「高山さん、やっぱり本当なんやな!!

あんたホンマ情けないでホンマに!

ガキのしょうもない嘘を魔に受けよってからに!

詐欺に引っ掛かるより情けないで!会計係がそんなんじゃ任せられんで!」

「せやせや!総代の言う通りや!」

突然現れた金魚のフンと一緒に盛り上がる、燃え広がる。

「慈円のとこで引き取ったガキやろ!

連れてきてみぃ!説教したるわ」

これはダメだ。清は壁から耳を離して立ち上がる。

隣の部屋に向かおうと一歩、歩み出した瞬間。


ガシャンッ!ドタンッ!

「総代!!??」

ガタンッ!

「高岡さんも!?」

何事かと再度耳を寄せる清。

「き、救急車!慈円さん!早く救急車や!

心筋梗塞か!?息が止まっとる!」

バタバタと走る足音。

「お…おい!誰か人工呼吸や!」

「そんなもんやったことあらへん!自分がやってみぃ!」

「やれるかあほんだら!」

「なんやてこら!」

「ぁぁあ!祟りや!祟りやこれは!」

「ええから心臓マッサージせぇ!アホども!!」

異常事態に圧倒される清だが、脳裏には彼の方の姿が思い浮かぶ。

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