仏の加護
それから3日が過ぎた。
この3日で気持ちの整理は出来ていた。
俺は吉田悟ではなく剛田清、12歳。
1982年11月29日生まれ。
吉田は1995年9月9日生まれ。
現在は西暦1995年8月11日。
と言うことは吉田清春はまだ産まれていない。
幽霊の存在が閻魔様で証明されたことで、吉田悟として産まれるのは、剛田清の魂な気がしている。あの閻魔様ならやりかねない。
そんな気がしている。
閻魔様から頂いた『仏の声』だが、幽霊が見えるわけでもなく、聴こえるわけでもない。
ただスキルとして自分の中にあるのは知っている。
何故かと言えば、夜中にあれこれ試した結果、
スキルボードが目の前に現れたからだ。
転生ものの定番だが、現代転生で使えるとは思っていなかった。
体力2知力2筋力1仏力0
保持スキル『仏の声』レベル1
酷い数値だが、栄養失調の児童であるからこんなもんだ。
知力が低いのは気に入らない。
二次関数くらいならまだ解ける自信がある。
この歳でできるなら10くらいあってもいいだろ!と思う。
とは言ってもMAXが分からないので、この数値も当てにはならない。
仏力が何なのかは分からないが、0だからスキルが使えないのか?
前世は幽霊も神様も信じていなかったが、今世は閻魔様を本気で崇拝するオカルト信者である。
信仰心は数値に関係ないのか?などと考えていると、ドアがノックされた。
あの時の優しそうな相談員が入ってきた。
申し訳ない気持ちはあるが、この3日どうやって逃げるか。
実家にどうやって帰るかしか考えられなかった。
交通費や移動ルートに思案を巡らせていると思いがけない事を告げられる。
「君には正福寺の住職の世話になってもらう。」
まさかの寺住み!!!??
なんとなく保護施設に入れられると思っていた剛田である。
そもそもお寺に引き取られるなんてあるものなのか??
閻魔様の力が働いている気がしてならない。
どこぞの施設で体力回復させてから、脱走しようとしていた為、この事態は予想外である。
心配そうな表情を浮かべつつ相談員は続ける。
「私の友人のお坊さんなのだが、君の話をした際に神妙な顔で引き取りたいと急に言ってきてね。
今までそんなことなかったんだが、少し変わった奴だから…でも信用できる人だよ!」
腕を組んで考えてみる。
このスキルに寺住み…
こんな偶然あるのか…
これは閻魔様が仕組んでおられる??
逃げられない…どこかで見られてる…
地獄の沙汰待ちの亡者が溢れかえった事で、過去に遡って減らそうと考えた方だ。
ある程度意向に沿わなければ…地獄に落とされる!?!
そう思いついた瞬間に額に冷や汗が浮かぶ。
「わ、わかりました。ありがとうございます…」
暗く沈んだ清の表情を見て、心配そうにはするが問題が解決した事でホッとしたようにする相談員。
「じゃあ退院次第、家の荷物をまとめて寺に向かうで良いね?」
コクンと頷いてみせる。
「わかった。じゃあ住職にも話を通しておくよ。」




