第弐章 長ヒ夏休ミ §【夏休み2日目】
*▶︎▶︎pers.ASATO
翌日。
昼食を食べながら、女将さんの治療は、しばらくは2日おきで1回1時間〜1時間半までと決まった。毎日長時間だと心身に負担が大きすぎるだろうという配慮からだ。何から何まで至れり尽くせりで、あらためて女将さんにお礼を述べると、こんな言葉が返ってきた。
「ただね、一つ条件があります。温泉には、必ず毎日入ってもらいますよ」
なんだ、そんなことか。条件どころか、逆に嬉しいんですけど。
「あのね頼光くん、うちの温泉にも薬効みたいなものがあるの。治療の一環なのよ。だからうちでは霊泉って呼んでいるわ」
「そうなんですね、ヒナギさん。おかげさまで僕の右手のアザはもうほとんど消えましたし、これからも、女将さんのおっしゃる通りにします!」
「そうねぇ、そう言ってもらえると、あたくしもやり甲斐があるってもんさね。けどね麻人さん、手の甲のアザは、さほど大したものじゃなかったんだ。肩と背中の方は、そんな簡単なわけにゃいかないよ。いいかい、これからが本番だからね」
なるほど……これからが本番ってことは、やっぱり予定通り1ヶ月を要するってことなんだろうな。案外サクッと片づくかと期待しちゃったけど、そう都合よくはいかない、か。
「そうなのよ、残念ながらやっぱり1ヶ月はかかるわねぇ」
……この人なら心の中を覗かれてても、不思議じゃないって気になる。
「ときに麻人さん、例の試験対策の方はちゃんとやってるのかい? ヒナギはちゃんと先生やってるんだろうか」
「あ、それはご心配なく。毎日勉強会をしてますから」
「そうかい。ならまぁ、安心だね。親馬鹿かもしれないけど、この子は勉強だけは手堅くやるから」
当然、という感じでヒナギさんは胸を張る。
「ホント、助かってます」
正直なところだ。ヒナギさんには、まるで専属の家庭教師みたいな感じで大いにはかどるし、その……二人きりで勉強するなんて、これもご褒美みたいなもんだ。
「ヒナギさんはとにかく教え方が上手で、要領もいいので、午前中に3時間も勉強すれば、試験対策どころか夏休みの課題もどんどん進みます。このペースなら、課題は夏休み前半で全部終わって、後半は試験対策だけに集中できるんじゃないでしょうか」
「勉強は、ただ長い時間やればいいというものじゃないから。大事なのは、ポイントを押さえて合理的に進めるということよ」
「おやまぁ、偉そうだこと」
「いえっ! ヒナギさんのいう通りです。実際、わからなかったところが、どんどん理解できていますから。」
「そりゃ結構なことだ。けど、午前中で勉強が終わるってんなら、アルバイトも気兼ねなくできるってもんだね」
「……ん? え? ある……ばいと?」
「働かざるもの食うべからずって、昔から言うものね」
「アルバイト……するんですか?」
助けを求めるようにヒナギさんに視線を送る。ヒナギさん、スッと目をそらした!
「あんたも、治療も受けてタダメシまで喰らうって、気が引けるだろうからさ。ヒナギからも聞いてるんだろ?」
ヒナギさん、目をそらしたままだ。
「ちょうどウチも忙しい時期だから、願ったり叶ったりだよ」
「え、いや、それは……」
「善は急げだ。今日からやってみようか。ヒナギ、あんた教えてあげな」
「はい」
「いや、ちょっと、いきなりっていうのはさすがに……」
「そりゃそうか。じゃ今日はまず、ウチの仕事をざっと見学してもらおうか。ヒナギ、案内してあげるんだよ」
「わかりました」
「えっ? えっ?」
ヒナギさんは僕の手を取ると、本館に続く勝手口までグイグイ引っ張って行った。
「ちょっと……ちょっと?」
勝手口を出るや、申し訳なさそうに手を合わせるヒナギさん。
「ごめんね、頼光くん」
もうっ! ほんっとにもう、この母娘して断りきれない感じは……。
あれよあれよという間に、僕はここで、生まれて初めてのアルバイトというものをやる羽目になってしまった。
*
最初に案内されたのは、板場だった。
台所で一心に包丁を研いでいた、やたらと筋肉質のいかついオジサンが、ヒナギさんに気づいて会釈した。
「これはお嬢、どうなすったんで?」
着流しにタスキ掛け、鋭い眼光で長い包丁を持つ姿は、まるでこれから果たし合いにでも向かう武士のようだ。
「……そちらは?」
「同級生の頼光麻人くん。仔細あって明日からアルバイトで入るから、よろしく」
「ほぅ、ご学友、ですか」
凄みのある佇まいに、萎縮して言葉を失っていると、男が怒鳴りつけた。
「おい学生! 挨拶は!」
「はっ、はいっ! すみませんっ、よ、頼光麻人ですっ!」
「ったく、挨拶ってのはなぁ、目下のヤツから先にするもんだぜ」
「すみませんっ!」
「頼光くん、この人は龍銕さん。ここの板長よ」
「イタチョウってゆうと……」
「板場のカシラだよ。んなことも知らねぇのか!」
「龍銕さん、他のみんなは?」
「へい、ちょうど昼食の片付けも終わって、休憩に入ってやす。呼んで来やしょうか?」
「いえ、こちらから行きます。談話室かしら……」
「さぁ……談話室なのか、その辺ウロついてんのか……」
「いいわ、順序としては次は柄嶌さんだから、もし途中でみんなに会えたら紹介するわ」
「わかりやした。おぅ学生! ボサッとしてんじゃねぇぞ!」
「は、はぁいっ! 失礼しました!」
ヒナギさんは、また廊下に出て歩き始める。
「あの、ヒナギさん、前から思ってたんですが、この館ってやたらと廊下が長いですね。っていうか、どんだけ広いんですか?」
「あら、そう? そう思い込んでるからじゃない?」
「いやいや、広いですって。……いや、でも待てよ」
広いといえば広いのだが、前に通ったときより、今日は妙にあっさり本館に着いた気もする。まるで廊下が伸び縮みでもしてるような……いやいや、きっと近道でもしたんだろう。
「着いたわよ」
客室とは趣きのちがう質素な感じの部屋。引き戸の横に「柄嶌」と書かれた札が掛かっている。
「この部屋の名前かな……」
「柄嶌さん、よろしいですか」
部屋の名前じゃなく、人の名前? 個室なのか?
部屋の中から「どうぞ」と声がした。低めの、メリハリのある声。
引き戸を開けると、ちょうど中から襖を開けて和服の女性が出てきた。美しく髪を結い上げ、華のある佇まい。先に女将に会っていなければ、この人がそうだと思ってしまうかもしれない。
「頼光くん、ほら、ご挨拶」
ついさっき、龍銕から厳しく怒鳴られたばかりだったので、キリッと背筋を正し、深々とお辞儀をした。
「あ、明日からアルバイトでお世話になります、あの、ヒナギさんの同級生・頼光麻人ですっ!」
「あらまぁ、元気なこと。仲居頭の柄嶌です」
「柄嶌さん、この人、まったく何もわからないので、しばらくの間お目こぼしください」
「そうなのね。お嬢様が面倒をみなさるの?」
ヒナギは、少しため息をついた。
「……そうなんです。色々と行き届かないかもしれませんが、ご容赦ください」
「わかりました。私も気づいたことがあれば、遠慮なく指導しますね」
「そうしていただけると、助かります。ほら、頼光くん!」
「よろしくお願いしますっ!」
「ホホホ。まぁ結構じゃない。声が大きいのはね、ここじゃ七難隠すわよ」
「……そう、なんですか」
「陰気臭いとね、お客様が不愉快でしょう? ここは、お客様が、癒されにいらっしゃるとこだからね」
「なるほど、納得しました!」
「……けど、ちょっと固っ苦しいねぇ。下品になっちゃアレだけど、もうちょっとくだけてもいいかなぁ。あと、笑顔ね。そんな引きつった顔じゃお客様、逃げちゃうわ」
「すみません」
「謝らなくて結構。ありがとう、でいいのよ」
「わかりました! ありがとうございます!」
「うん、素直でいいじゃない。しっかりね」
「ありがとうございますっ!」
何度も頭を下げながら部屋を出、次に向かう。
「いい人ですね、柄嶌さん」
「素直ね、ホント……」
「そうなんですかね、なんかそれ、女将さんにも言われたなぁ」
「救いようがないぐらいに」
「あ、あれ? もしかして、ちがう意味で言われて……」
「彼女、怖い人よ。気をつけた方がいいと思うけど」
そういえば、柄嶌に対しては、いつになくヒナギさんの言葉遣いが丁寧だった気がする。
「あの、それで次はどなたに……」
「客室係。ちょっとショートカットするわよ」
廊下の次の曲がり角に、「STAFF ONLY」と小看板が吊るされているドアが現れた。
ヒナギさんはドアを開け、少し上り傾斜になっている廊下を進み始めた。真っ直ぐに伸びる廊下は、ずっと先まで一切窓がなく、昭和っぽい裸電球がぽつりぽつりと薄暗く照らしていて、どことなくトンネルを思わせる。どうにか足元がぼんやりとわかるような薄暗さの中、時々何かが置いてある。ほとんど影になっていて形がはっきりしないが、わずかに電球の光を照り返す部分がある。
ちょうど裸電球の真下にあるそれが、光の下で、ぼんやりと姿をさらした。ゾクっと鳥肌が立った。思わずヒナギさんに抱きつきそうになった。何とも言い難い形相の、人型のそれが、僕と目を合わせたように感じたのだ。
実は、先ほどからこの館のところどころに、廊下の端や梁の上、鴨居の隅っこなどに、不気味だがどこか愛嬌のある卓上フィギュアサイズの木彫りの人形らしきものがあった。だが、この廊下にあるものは、それよりも二回りほど大きいサイズだろうか。それにこれは、いま目があったこれは、あのキモカワイイ感じではなく、もっとオドロオドロしい形相をしている。
後ろを見返す。次に、進行方向を。同じぐらいのサイズの人型の影が、等間隔で並んでいる。その全てが同じような形相だと想像してしまった。これ、マズイ。このまま気味の悪い妄想をし続けると、またあの“戦慄の周波数”が……。僕は慌てて首を振り、妄想を吹き飛ばす。
ヒナギさんの足が止まった。
「……なにか気になることでもあるの?」
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「どうぞ」
「この、足元にある人形みたいなのは何ですか?」
「あ、これ?」
「はいっ、なかなかに不気味で……」
「不気味とか、言わない方がいいわよ」
何となくその意味を察して、僕は口を手で塞いだ。
「これは、御霊柱」
「ご、ゴリョウ……バシラ?」
「そう。ここで祓われたり浄められたりして、御霊になった元・隠魂よ」
「ゴリョウってゆうのは……」
「守り神」
「守り神、ですか? じゃあ、いいモノなんだ……」
「この館を守ってくれているモノだから、失礼なことは言わないように」
「あの、館の梁とか鴨居とか、いろんなとこにあったのも……」
「そう。すべて御霊柱よ」
「けど……この廊下のは、ちょっと気味が……じゃなかった、凄みがあるっていうか、大きさもずいぶん……」
「特に強力な御霊柱を集めてあるのよ。この先の別屋敷にケガレが入り込むとマズイでしょう」
「その別屋敷ってゆうのは……」
「居住場所。スタッフたちの」
「なるほど」
「もういいかしら。さっさと着いて来て」
守り神と聞いて少し安堵したせいか、僕は、御霊柱の一つの頭を撫でてやろうと手を伸ばした。
「触らない方がいいわよ。それ、生きてるから」
ビクッと手を引っ込める。とりあえずこの館にあるものは、迂闊に触らないようにしとこう。これ以上呪詛とかもらったらシャレにならない!
長いトンネルから出たように、ドアを開けて別館に入ったとたん、まばゆい光が差し込んで僕は思わず目を細めた。
日当たりのよい廊下。右手にはガラス戸が延々と続き、光はそこから入っていた。廊下の左手には、まるでアパートのようにドアが並んでいる。
その一番手前とその隣のドアをヒナギさんがノックすると、ほぼ同じタイミングで住人が出てきた。
首が肩に埋まっているような堅太りで、ヒナギさんより頭ひとつ小さい、双子みたいな男性が二人。
「室守頭の蜜角さんと、室守の蜜丸さんよ」
視線が、キツい。異物でも見るような……。これはやっぱり先手を打って——
「頼光麻人ですっ! ヒナギさんの同級生で、明日からアルバイトでお世話になります!」
90度に上体を折り曲げ、ビシッとお辞儀をする。よしっ、先に挨拶できたぞ。
顔を上げると……無言かぁ。
「蜜角さん、女将からの指示で明日からお世話になります。あなたの下につけると思いますから、お願いしますね」
蜜角と呼ばれた方の人、よく見るともう一人より少し年上っぽいな。ギロッてこっち見て何も言わないし。ああもう、クセ強そうだなぁ……。
角丸コンビは、ヒナギさんにだけ軽く頭を下げ、部屋に戻って行った。
この後ヒナギさんは、旅館の施設や主だった客室、大浴場なんかを案内しながら、ここの歴史などを説明してくれたのだが……まぁとにかく知れば知るほど立派な旅館で、調度品や建築もすさまじく、文化財とかになっても不思議じゃないようなところだ。
ただ……なんとなく気になっていたのだが、やっぱり肝心なことが、一切説明に出てこない。
本館ロビーに備えつけられた見事な革張りのソファで、ヒナギさんが飲み物を持ってきてくれるのを待ちながら、僕はその気になることを尋ねていいものか、迷っていた。
「おつかれさま。緊張したでしょう?」
よく冷えたレモン水をテーブルに置きながら、ヒナギさんは向かい側に腰掛けた。
大正時代に改築されたという広いロビーには大きな柱時計があり、カッチカッチと時を刻む音が館内に響いている。
高い天井はドーム型になっていて、鮮やかな色のステンドグラスが嵌っている。ロビーの壁も所々がステンドグラスになっていて、天井のものと同じ職人が作ったものだという。美しいけれど華美ではなく、それがかえって上品さを醸し出している。
ただ——
ギリギリなのだ。
おどろおどろしさと、ギリギリなのだ。
古さが持つ独特の存在感もたしかにその一因だとは思うのだが、やはり、アレに気づいてしまうと……ひとたび気づいてしまうと……。
そう、御霊柱だ。
大きな白亜の柱の陰に、アンティーク調のサイドボードの中に、キュリオケースの中の洋食器や壺の隣に、異形の形状をした御霊柱が眼を光らせているのだ。
猿がしゃがんだようなものもあれば、悪魔がポーズをとっているようなものもある。薄暗がりの中では気がつかなかったけど、こうして明るみの中で見てみると、本当に異様な姿をしている。守り神と聞いてはいても、おぞましさが消えず、膚がざわつく。
初めてここに来たときは、ただただ豪奢な高級旅館という印象しかなかったが、慣れてくるにつれて、少しずつ違和感のようなものを感じ始めている……。
ふと、ヒナギさんの視線を感じて顔を上げる。目が合うとヒナギさんはにっこり笑って言った。
「レモン水、お気に召したかしら?」
「あ、はい。とっても爽やかで、美味しかった! 一気に飲んでしまいました」
ヒナギさん、ずっとこっちを見てなかったか? 慌てて笑顔を取り繕わなかったか?
「そう、よかった。お水は井戸水。レモンはね、うちの畑で採れたものなの」
「ハーブだけじゃなく、レモンも栽培してるんですか?」
「それだけじゃないわ、いろいろ育てているわよ。じゃ、行きましょうか、畑」
本館の中庭に出ると、少し痛いぐらいの陽射しが降ってきた。
ヒナギさんと二人、中庭からそのまま続く小道を歩き、ゆったりとした傾斜の小山を登り、樹のトンネルを抜けると、一気に視界が開けた。
眼下には——広大な畑が広がっていた。
ヒナギさんが、子供のように駆け出した。畑に向かって、どんどん下り坂を駆けていく。
「ま、待ってくださーい」
——待ッテクダサァイ……。
よほど大声で叫んでいたのか、谺が帰って来る。にしても、山からというより、もっと近くから返って来たような妙な感覚……。草むらに古い小さな祠がポツンと立っているのを横目に、僕も後を追う。
「わっ……わわわぁぁぁぁっ!」
足が勝手に動いて、僕は転がるように走る。何度も転びそうになる。
ヒナギさんはすでに畑の中にズンズン入って行って、豊かな緑の作物に触れながら笑っている。
僕は、早くその隣に行きたいとはやる気持ちを抑えながら、走った。
足に力を込めて速度を落とし、空を仰ぐ。
大きく、抜けるような青空。
空がこんなに広いのは、その下にある地上が広いからなんだなと、しみじみ思った。
と、背後から突風が吹きつけ、旋風となり、砂塵を巻き上げながら空に向かって上昇した。
僕は目を守るよう、手で顔を覆いながら、旋風を仰ぎ見る。
上昇気流に乗って、うねりながら空へと吸い込まれていく土埃を見ながら、一瞬、僕の胸に不安が走った。それはなんとも言いようのない、掴もうとしても指の間をすり抜けるような不安だった。
畑の方に視線を戻すと、緑の中で、ヒナギさんが長い髪を風に靡かせて立ち、こっちを見ていた。
ずっと見ていたんだ、何も言わずに——僕は、そう直感した。
***
皆既亭翠屋、奥の間。
60畳の大広間で、黒柿を贅沢に使い見事な襖絵をあつらえた部屋は、以前は団体客用に利用されていたが、この12年ほどはまったく使われずにいる。
二つ目の、“あかずの間”である。
本屋敷の客間と同じように、大きな家紋入りの暖簾が掛けられた床の間には、一振りの太刀が黒塗りの鞘に収まって安置され、その前に布団が一揃い敷かれている。これが、現在この部屋の開放されていない理由だ。
女将が、その布団の傍に正座している。眠っている男の顔を見下ろしながら、ときどきそっと手を添える。
慈しむような、愛おしむようなその眼差しは、わずかに潤んでいる。
こうして時折ここに来て、眠り続けるその男に心の中で言葉をかけるようになってから12年。
それは、かつてはふたたび語りかけに応えてくれる日を待ち続ける歳月でもあった。
そしてそれは、700年続くこの館の存亡がかかった悲願でもあった。
かつては……。
しかしいまは、女将の願いは、別の願いにすり替わっていた。
——この人を本当に自分のものにできるなら、我は何だってしてみせる。どんなことだって……。
女将は、この男の魂が自ら閉じこもった太刀——鳴髪ノ剣——に向かって、また決意を新たにした。
「あなた。きっとこの胸に抱いて差し上げますからね。この我が、必ず……」
女将は、眠り続けるその男の唇を撫でてから、すっくと立ち上がり、奥の間を出て行った。




