表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それは禁句です! 〜私の想いはだだ下がりましたので、私から身を引かせて頂きます〜  作者: 悠木 源基


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/25

24 恋人達の視点

これで完結です。

読んで下さってありがとうございます。

 


 結局、サプライズパーティーは、ローゼン公爵家のサプライズがあまりにも衝撃的だったので、そこでお開きになった。

 ただし、箝口令が敷かれ、パーティー内で起きた事が外部に漏れた場合は、全体責任にするとされた。

 

 しかし、ローゼン公爵家とリリースリー公爵家、ヘルツ候爵家、エローベンス辺境伯の者達はその場に残され、大サロンから、より小狭な部屋へと移動させられた。そして王族が現れるのを待ったのだが・・・

 

「ねぇ、アマンド、これはどういうことなの? 貴方が私の弟だなんて嘘よね? 何かの間違いよね?」

 

 シャルロッテはアマンドに縋り付きながら泣き喚いていた。しかし、アマンドは冷めた目でただ彼女を見下ろしていたが、やがてこう言った。

 

「私も貴女のような人を姉だなんて思ってはいませんが、血の繋がりから言えば姉弟なのでしょうね。先程の私の系譜を貴女も確認したでしょう?」

 

「何故? 何故そんなに平気でいられるの?私達姉弟だったら結婚出来ないのよ?」

 

「では、もう一度確認してみましょうよ。貴女の系譜を調べればはっきりするでしょう?」

 

 アマンドの言葉にシャルロッテは頷いた。リリースリー公爵夫妻も止めなかった。しかしこれが、リリースリー公爵とシャルロッテをさらに追いつめるとも知らずに。

 

 シェリーメイは両手を組んで、数分ブツブツと呪文を唱えた後、両手を広げて薄緑色の紙の上部にかざした。掌からは金色の光が放たれて、紙の表面を照らした。

 リリースリー公爵夫人が自分のブローチを外し、そのピンの先で娘の左手の人差し指の指先を刺した。そして娘の震えるその指を紙の真上にかざした。

 

 ポタリ・・・

  

 赤い丸い粒が薄緑色の紙の真ん中に落ちていった。

 

 すると紙の上の血の点は、ジワジワと上下左右に伸びていくと、やがて家系図を表し、人の氏名を次々と浮き上がらせていった。その家系図には三世代前までのものが記されていた。

 

 シャルロッテの父はアランティス、叔母はエレン、そして父方の祖父と祖母の名前・・・

 

 シャルロッテの母はエリザベート、母方の祖父の名前はディート=ヘッセマン、祖母の名前はアンナ・・・

 

 そして弟はアマンド=ドーテ=エローベンス・・・

 

 

 シャルロッテとアランティス=リリースリーの父娘は驚愕の表情で抱き合い、崩れ落ちた。

 

 アマンドは本当に弟だった。

 そして彼女は元国王陛下の孫ではなかった。

 

 アマンドはアランティスとあの卑しい女との息子だった。しかも、娘のシャルロッテも伯爵の出とはいえ、平民の血を引く男の孫だった。我が国の王族の血など引いてはいなかった。

 そして、妻は王族の血を引いているとはいえ、それは隣国の王族の血だけだった。

 

 自分が今まで大切に守り続けた物は、一体なんだったのだろうか。

 

 そんな二人を周りの人物達はただ冷たく見つめていた。ただ、アマンドがこう言った。

 

「シャルロッテ姉さま、私は貴女にこう言いました。

 貴女の事を心から愛しています。

 世界中で貴女が一番好きです。

 一生僕には貴女だけです。

 と。

 何故こんな言葉に貴女は騙されたのですか?

 貴女はいつもこの言葉で多くの男性をもてあそんできたというのに。

 私は本当に愛する人には、こんな安っぽい言葉を囁いたりしませんよ」

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 王城の地下の中にある貴族専用の牢。リリースリー元公爵アランティスはその中にいた。

 ローゼン公爵家とヘルツ侯爵家、そしてシュバイン伯爵家の人間、つまり血の繋がった実の息子と甥や姪達によって罪を全て暴かれて逮捕されたのである。そして彼らの手助けをしたのは実の妹と妻だった。

 

 彼は死刑を望んだ。罪人として生き恥を晒して生きるなんて耐えられなかった。それに実際に人を二人、いや実質三人も殺しているのだから死刑になるべきだと思った。

 そう。ここ数年、自分が死に追いやった執事、元聖女、そしてマリエッタが夢の中に現れて、夜もまともに眠れない。早く楽になりたかった。

 ところが、裁判官にこう言われた。殺害したのが一人だけでは死刑にはできない決まりなんですよ。

 一瞬意味がわからなかった。

 

 後で役人から聞いた説明によると、焼き殺したと思っていた元聖女は生きており、あの焼死体は前日に亡くなっていた女性の遺体だったという。

 そして、マリエッタも川に流されていたところを救助されていた。しかし彼女はそれを誰にも告げず、夫と娘への懺悔の為に修道院に入ったらしい。

 しかしアランティスが一番驚いたのは、彼が放火を命じたあの教会の隣の孤児院で、アマンドが暮らしていたという事実だった。

 

「実の息子を殺していたら、間違いなく死刑になれたのにね」

 

 役人からこう皮肉のこもった言葉を言われた時、罪の重さに彼は震えが止まらなかった。

 

 

 投獄された数日後、妻と養子縁組をした甥のヘルマンが面会に来た。

 

 リリースリー公爵家は断絶は免れたが伯爵家に降格され、領地も半分になったという。ヘルマンはこれから罪滅ぼしの為に社会起業家として、人々の役に立つ仕事をするつもりだと言った。そして、いつかゲルトー教会と孤児院を再建したいと。

 

 妻のエリザベートは、実の母親である元王妃のアンナと、娘のシャルロッテと共に修道院へ入ると言ったので、アランティスは驚いた。

 大罪を犯した母親はともかく、何の罪も犯していない妹まで修道院へ送るとは、なんて無慈悲な男なのだ、とアランティスは国王陛下を罵った。

 

 あのサプライズの内容を国王は始めから分かっていたに違いない。スムーズに進み過ぎたあの流れを思えば、一目瞭然だ。多分、彼は自分の母親が父親を裏切っていた事に気付いていたのだろう。そして、過去の第一王子の追放も母親の策略による結果だと言う事に。

 

 前国王陛下は全てを分かっていらしたと思う。しかしそれを自分の心の中にとどめられ、出来る範囲内で二人の妻を守っていらしたのだ。そして、不義の子も。

 何故かそれがマリエッタの夫の姿と重なった。

 トーマス=エドワード・・・自分を信じず傷付けた妻と、自分を陥れた男の子だと分かっていながら、愛し見守り続けた。

 

 それなのに、私の事はともかく、何故今更母親の罪を暴いたのだ。妹の事は考えなかったのか。

 

 しかし、エリザベートは微笑みながら言った。兄は私には咎がないと言ったが、夫や娘を悪路から正しい道へと導けなかった責任があると、自ら望んだのだという。

 それに、人生のほとんどを自分の為に生きてきた実父のディートに、これからは新たな人生を生きてもらいたいとも言った。

 

 そして母親もまた、罪悪感にずっと苦しんでいた。それを兄は解放してやりたかったのだと。例え冷酷非情な王と呼ばれようとも。

 

 あの場では、お兄様はご自分の系譜は皆様には見せなかったでしょう?

 シャルロッテの系譜も来賓の皆様が居なくなってからだし。一応、私達のプライバシーは守って下さったのですよ、と笑った。

 

 それに修道院には母や娘だけでなく、知人も沢山いて楽しくなりそうだとエリザベートは言った。

 なんでもその修道院には、母親アンナのライバルであった前国王陛下の側室や、マリエッタもいるのだという。敵味方入り交じっているようで、想像しただけでアランティスは空恐ろしくなったが。

 

 別れ際にアランティスはエリザベートにこう尋ねた。自分はどうすれば君に愛されたのかと。

 すると、エリザベートは哀しげに微笑んでこう答えた。

 

「私は貴方を愛していました。けれど、貴方の方が私を愛してくれなかったのよ。

 シャルロッテが生まれた時、貴男は大喜びしながらこう言ったの。先妻様との間に子供を作らないで良かったって。伯爵家の血を我が家に入れたくないからって。

 でも、確証はなかったけれど、自分は本当は護衛騎士のディート様の娘ではないかと疑っていたの。シャルロッテの瞳の色が彼と同じアイスブルーだったから。

 だからこの事実がわかったら、きっと私や娘は貴方に嫌われてしまう。そう思うと、とても不安で辛かった。貴女が血筋ではなく、私自身を見ていてくれていたなら、ずっと私も貴方を愛し続けられたと思うわ」

 

 それを聞いて、アランティスは滂沱の涙を流したのだった。

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「マリエッタ様とお会いして、如何でしたか? お辛くはなかったですか?」

 

 母親との面会を終えて修道院から出てきたシェリーメイにアマンドがこう尋ねると、彼女は小さく笑った。

 

「辛いどころか、今まで言えなかった事を全て言ってやれたからせいせいしたわ。母親が大泣きしたから、修道院長様まで現れて、ほどほどにしてやって欲しいと言われてしまったけれど」

 

 普段クールで表情を変えないアマンドも、さすがに驚いた顔をした。誰にでも優しく、温和な態度で接する主が、相手を号泣させるほど責めるとは、想像がつかなかった。いくら家族を崩壊させ、父親と自分を傷付けた母親とはいえ。

 

 ローゼン公爵家の馬車に乗り込んでから、アマンドは主に向かってこう言った。

 

「シェリーメイ様。お願いがあります」

 

「まぁ、貴方がお願い事をするなんて珍しいわね。何かしら?」

 

 真剣な顔つきをしているアマンドに対し、シェリーメイはいつものふんわりした微笑みを浮かべ、小首を傾げた。

 

「シェリーメイ様。どうかこの私にも、母上様におっしゃったように、心の内に溜めていらっしゃる思いを全て吐き出して下さい。そうして頂けないと、私は、私はどのように自分の罪と向かい合えばよいのかわかりません。お願いします」

 

 諸悪の根源である自分に対し、シェリーメイは今まで一度も責めた事がない。しかし、アマンドはそれが却って苦しかった。彼女の側にずっといたいが、それが彼女を苦しめるのなら、身を引くしかない。彼の願いはシェリーメイの幸せなのだから。

 

 するとシェリーメイは何故か顔を赤らめて、もじもじし始めた。

 えっ? 何故この流れで照れているのだろうか?

 初めて見る主の態度にアマンドが戸惑っていると、シェリーメイはしどろもどろにこんな事を呟き始めた。

 

「本当は貴方の気持ちを聞いてから言いたかったけれど、エルザさんやカタリーにもさっさと自分から言えと言われたし、

 三度も婚約破棄されたくせに、今更何も恥ずかしがる必要はないだろう、と師匠に呆れられたし、

 貴方にうちを辞められた困るから早めに対処するようにとフォルトさんに指示されたし・・・」

 

「えっ?」

 

「私、貴方よりも七つも年上、っていうより、もう二十四の年増で、しかもさっきも言ったように、三度も婚約破棄されているし・・・」

 

「お嬢様? 何をおっしゃっているんですか?」

 

「私、貴方にずっと側にいて欲しいの。貴方が好きなの。貴方を誰にも取られたくないの。貴方が誰かと結婚するのは嫌なの!」

 

 シェリーメイはこう叫んだ。

 あの時は、最後までは言えなかった言葉を。

 

 アマンドが復讐のためにシャルロッテと婚約、結婚すると聞いた時、シェリーメイに生まれて初めて、ドロドロとした感情が沸き起こった。

 あんな女と振りだとしても婚約なんかしないで欲しい。彼女の側に近づかないで欲しい。彼女に触れないで欲しい。激しい嫉妬心に襲われ、自分で自分の感情に驚いて、どうしたらいいのかわからなかった。

 自分が自分ではなくなるようで怖かった。自分はやはりあの母親の血が流れているのだと。

 

 それでもあの時シェリーメイは、必死に感情を押し殺してこう言ったのだ。

 

「婚約はともかく、結婚は駄目です。天を欺くなんて事は許しません」

 

 と。そしてその場を離れた。

 

 しかし、そんな困惑しているシェリーメイの後を追い、エルザは彼女の背中を優しく撫でながら、嬉しそうにこう言ったのだ。

 

「お嬢様、私は嫉妬し、動揺しているシェリーメイ様をようやく見られる事が出来て嬉しいですよ。

 お嬢様の今の感情は、人間が誰しも皆抱いているものなんですよ。そしてそれをなんとかコントロールしながら暮らしているものなんです。

 奥様は若い時に汚れたものには目を背けて、美しいものばかり見ていて、負の感情のコントロール法を知らなかった。だから、あの日、簡単に人に騙され、感情を爆発させてしまったんですよ」

 

「アマンドに対する思いは綺麗事ではないでしょう。でも、それに目を背けず、真摯に向かい合ってみて下さい。そして正直になって、勇気を持って下さい」

 

 と。

 

 アマンドは金色の大きな瞳をさらに大きく見開いた。そして顔をクシャリと歪めた。

 そして馬車の中で跪き、彼はシェリーメイの両手を取った。

 

「王宮でのあの日以降、シェリーメイ様が私の容姿に魔法をかけて下さらないので、てっきりそれは、私を嫌いだという、貴女様の意思表示なのかと思っていました」

 

「えっ? 何故そう思ったの?」

 

 シェリーメイは斜め上の発想に驚いた。

 

「あの男は罰を受けて牢へ入った。それなのに私は何の咎めも受けなかった。だから罰として髪と瞳の色を変えて下さらないのかと・・・」

 

「私、前から言っているわよね。貴方の自毛と瞳が好きだって。けれど、貴方の身の安全のために仕方なく色を変えているのよって。

 もう、世間に分かってしまって、今更変えても仕方がないからやらないだけよ? 私はそのままの貴方が好きなのだから」

 

 シェリーメイは屈んで、アマンドの金色の混じった銀髪の上に、優しく唇を落とした。アマンドは一瞬ビクッとした後で顔を上げ、幸せそうに頬を染め、今度は彼の方からシェリーメイにくちづけをした。

 そして彼女を抱き締めて、耳元でこう囁いたのだった。

 

「六年前、貴女に抱き締められ、初めて微笑んで頂いた時から、ずっとお側にいたいと願っておりました。

 どうか、私以外の方と、これ以上婚約なさらないで下さい。もう、誰かの側にいる貴女様を見るのは耐えられません。シェリーメイ様は私だけのものです」

 

 禁句を避けながら、必死にアマンドがこう言うと、嫉妬混じりのその言葉がうれしくて、シェリーメイは最近ようやく得意になってきた、幸せそうな柔らかい微笑みを溢れさせたのだった・・・

 

 シェリーメイは母親のマリエッタに、こう言い放って泣かせた。

 

 本当に父と私に申し訳ないと思うなら修道院から出て、ちゃんと社会でやり直せ。こんな所に閉じこもってただ祈っていても、それはただの自己満足だ。これ以上父を独り身のままにしておくなと・・・

 

 聖女メアリーナは罪を許され、古巣の王都の教会へ戻った。ようやく念願通り、シスターアリスと暮らせるようになった。

 そして二人で、教会や孤児院の運営と共に、王宮の聖堂改革にも力を注いだのだった。

 

 それから、カタリー=ブライトというブランドが貴族だけでなく、庶民の間でも大流行した。

 特に年末の夜、フード付ストレートマントを着て、年越しをする為に教会へ行くのが流行った。もちろん、魔女と誤解されないようにと、白い衣装だったが・・・

 ところが、彼女の店は代理人と多くの針子が仕切りっていて、オーナーのデザイナーが直接表に姿を現す事はなかった。何故なら、彼女はとある女公爵専属のデザイナーの仕事を、メインとしていた為だという。

 

 これで完結しました。

 読んで下さってありがとうございます。

 

 この後、登場人物紹介を投稿します。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ