闇ふり払われた後に訪れた光
正直、今までで一番の頑張りだったかもしれません。
闇ふり払うために臨んだ祭典時と同じ事を思いました。
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「や…ぁ…りましたよ、リューム。ご、りょ・ぅしゅさま」
息も絶え絶えのくせに勝ち誇って見せました。
「でかした。よくがんばった」
寝台にもたれ掛かってはいるものの、身動きの取れないリュームにご領主様の労いの言葉が掛かります。
頭をがしがしと撫で回されてから、額に、目蓋にと口付けを受けます。
えへへ。
シンラにするのと何一つ変わらないやり方に、リュームも尻尾があれば良かったのですがと思いました。
はい。
リューム、がんばりました!
みにゃあ、みにゃあ、みにゃあんと元気の良い産声が上がっております。
産湯を終え、その元気な歌声を響かせる子を産婆さんが抱かせてくれました。
リューム、感激のあまり涙ぐんでしまいました。
幾度も幾度も赤ちゃんに唇を寄せました。
髪の毛はリュームとお揃いの、真っ黒です。
少し、くるんとしているようです。
もう少し大きくなれば、ハッキリするでしょうか。
小さな指に、小さな爪は薄く血の通った色です。
小さくて愛しい、リュームとご領主様の赤ちゃん!
愛しい! 愛しい! 愛しい!
あまりの愛しさに胸が張り裂けてしまいそうでした。
赤ちゃんがうっすらと目蓋を持ち上げました。
「―――!!」
深い深い森の静けさを湛えたかのような、常緑の瞳がリュームを見つめて返してくれております。
(ああ―――! 女神様、感謝いたします)
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「ご領主様、ご覧になって下さい。エキが戻ってきましたよ。また再び、抱っこされるために」
「……エキ? 前にも言っていたな。確か猫の名前では無かったか」
「はい。エキ、猫でした。真っ黒の!」
「は? リュームまさかその名前に決める気じゃなかろうな?」
「え? いけませんか? だって、この子はエキの魂の生まれ変わりですよ」
「どこに実の娘に飼い猫の名を付ける親がいる――!!」
「エキは猫さんでしたけど、猫じゃなかったです」
「じゃあ何だという」
「魔物?」
「もっと悪い!」
「エキや、ほら、お父様ですよ~」
「うっ」
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以上がお母様にねだって聞いた、わたしが生まれた日のお父様のご様子だ。
「エキルナでどうにか落ち着きました」
お母様はいつもそう締めくくる。
わたしは、このお話が大好きだ。
幾度もねだって聞かせてもらう。
このお話を聞きながら、わたしは何て幸せな子なのだろうかと思う。
――― おやすみなさい、良い夢を。
そう呟くお母様の声を聞きながら、眠りに付く。
わたしの名前はエキルナ。
エキルナ・シェンテラン。
皆はエキって愛称で呼ぶの……。
『いきなり飛ぶのかよ。』
ええ。
二人の婚礼やら新婚生活やらは、こちらでUPは不可能です。
そんな出来具合なのでございますよ。
仮タイトルからすでに※※※禁止令発令しやがりましたよ。
お い と い て 。
シェンテラン家のエキルナちゃんの冒険が始まります★