絶対的な二人
「さァて、連れて帰ッてしまッても、いいンですがネェ……」
ふわりと、重力を感じさせない動きで、起き上がる赤い靴の女。
その視線の先に居たのは、剣姫騎士と魔法少女達。
《何とか、間に合いました、か?》
エイダが俺に尋ねる。ギリギリだが、悪くないタイミング。
ずらりと並ぶ美女の群れ。圧巻だ。
「――切り捨て御免!!」
予定通りの戦術。耐性のある剣姫騎士が前衛を務め、その補助を魔法少女が行う。
「なるほどォ、悪くなィ戦い方です」
剣姫騎士の振るう剣を、靴に付いた刃で受け止める赤い靴。
「ハァアアアア!!」
更に一人、刃を振るう。避けきれない態勢、タイミング。
――スライド。剣を伝い、物理法則を超越した挙動で刃が逆昇る。
剣の先へと瞬時に移動した彼女。攻撃を避け切り、振り切ったその隙に刃を差し込む。
「大丈夫ですか?」
「俺よりも、アイツらのが、コトだろ」
苦笑いを浮かべながら、答える。エイダは俺の肩を抱き、起こしてくれた。
視界の先では、何人もの剣姫騎士が立ち向かっては、吹き飛ばされている。
切断属性同士で殺しあってるのに、なんで吹き飛ぶんだろうあいつら。
「まぁ、死人が出なければ問題は無いですよ、しゅうちゃん」
「……そうか、アキラも来る予定か」
バレる可能性は少しでも減らしたい。そのうえでアキラが来れば戦局はかなり楽になる。
俺一人で時間稼ぎを行い、この人数でも時間稼ぎ……無意味じゃね?
《周囲への被害を考えなくて良くなりますし、逃げられない様に《結界》と呼ばれる技術もお借りしています》
魔法で抜けるぐらいの技術だろ、とも思ったが、無いよりはマシか?
《目の荒さと広さが違いますからね、二つある事で逃げ道を塞げるかと》
やってみないとわからない、か。まぁそれも確かだ。
だいぶ、楽になってきた。這うように動き、ナギを手に取る。
「悪い」
「にぃ、なんで投げたの」
不機嫌。まぁ、そうだよな突然投げ捨てられた上に、投げた側も大ケガだ。
「その、ボケてた」
「……目は覚めた?」
「ああ」
「なら、良い」
ナギを杖に、立ち上がる。
「エイダ、ありがとよ。だいぶ楽になった」
「はぁ!? 何言ってるんですか!?」
はぁ? 魔法の力で治してくれたんだろう?
まぁ、良い。時間稼ぎにしても、まだ動けるのだからやるさ。
「ャはり、ィイですね、貴方」
気が付けば、無数の剣姫騎士に囲まれている赤い靴。
俺の出る幕は無いか、とも思うが違う。余裕がある。
囲まれて居ながら、一切の傷を受けていない。
「さて、遊ビはォわり、です」
紅い靴が告げたその瞬間。
――全ての剣姫騎士と魔法少女が弾き飛んだ。
「制約ゥ? 限界ィ!? 不可能ォオ!!?」
だんだんと声を荒げながら叫ぶ赤い靴。
「越ェてこそォ!! ソウでしョう!?」
集中と言う制約を無視し、一度に一人と言う限界を超え、不可能を超えた。
「貴方と一緒なラ、どこまでも行ヶる!」
俺以外の外敵を全て排除した赤い靴が俺の元へと歩み寄る。
ゆっくりと、しっかりとした歩み。
「――さぁ、私の手を取って?」
手を差し伸べる彼女。
血濡れの紅い仮面。空いた手で、顔を染める血を払い、舐める。
情熱的なお誘い。彼女の歩む道以外は、吹き飛ばされ、千切れた四肢と露わになった内蔵が彩る醜悪な世界。
何度でも言うが、ヤベー女だなこいつは。
そんな女に、超高速の蹴りをたたき込むシルエット。
「遅れてっ! ごめんねっ!!」
赤い靴は反応していた。反応し異能を以て防ごうとしたが、それを超えての蹴り。
ヤベーのがまた一人。アキラだ。
役者は揃った、ってことだな。




