しなやすっ
《「知らない天井だ」ってのがまぁ、お約束ですよね》
「うるせぇ……」
何とか体を起こし、周囲を見渡す。本当に知らない場所だ。
小奇麗な部屋だ。電動ベッドを中心に、カード式のテレビが横に置かれた、病院の個室かのようなレイアウト。
身体は……動くようだ。両の手、両の足、指の先までしっかりと思い通りに動くし、違和感はほぼない。
《てっきり、死んでしまうかと》
簡単に死んでたまるか。まぁ、死なない程度には無茶するが。
《死ななきゃ安い、ですか?》
まぁ、そんな感じだ。
着てた服では無く、着せられているのは患者衣というんだったか?
入院患者が着せられるような服になっている。拘束衣じゃないのだけが救いだな。
「にぃ……起きたの?」
布団の中に入り込んでいたらしい。横で寝ていたナギが目を擦りながら起き上ろうとする。
「あぁ、ここは?」
「――ここは、【姫巫女】の詰所だ」
戸を開ける音と共に、サヨコさんの声が響く。
「もう、動けるのか?」
「戦闘にはまだ立てんがな」
そう言い、自嘲気味に笑って見せるサヨコ。ともかく一安心だ。
「話がある、動けるようなら付いて来い」
「なぁ、コレって」
そう言い、服を指さす。
「大きくなったな……」
「ぽっ……」
顔を赤らめ視線をそらすサヨコさんに、ワザとらしく声を上げ、顔を隠すような身振りのナギ。
「やめてくれよ! そういう反応さぁ!!」
何があったかもう、だいたいわかった。まぁ、家族相手だからさ、まだ、よかったよ、うん。
ともあれ、二人に連れられたどり着いたのは大きな会議室の様な場所でと言うか――
「ホールみたいな場所だな」
「あぁ、ホールだ」
そう言い、手渡される小さな資料。ここ、平和会議場かよ!?
そんな所に、こんな格好で居るの恥ずかしいわな。
《というか、さっき変な所から出てきましたよね?》
エレベーターで上がって来たが、大きな柱から出てきた。見返したが、エレベーターがあるようには見えない。まぁ、ウチにも馬鹿みたいにデカい地下室あるし。
「ここも国の手が入っている建物だ。必要に応じて、利用出来る」
そう言い、サヨコさんはスタスタ進んでしまう。俺は何とかそれを追うが、サヨコは壇上に一ッ跳びで上ってしまう。
ぜってぇそうやって昇る所じゃねぇよ。端を見れば段差がありソレを上る。
「ここ、会議をする場所じゃねぇだろ」
オーケストラだとか、そういう感じの事をする場所だ。数千人は入りそうな客席は、更に上部に二つの階層と席があり、笑えるほどの大きさを誇る。
「必要な大きさだ。研究者や、他の剣姫騎士にも伝えねばならない」
「あの人憑きの”穢れ”か」
「あれは、危険。それに、魔法少女」
……まぁ、そうだよなぁ。
《どうします?》
つまりは、話すか、隠すか。という事だろう。
話せば協力体制を組みやすくなる。
人体実験の様な可能性はあるが、恐らくそれは俺の役割だろう。自分がそうなるならまぁ、我慢できる。
それに、地下の彼女達を助ける事に繋がるだろう。
かの人憑きの『The END』を相手にするのは、二つの組織の力を合わせなければ不可能だ。
問題は! 俺が! 魔法少女も! しているってことを! 言うのかよ!?
ほぼ間違いなく親父にばれる。母親にも魔法少女をして居た事なんて言いたくない!
《親公認で姫騎士やってる人が面白い事言いますね》
うっせぇぞ!!
ともあれ、壇上の席に座るサヨコさんの横、促されるままに座るのだった。
……俺、この恰好で見世物にされるの?




