Y × M ―Yaiba × Magic―
そりゃそうだよなぁ。同じ獲物を相手にしているのだから、こういう事もある。
《というか、最初から気が付けた気もしますね》
アキラさん用事らしい用事ってそうない筈ですし。エイダが言うが無視だ無視。
「……にぃ、怖い」
ガントレット越しに握る天叢雲剣が震える。
恐れているのだ、『The END』の転じた者であるために、自らの天敵となり得る、無限の力を有する魔法少女を。
「大丈夫だ、安心しろ」
そういい、剣を強く握り、隣に見えるナギの幻影を撫でてやる。
半透明だけど、触れられるんだなコレ。
ナギ程の剣ですらこうなるのだ、サヨコさんの持つ天之尾羽張は既に吼え猛り、その身を縮ませている。何時もの気高い、戦に臨む者の声でなく、怯え泣き喚く小型犬のようだ。
「魔法少女……ふざけているのかッ!」
サヨコが吼える。剣をやさしく撫で、落ち着かせているが、不安が伝わるのか表情は硬い。
「ふっ、ふざけてなんてないよ!」
アキラの表情は余裕がある。調子に乗ってるって訳じゃない、まぁ強者の余裕と言う奴だ。
そして、わかるのはコレ両方とも気が付いてないな。
《恐らく剣姫騎士にも認識阻害がありますね》
俺には効かない奴な。そんなところで特別要らないよぉ……。
「その力――危険だ! 付いて来てもらう!」
そういい、剣を構えるサヨコ。その姿勢に呼応するように、アキラも構える。
アキラの選んだ戦闘流派は八極拳――何も手にはしていないが、槍術の構だ。
元より中国武術は武器を用いる。無手での訓練は武器を使うための体を作る準備に過ぎないとまで言われるほどだ。
《誰によって?》
腰を折るなよ。
あれは、間違いなく魔力によって不可視の槍を作っている。それもかなり抑えてだ。
《えぇ、魔力の流れ感じませんよ?》
構と力の入れ具合で間違いなく、長物を握っている。そうでなければああは立てない。
サヨコさんも呼吸と間合いから、相手の獲物を読んだか。飛び掛かろうとしていたその足を止める。
剣にしては少し、拳にしては遥かに遠い、その間合いで止まる。互いに動きがだんだんと小さく、呼吸を読まれぬようにと、どんどんとゆっくりとした動きに変わる。
達人級の闘いか。今自分が飛び掛かりでもすれば、バランスを崩し最も弱い俺が死ぬ。
どれほどの時間が経ったか。一分か、一時間か。それ程の緊張感。
アキラが、見え見えの呼吸をする。
サヨコはその誘いに乗った。
剣が振るわれ、その切っ先に閃光――不可視の槍が触れる。
――速い!!
アキラの返しもそうだが、サヨコの振るう剣速もまた、速い。
衝撃で空気が震える。剣が、哭く。魔力の槍がサヨコを撫でる様に砕け散る。
サヨコの足元、砕けた魔力片が突き刺さっている――それも目に見えるほどの耀きで。
「――クッ!」
サヨコが唸る様に声を上げる。そうだろうよ。
「にぃ……」
「あぁ」
――やはり強い。
アキラの手にはまた新たな不可視の槍が握られている。だが、先の打ち合いでサヨコさんの手は軽く震えている。
馬力が違った。さらには、足元の魔力片はほんの少し角度を変えればサヨコの身体を傷付けて居ただろう。
――つまり三味線を弾かれている。
「どうしたものかな」
俺は一人呟いた。
どうしたら、俺がこんな格好をしているとばれないように、逃げられるだろうか。そんなことを考えていた。




