刀化生
例えば。例えばだ、言い訳を考えているときに、その必要が無くなったら。
突然連絡が来たと言い、出て行ったアキラ。
そんな父親を尻目に、俺とナギは『The END』の出た場所へと向かった。
そりゃ、「あぁ、よかった」ってそれで終わりだよな。
いやぁ、考えがる事が減れば楽よなぁ。
《……正直、嫌な予感がしますよ、私》
何を言っているやら。
「で、こっちで合ってるのか?」
「間違いない、信じて」
そう言うナギに続く、が二十キロって結構な距離だな。
「ナギ」
「ん」
あんな格好は恥ずかしいが、間に合わない方が恥ずかしいだろう。
《剣》を掴む――すなわち、その身を変える。
ナギの内より放たれる、黒い力の奔流が植物の蔦や根の様に形を変える。ナギの体、俺の体を貫くように包む様に染め上げる。ナギはだんだんとその在り様を薄め、俺の在り様は更に色濃く、黒く、穢れに染まる。
全身を痛みと、熱が走る。
変化が変わる前に、地を蹴り、飛び上がる。少しでも風を受けたかった。
繊細に、やさしく地を蹴った。だからこそ、小さな窪みを作るだけで済んだ。
魔法少女の時とは違う、身の丈に合わない強化。意識に対しても何かしらの効果があるのだろう。これだけの力を持ち、振るう、異能の力を普通なのだと思わされている。
《そうですよ、魔法少女はクリーンな、綺麗な変身です》
しかし、自ら理解し力を乗りこなす事は可能だ。
魔法少女に比べれば射程が無いが膂力がある。また防御はかなりの物だ。
例えるなら役職概念のあるゲームの盾役。魔法少女はアクションゲームなどで良くある回数性の耐久力。こちらの方が持ち堪える力は強い。
変身を終え、家々の屋根を飛び移り、目的地に移動する。
おお、早いもんだ。魔法少女に比べればまだ遅いが。と言うか、『The END』の速度ってどうなってるんだ?
・魔法少女。時間制御機能により異常な速度で戦闘可能。
・剣姫巫女。膂力は高いが、常識の範疇での速度。
・魔法少女=『The END』=剣姫巫女
おかしいよなぁ?
《あぁ、『The END』は相手に会わせて動きますよ》
なにそれ……。
《黄金律と言うのですが、まぁいくら速くなった所で速度では勝てません。何度も試したんですよ私たちも。光の速度が最高速だというのは――》
突如途切れる声。
「にぃ」
「おう」
ナギが切ったのだろう。視界の先には『The END』。
既にサヨコが戦闘中だ。
「間に合ったみたいだな!」
「なに、一人で十分だ」
目の前には軍勢とでも言う様な数の敵。
言うよな、サヨコさんもさぁ! と、戦場の匂いに昂っている自分に気が付く。
いかんいかんと、首を振り、一息吐く。
そして、眼前のすべてが光に染まった。
「は?」
「なっ!?」
サヨコは何が何やらと言うような状態だが、俺には覚えがあった。この光、やさしくも激しいこの熱量は魔力、それも――
光が晴れた時、『The END』の姿は消え去り、俺たちの前にゆっくりと降り立つその姿。
――例えば。例えばだ、言い訳を考えているときに、その必要が無くなったら。
臓腑の瞳、マシュマロの長髪。
ウェデイングドレスのように純白で可愛らしいデザインのゴスロリ。
ゆっくりと地に降りるそれは、小さな少女の形をしていた。抱きしめれば砕けてしまいそうなほど繊細で、子細なその身体。
その顔立ちはハッとするほどに、命を吹き込まれた人形のように整っていた。
「――貴様、何者だ!!」
突如現れた、見知らぬ存在に切っ先を向けるサヨコ。
そうだな、仕方無いさ、こんなのが目の前に来れば。
――そりゃ、「あぁ、よかった」ってそれで終わりだよな。
「名乗る名は無いっ! あえて言うなら――魔法少女っ!!」
――アキラじゃねぇか!!!!!




