カア×ちゃん!
なんか、頑張ったらしい。
「……またかよ!?」
口から洩れるように呟く。気が付けば俺は帰りのバスに座っていた。
さっきさぁ! 家出てさ! なんだってふと気が付くとこんな風になるのよ!?
《魔法のおかげですよ魔法の!》
頼んでねぇ!!
一息吐いて思えば今日は一度も『The END』が一度も来なかったのか。
《……出てないことは無いのですが、動く前に消えてます》
それってなんだ? 他の魔法少女がやってくれてんのかね。
……それって、俺大丈夫なのか?
《あぁ、二期は撮り終わりましたんで今は無理に戦っていただかなくとも問題ないです》
『The END』を倒す事だけはしてたが、あんまり話として繋がっているとは思えないんだが……。
《Go!GO!チカラ戦隊形式ですよ、戦闘シーンや大切なシーンさえあればでっち上げられますんで》
そう……もう良いんじゃないかな、俺。魔法少女辞めようかな。
《御父上はやめられますが、本契約しちゃった集人さんはちょっと難しいですね》
聞いてねぇぞソレ!? だったら俺契約してねぇよ?!
《後悔はないっておっしゃってたじゃないですか!?》
物事には限度があるだろう。
まぁ、とやかく言っても続けさせられると思っていたから諦めていたさ。
しかし、なんで俺一人でバス乗ってんだろう。アキラも居ないし、六花も居ない。アキラが居ないのはちょっとビックリだ。
《自意識過剰が過ぎるでしょう……》
だとしても親にべったりの子供みたいなもんだろ、アキラは。立場は逆だが。
《御母上が帰ってくるとのことで、ケーキを買ってくるそうですよ》
そういうのが記憶から欠落するんだから、許可なく勝手に俺の意識ぶっとばすの本当にやめて欲しい。
《まぁ、考えときますよ》
考えるんじゃなくてさぁ……。
『次は~。お買いものは……』
「やべっ!?」
脳内会議をしていたが、最寄りのバス停が近い。
慌ててスイッチを押し、下りる。何とか間に合った。
「はぁ、危なかった……」
ここから数分、とぼとぼと歩けば我が家だ。
と、バスから飛び降りた俺の眼の前には二人。
特徴的な緑の長髪をした幼い少女。その隣に立つ背の高い黒髪の女性。
「あぁ、ナギ、サヨコさん。おかえりなさい」
声をかける。すると振り向く二人。
「シューにぃ、久しぶり」
眠たそうな表情のまま言葉を返すナギ。赤い鬼灯色の目が何とか必死に俺を見てる。
柔らかな眼付き、ふわふわした少女と言う感じ。
「あぁ、シュウただいま」
対して、硬い表情を崩さない小夜子さん。変わらないなこの人は。俺が幼いころからこんなんだった気がする。
鋭い眼付き、キツめ美人と言った所か。
《あぁ、はい、集人さんの女性の趣味の根源がどこかわかりました》
そういうのは要らない。
「思ったより早かったんだな」
「あぁ、予想外だ。こうまで酷いとは」
「何か食ってきたか?」
「いや、何も、食事は何とかしたが、なかなか後悔がある」
《……御母上は日本語が不自由なんですか?》
……この人は、自分と同じくらいの知能や前提知識を持って居るという前提で話をする悪癖があるだけだ。
つまり、不自由と言えば不自由だが、ソレは言い過ぎだ。
もう慣れたものだが、親父との会話はすごいぜ。カッとんだ電波と天然の会話なんてもう何話してるのか分かったもんじゃない。
「にぃ、仕事、それらでわたわた、そしたら早かった」
「なるほど」
「ごはんは、お昼は食べた。さよこの言葉は気にしないで」
「わかった」
《妹さんも得意じゃないみたいですね》
というかこの子はいつも眠そうにしてるんだ。だからほっとけないわけで。
話が終わると、ウトウトと頭を揺らすナギ。それを見て、俺は背負う。
「帰ろう、サヨコさん。もう少ししたらアキラも来る」
「そうか……ん? アキラが何か出かける用事があるのか?」
「あ、ああ! 帰ってくると聞いたからさ、ケーキ買って来るってさ」
「なるほど、らしいな」
話したくないぞ、親父が女子高校生の真似事してるって母親に。
《お話の途中で申し訳ないのですが『The END』です!》
目の前に突如現れる黒い異形の化け物達。
ソシャゲの雑なバトル導入みたいな登場しやがって!
とっさにエイダとの契約を行使し変身しようとする――が、サヨコがその旅行鞄を開き中より取り出した、長剣が『The END』の首を刎ねた。
「は!?」
「やはり、ここまで、酷いとは――予想外だ」
見る見るうちにサヨコの姿が変わる。真っ黒なレース状のドレス。薄らと肌の見えそうな程薄いドレスのその上に、また更に暗い、光を喰らう黒の鎧。しかして、頭には黄金色の皇族礼装を戴く。
黒い姫、黒い騎士――黒い姫騎士。
「やはり、ここまで『穢れ』の浸食が酷いとは!」
倒せども、倒せども、『The END』の群れは止まらない。しかし、サヨコはその剣を以て振り払う。
「我が名は、折井 小夜子! 天之尾羽張の剣姫騎士なり!」
《ツルギの……姫騎士!》
母親が姫騎士だった……。
俺は力なく、膝から崩れ落ちた。




