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親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
インターミッション
31/63

戦争と人間 


 眼前に広がる『穢れ(ケガレ)』の群。

 手に握った(ツルギ)をただ、振るう――そうして払われる塵芥(チリアクタ)


「数だけは多いか、塵共(ゴミドモ)め」

 吐き捨てるように呟く。黙々と処理するには、少し気が立っていた。

 もう一度、重たいこの剣を振り抜く。地表が露わとなり、また塵芥に隠される。


「隊列を崩すな! 怪我人が出た班は全員下がれ!」

 声を上げ、周囲を確認する。育成も終わりきっていないと言うのに、こうして戦場に出さねばならない現状。知らず知らずのうちに剣を握る手が強張っていた。


「誇りを持て! 我々こそが剣持たぬ人々のための刃だろう!」

 こうして精神論にすり替えることしか出来ない自分に歯噛みする。確かに戦場まで出てしまえば、そこでは精神論しか心を奮い立たせる術は無い。


 だからこそ、平時にこそ学ばせねばならない、戦う術を、生きる業を。


 だからこそ、生きねばならない、こんな戦場を超え、命を繋ぎ。



 先陣を切り、声を上げ、仲間を鼓舞し、敵意を集める。

 

 戦場(イクサバ)の歌、鬨の声(バトルクライ)


「我が名は、折井(おりい) 小夜子(さよこ)! 天之尾羽張(アメノオハバリ)剣姫騎士(ツルギノヒメキシ)なり!」



 そうして、敵の群れの中、ただひたすらに剣を振るい、ただひたむきに戦い続けた。

 いくらの時間が過ぎたか、いくらの塵芥を殺したか、覚えてもいない。


 気が付けば、視界から敵は消えていた。


 戦いは終り、生き残った者は数人。


「”たった”八人か」

「八人”も”残ったんです」

 何時からの付き合いになるか、同期の剣姫騎士が言う。やはり長く戦うような者ほど長く生きるわけだ。


「百人集めて、ほぼ無限の敵を相手に生存者が八人。元々今回の戦闘は全滅覚悟で皆集まっています」

「それはどの戦場でもそうだろう。死なない保障はないのだから」

 何を今更。何時だって死は隣にある。


「私も今回は駄目だと思いましたよ」

「お前が死ぬような戦場はまだ先だ」

「その前に、辞めたいものですね」

「それもまだ先の話だ」

 後続が残っていないのだ、隠居されては困る。


「……天叢雲剣(アマムラクモノツルギ)を起動する」

「それは!」

「現状、剣姫騎士で戦える人間は生き残った八人、護国の為に残した五人、計十三名。魔法少女を名乗る戦士の情報は聞いているが、不足が過ぎる」


 ゆえに、寝かしている戦力である天叢雲剣を起動する。


「天叢雲剣を起動することがどういう事がわかっているでしょう!?」

「その為に、アレを用意していたんだ」

「自分の家族でしょう……?」

「国のため、人のためだ」


 そのために、ここまで戦って来た。生きて来た。


「貴方、まともな死に方しないわ」

「こんな戦いを続けている以上、畳の上で死ねるとは思っていない」


 その言葉を最後に、皆とは別れた。



 私も、覚悟をしなくてはならない。


「もう、時間はない」


 これは、長い時間を掛けた、いずれ来る時のために準備された計画。


 ついに、集人から平和な日々を奪うことになる。そう考えると、自然と暗くなっている自分に気が付く。


「集人、楽しかったか、日常は」



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