戦士の條件
「まぁー、これで二期も完成、と言うわけで」
完成したVを再度再生し、一息吐く。
「まぁ、後は放送してみて視聴率が出るのを待って、ですね」
流れる映像。コーヒーを飲みながら、内容を再確認する。
まぁ、なんとも楽しい時間でした。
二倍速で流れる映像。一話三十分×十二話=六時間。アキラさんの活躍を主軸に展開する三文芝居。
撮影としては集人さんとの時間がメインでしたが、まぁ酷い目に会ってばかりですねこの人は。
「折井、集人」
本契約、したんですよね。私と折井集人。
あぁ、本契約って本当に、簡単にしていい事じゃなくて!!
私たち、魔道具の種族からしたら、本契約って結婚とかそういう事でして!!
まぁ、落ち着いて、ゆっくりと、関係を進めていきましょう。
集人さんにもいろいろと学んでもらう必要がありますし、今の世界の事ですとか、私達の種族のことですとか。
自分と集人さんとの契約シーン。これ、流すのかなり恥ずかしいですね。しかも足りない魔力をアキラさんから補ってるの、言うなれば『当て馬』ですよ。かなり特殊な契約シーンで、これ良いんですかねぇ……。
「まぁ、契約シーンはちょっとしたお色気シーン見たいなものですしオスシ」
特殊すぎるって言われたら否定できませんが、まぁこういうのも仕方ないでしょう。
巻き戻し、特殊エフェクトを盛り、いくらかのカットを切り取る。元データは……。このぐらいの役得、許されるでしょう。懐にしまう。
「おおい、エイダちゃーん」
「はっ! はい!!」
その瞬間に声をかけるのはちょっと酷いでしょう!?
私に声をかけてきた先輩の顔を確認し、ぺこりと一礼。なんででしょうかね、なんか後ろめたさがありますね。
彼女もまた、私と同じ種族で、かなり腕の立つ人です。
「これ、確認しておいて」
「これは?」
そう言い、ビデオテープを渡される。い、今時ビデオですか……。
「大襲撃、確かに魔法少女、特に貴方達によって鎮圧されたわ、でも変なの」
「変?」
全く見当がつかないですね。
「そう、どうも別のルールに則った、我々魔術文明とは別のシステムで戦う存在が確認されたのよ」
「なっ!? そんなことありえない!!」
――そう、ありえない。
我々、魔術文明が『The END』と戦えているのは、超越した科学技術と魔法技術の融合によるものだ。
魔法技術により、効率的に高純度のエネルギーを生成。科学技術により、『The END』の位相のズレを瞬時に計算。
高純度エネルギーを叩き込み、ズレを丁度ピッタリと零にすることで『The END』を消滅させている。
「『The END』を消滅させられるのは私たちだけのはずです!」
「だけれども、実際に観測されたのよ」
ズレがあれば『The END』はいくらでも戦うことができる。高純度のエネルギーでなければ『The END』のズレを消す事ができない。
通常の物質、純度の低いエネルギーは全て吸収されてしまう無敵の化け物。
その駆除手段を確立するまでに長い、永い時が過ぎ去った。多くの血が流れ、倫理も捨て去った。そうして生み出されたのが私たち、魔道具だ。
「とりあえず、確認しといてちょうだい」
「もし、もし本当だとして。本当にそんなシステムがあったとして……」
もし、私たちの文明以外に戦う術があるというのなら。
「じゃあ、私たちってなんですか?」
――私たちはなんで、こんな姿になってまで生きて来たんですか。
先輩は、何も言わずに去って行った。
Vの再生が終わる。チェックは終わった。もとより何度目になるかもわからないチェックだったのだ、今更何が変わるでもない。
手には、先輩から渡されたビデオテープ。内容の加工保護がなされているそれは、間違いなく真実であると告げている。これを見たとき、私は……。
ですが、見ないわけにも行かないですよね。
ため息を一つ。私はそのビデオをデッキに入れ込み、再生を始める。
そこに映っていたのは、剣を担う少女の姿だった。一人ではない、何人も居る。
剣の種類、形状も違う。一つの大剣を振るう少女、二本のダガーで舞うように戦う少女。無数の剣と無数の少女達。
皆一様にそれは少女の姿をし、まるで物語のお姫様のように煌びやかなドレスで身を包んでいた。頭部には冠。その手には似合わない剣。
剣を持ったお姫様と言うような姿。本当に戦えるのかと思ってしまいますね。ですが、その剣が触れた瞬間、砕け散る『The END』。
その戦いを見て、確信する。彼女たちは、間違いなく『戦える』。
皆同一のメカニズム、システムによって成り立つ彼女達。
「本当に、なんでこんな姿になってまで、私たちは戦ってるんですかね」
ため息が漏れる。
ただ、彼女たちも無制限に戦えるわけではないでしょう。どうやって戦っているのか、何をもって『The END』を倒しているのか。
渡された情報だけでは、まだわからないことが多すぎる。
「はぁ、現場の人間ですものね。調べろ、と」
まぁ、落ち着いて、ゆっくりと、調べていきましょう。
「何とかまだ、時間はありますしね」
伸びを一つし、席を立つ。
また、明日から集人さんで遊んでやりましょうか。そう考えると、自然と笑っている自分に気が付く。
「楽しい事は良い事です。ね、集人さん」




