表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
親父が魔法少女で俺まで巻き込まれた件  作者: フジオ
紅の魔法少女篇
22/63

いんふぇるのっ!

「うぉおおおお!?」

 叫びを上げ、『The END』からの攻撃を、六花自身を動かす事で防ぐ。


「よしっ! 後はあれを倒せば……」

「え? シュート? 何だいその姿は?」


「――え?」


 ギチギチと、油の切れた蝶番の様な不自由さで、首を回し、彼女を見る。


――今何と言った?


「シュート……だな? なんだいその姿は? しかも今のアレは何だ? 私は夢でも見て居るのか?」

「何で見えてんだよ! って言ってる場合じゃねぇな!」


 最早やけくそだ。俺はフリフリファンシーなデザインのエプロンドレスを揺らめかせながら、その拳を振るい、迫り来る敵を打つ。


――無数の足音。無数の蜘蛛、無数の獣。今まで見たことの無い、巨大な鳥型の『The END』が空には見える。今まで以上にハードな状況だ。



《無理です、時間制御は不可能です! 規模が違い過ぎます! 時空から隔離すれば一気に飲まれて、この次元ごと!》


 驚きを隠せないエイダ。俺も舌打ちを一つ。

「援軍は期待できそうか?」

 小さくつぶやき尋ねる。それにエイダは精神感応で答える。

《……援軍は来るでしょう、そしてアキラさんが来て下さればそれで終わります》

「わぁお、アキラさまさまだねぇ、じゃあそれで良いか」

 肩をすくめるジェスチャー。諦めの状態だ。

《何とかなりません? 少しでも》

「メーター見てみろ、馬鹿みたいに減ってんぞ。あの空間じゃないと戦えないって事だな」

 俺には穴の開いたバケツの様に、加速度的に無くなって行く魔力の残量が確認できた。十秒、ほどは短くはないが、言うほどは長くない。せいぜい三分か?


「氷室、大体今の状態がわかるか?」

「……シュートくんは実は女装趣味の上、そのセンスは露出狂と紙一重だと言う事をアグレッシブにカミングアウトをされた、と言う認識で合って居るだろうか?」


 その言葉を受け、自らの姿を確認する。腹の部分がぱっくりと開き、肩と脇が露出、スカートが長いのが唯一の救いか?

――いや、焼け石に水であろうと結論付ける。


 てか認識阻害はどうした……。

《この子も貴方と同じく効かない体質って事ですかね……?》

 本当に認識阻害なんてしてんのかと不安になってきた。



「……違う、危ないってことだ。それだけはわかるか?」

「確かに君は危ないな」

「おい!」

 流石に辛くなってきた。知り合いの前でこんな魔法少女の恰好をしなくてはならないと言うだけでも酷い苦痛だと言うのに。


「冗談だ、危険だな此処は、なんだいアレは……」

「あー、とりあえず、適当な所に逃げようぜ? 俺は弱いんでさ」

 そう言い、彼女に促す。しかし六花は動かない。


「嫌なのか?」

「いや、逃げたいのはやまやまなんだが……」

 そう言い、しゃがんだ状態で、もじもじとその身を揺らす。


「だが?」

「腰が抜けてしまってな……すまないが手を貸してくれないか?」

 俺に手を伸ばす彼女。それを確認すると、手を強く握り――


「……悪いな」


――思いっきり、引き上げた。六花の身体が宙に舞う。


「――なぁ!? シュート!? 何を!?」

「悪いなぁ! 足手まといは担ぐに限るッ!」

 彼女の身を肩で持ち上げると、地面を強く蹴り、校舎から飛び降りた。

「歯食い縛れ! 舌噛むぞ!」

 叫ぶ。脳裏では無数のスラスターの角度調整と、出力制御が行われていた。最高の効率を求めてだ。

 スラスターの噴射。もって二秒。その間に有る程度の距離を稼ぎたい――ならばッ!


 センサーの活動を瞬間的に強化、広域の移動物を確認、メガネの片側に出力される。最も速く、こちらに向かう存在をとらえると、そちらに向け、彼女の身体が耐えきれる、限界の出力でその身を飛ばせた。


《真逆!?》

「アキラに拾ってもらう、連絡を入れろ! 飛ばしたのはお前って事にしといてくれ!」

 相手方の速度と、こちらの速度、魔力残量の計算は既に彼の中で済んでいる。

 丁度アキラが認識し、キャッチしようとする頃には変身が解けて居ると言う寸法だ。


《と、とりあえず伝えておきます……ですが、これで助かるかはかなり怪しいですよ……》

「お、おい! シュート、これは本当に大丈夫なのか!? 助からないんじゃ……」


「――いや、助かる」

 俺は二人の不安げな声に、確信を持って応える。


「なんせ、俺が頼ってるのはアキラ(アイツ)だ――失敗するはずがないだろう?」

 にやりと笑う。魔力残量が限界を割る。その瞬間に変身が解かれる。その身に纏っていた赤い魔法少女装束は光へと消える。


「シューくんッ!!」


 そして現れるのは、純白純光、光輝なその姿。白き粒子を放ち、飛翔するその者こそ、最強無敵、無限魔力の担い手――魔法少女アキラ、その人である。


 叫びを上げたアキラ。優しく、優しく俺達を抱きとめる。甘い、ミルクの様な匂いに抱かれ、昔を思い出し、何処か懐かしさを感じる。

 今、俺と六花の身に掛かるGの大きさと言えば、それはとてつもない物であった。だが、それを軽く受け止めるアキラ。


「良かった……怪我は無いね……」

 今にも泣きそうな顔と、声で呟くアキラ。六花は先の衝撃で気を失ってしまったようで、アキラにも気付かず、静かにしている。


――情けない話だよな、嫌いだ、好きじゃない、だの言っておきながら、最後にはこうして頼っちまう。

《だけど、信じて居るのでしょう? 助けてくれる、助かると》

 ああ。それだけは信じられる。アキラは必ず俺を助けてくれると。


《それが、家族って物ですよ》

 エイダの素直な笑顔が、見えた気がした。


「……許さない」

 またアキラが小さく言葉を漏らす。俺も久々に聞く声だ。

 白い絹の様な長髪が、アキラの怒りに呼応するように、わなわなと震える。可愛らしいその顔は怒りに引き攣り、見る者に恐怖を与える。最早可愛らしさ等、感じる事は出来ない。そこには怒りの権化が在った。


――これがアキラの怒り。


 あー、血を見るなこれは。

《……今まで感じたことの無いレベルで魔力が流出してますね……何ですかコレ》

 エイダが驚きを隠せないと言った声色で尋ねる。

 怒ってるんだろうな、コイツ。前に俺が苛められてた頃にこの顔で学校に行ってクラスメイトが半分になった事があった。


《あー、って事はコレって……》

 エイダには学校直す方法考えといてくれ。悪いが、俺は疲れた。


「許さない、赦さない、ユルサナイ」

 ぶつぶつと何度も何度も同じ言葉を繰り返す。ふらりふらりとその身を揺らしながらも、近くの地面に俺と六花を寝かせると、ゆっくりと、確実に『敵』に近づく。


 全身から放出される高密度の魔力。世界に光が満ちる。光の粒子、その一つ一つが超高密度のエネル源である。それぞれが互いに引き合い、強大な塊を形成。エネルギーによる磁場、重力場が、時空間の処理を狂わせる。


 アキラの歩くアスファルトは巻き戻し映像の様にその形を固体から液体へ相転移(フェイズシフト)、顔を出す土からは無数の植物が生成される。しかし、それらは無理矢理に押し潰されるようにして、縦でなく面の方向へその成長を続ける。近隣の建造物は重力と言うアンカーを外され、地球の引力圏からの脱出を達成する。


 そんな悪夢のような現状を目に焼き付け、逃げるように眠りに就いた。


 そして、目が覚めたら、学校が更地のままで放置されていて少し泣いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ