バトル オブ 魔法少女
蜘蛛型はサイズとしては大きいが、犬に比べれば軽い。
「おらっ!」
殴ろうとも手が折れない。これは……ありがたい。
《なんか、普通な倒し方ですね》
「いいだろ勝てば!」
そういい、親父直伝の前蹴りをきめる。
前蹴り、前蹴り、前蹴り、前蹴り、回し蹴り、前蹴り。
これで八体の蜘蛛型を倒したことになる。
《ほ、本当につまらない……。小足連打……》
「勝てなきゃ無意味なんだろ」
そういい、周囲を見たわす。敵は零。これで終わりだ。
「いや、本当につまんないんですけど」
おっと、敵が増えた。エイダが下りて来たが、どうにも不機嫌だ。
「何だってそんなつまらない戦い方しかできないんですか!? 頭おかしいんじゃないですか!?」
「キルスコア稼げば俺とお前の目的が達成されるからだよ!」
敵が倒せて、俺も下りれる。何が悪い。
「もっとズッチョンズッチョンのグッチョングッチョンのエロエロな感じが良いんです!!」
「よくねぇよ!!」
そんなのは嫌だって言ってんだろう!
「はぁ……。兎に角、帰るか」
「そうですね。とりあえず帰りますか」
そうして、教室へ帰る。
学生服姿へ戻して貰い、席に座る。時間の流れが戻る――と、アラーム音。
《次の敵です! さぁ準備をしてください!》
「はえぇよ!!」
――慣れとは恐ろしいものである。
「はい、っと。一回で五匹か、結構頑張ったもんだな」
そう言い、何時かと同じ犬型の『The END』の頭部を踏み抜く。
次の敵を難なく倒し、俺もまた授業に戻った。が、また突然の『The END』の発生に呼ばれ、帰り、呼ばれを繰り返していた。
最初の頃は、その姿に戸惑って居たが、今では羞恥心などマヒしたのか、スカートを穿いていても脚を大きく広げて居る自分が居た。エイダにとっても見ていて、楽しい物では無くなったのだろう。とやかく言わなくなった。
「慣れりゃ簡単なもんだな『The END』狩りってのも」
それでも未だに長髪には慣れない。俺は深紅色の長髪を掻き上げる。
《そうやって、調子に乗ってるときが一番危険が危ないんですよ?》
「そうは言うがなぁ、残りの時間に余裕があるし、五匹相手に勝てるようになった。調子にも乗るさ」
《そう言う縛りプレイなんて出来てる時点で十分調子に乗っていて、十分危険です》
そう言い、彼女は溜息を一つ。
エイダからすれば俺は客寄せパンダでしかなかったのだろう。戦えなくてもお色気、お色気が駄目でもギャグ、そんな程度の気持ちで新規に参入させたのだ。だが予想を超え、今では戦力としてカウントできるだけの力を得て居ると言えるだろう。言えるだろう?
《そうですね、十分ですよ。そんな魔力で良くここまで戦えてるもんですよ》
「魔力って?」
《あぁ、貴方魔法の才能が無いようで、魔力零です》
この才能までないのか。親父からも武術の才能が無いとも言われたし。
「しかし、エンカウント率高すぎるだろ……。もう、出ても他所の奴呼んでくれよ、授業をちゃんと受けたいし、いい加減に氷室の誤解を解きたい」
懇願する。六花に家族に手を出す危険人物だと思われてから、そう時間が経っていないのだ、俺としても気が気でない。
《口では氷室で、思考では六花ですか……キモいですよそれ》
「うるせぇな!! 口でまで六花って言わないだけいいだろ!?」
《あぁ、もう声を荒げて。わかりましたよ、今日はもうやめましょう。自由時間で良いですよ》
そう言うと、エイダは俺を元の場所――教室へ戻し、指を一つ鳴らす。時間軸方向への移動の抵抗値を零に戻したのだ。
「――良し」
空間が普通の時間の流れに戻ったのを感じる。たった二日だと言うのに、既に何度も感じた感覚。スローモーション映像の倍率を突然一に変えた時の様に、一瞬世界が加速したように見え、その後元に戻る奇妙な錯覚。それが過ぎると俺は行動を開始する。
『すみませんが、放課後に話がありますので、時間をくれませんか』
丁重に謙った文章。必死である。故に多少の恥は気にしない。
それをノートの切れ端に書き込むと、隣に座る六花の手元に滑り込ませる。
「ん?」
それに気が付き、六花は内容を確認すると、スラスラと文章を書き込み、俺へ返す。その姿がまた様になっていると思ったが、グッと堪える。
――また変な風に思われたら、俺流石につらい……。
心の内で、涙する。
言い訳をするならば――時間が無かったのだ。
五分に一度は『The END』が発生し、自分の区画なら十五分に一度程度のペース。敵が多すぎるのだ。
(……他所の魔法少女共から獲物を奪って、恨まれまくったが……もうどうでも良い)
何より大切なのは自分だ。
自分勝手な考えのようだが、自分を助けられない人間に他人は助けられない。先ずは自分から、それは仕方のない考えだ――と、考えて居る俺の眼の前に、先の紙が投げ込まれる。
『了解 ホームルーム後にて』
事務的な返答であった。俺としても此処からでは彼女の感情を読むことが出来ず、目論見の一つが潰えてしまった形となったが、対話が可能であると言う事実を知る事が出来た。
会話も出来ないほど……って訳じゃぁ無いのはありがてぇ。
そう思う事で、自らを納得させるが、正直怖い。
だが、待つしか無いのだ、その時を。俺は疲れから来る眠気に任せ、その身を休めた。放課後まではまだ時間が在った。




