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スエドとスネブの異世界無双?!解明道中記 〜「普通なんて全部檻だ」万年床を愛する男と、キレッキレお説教の美容オタク美少女と、愉快な仲間たちの世直し旅〜  作者: 稲盛 皆藤
普通という名の檻

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炭酸ゲップと絶対城壁(後編)

 ブワッ……!!!!


「な、なに……!? 宮殿の外が眩しい!?」

 

 スネブが目を見開いて窓の外を指差した。

 その時、最果ての荒野から、隣国・バルナス王国のヴァルター王子率いる重装第一騎士団が、突如として攻め寄せて来ていたのだ。

 突撃する騎士団の背後には、彼らによって最後の食糧まで強引に徴発され、痩せこけた体でひざまずく領民たちの集落があった。「領主様のため、結界の壁を守るためだ」と自分に言い聞かせ、搾取される苦痛を「民としての普通」と信じ込まされている。


「悪魔の宮殿め! 我が王国の領土を侵す不届き者ども、全軍突撃ぃーーーっ!!」

 

 数千の騎兵の地鳴りとともに、巨大な攻城兵器である大型投石機から、猛烈な岩石と破壊の魔法が宮殿へ向けて放たれる。

 空を覆い尽くすほどの岩の雨。

 しかし——。


 ズズズズズズズ……ッ!

 

 俺が吐き出した炭酸ゲップの音響波動が空間を歪め、森の外周に構築されていた『重力城壁』の表面に、目に見えない絶対防衛の波紋が全自動で展開された。


 ドカアアアンッ!!!


 放たれた岩石や魔法攻撃が城壁の波紋に接触した瞬間、全ての運動の力が百パーセント反転した。

 投げつけた質量と魔法が、空中でピタリと停止したかと思うと、そのまま寸分違わずバルナス王国軍へと恐るべき速度で跳ね返ったのだ。

 巻き起こる爆発と悲鳴。敵の自慢の投石機と精鋭の陣形が、自分たちの攻撃によって一瞬で自滅・壊滅していく。


「なっ……何が起きたのだ!? 我らの攻撃が……全て跳ね返されただと……!?」

 

 ヴァルター王子が絶望に顔を歪め、無様に馬から転げ落ちる。

 さらに、炭酸ゲップの重力波の渦中心から、空間を破って威厳あふれる巨漢が現れた。

 分厚い赤銅色の鱗を持つ竜人族の重装剛腕武将——元・帝国の国家土木・重装防壁建設長官、ゲオルグだった。

 ゲオルグは自身の剛腕に宿る無敵の重力場を確かめると、ボロ布団にくるまる俺を見つめ、ずしんと地響きを立てて大理石の床に平伏した。


「おお……おおおっ……! これぞ神域の防壁……!

 至高の主の吐き出された『炭酸の息吹』により、あらゆる敵意を無力化する絶対重力城壁がここに完成いたしました……!」

 

 ゲオルグは熱涙を流し、大理石に額をこすりつけた。


「このゲオルグ、深遠なる神託を理解いたしました!

 無駄な抵抗の壁を捨て、敵の攻撃そのものを自滅させる絶対の理……この城壁にて、主の安眠を永遠にお守りいたしますぞ!!」


 外では、自分たちの攻撃を完全に跳ね返されたヴァルター王子と騎士団が、重力壁の前にひれ伏し、ガタガタと震えながら土下座していた。

 

「……」


 俺は、窓の外で勝手に自滅して土下座している敵軍と、勝手に感動して平伏している竜人族の武将を交互に見やり、深く、深ーく溜息をついた。


(……最悪だ。俺はただゲップを吐いてケール汁の口直しをしたかっただけなのに、完全に難攻不落の要塞都市みたいになっちまったじゃねえか。ますます目立つだろ……)

 

 袖の中から、羽毛生物が「ピヨ……?」とひょっこり顔を出し、俺の指先に残ったせんべいをポリポリと齧り直す。

 スネブは木製ボウルを握りしめたまま、青筋を立てて俺を指差した。


「スエド……あんた、またゲップひとつで世界の理を狂わせたわね!?」

 

「俺は何もしてない。ただ薄味のシチューに文句言って、炭酸飲んでゲップしただけだ」

 

「それが一番タチ悪いって言ってんでしょーーーっ!!」


 最果ての地に響き渡る、美少女のキレキレなお説教。

 俺の少しずれた偏光グラスの視界の端で、赤色の文字画面が静かに一秒刻まれた。


『システム通知:境界条件の完全防衛機能を更新。重力城壁の最終形態への移行を確認。怠惰ゲージが減少しました』

『――警告:|将来的な構造崩壊の可能性《システム・クラッシュ》。世界の残存演算フェーズ、あと77』


「やれやれ……静かにアニメも観させてもらえねぇのか。

 あれ?いつの間にか敵の魔人が殺やられてるじゃないか。

 いいところだったのに、ちぇっ」

 

 俺はボロ布団を頭までかぶり直し、せんべいをポリポリと齧りながら、再びテレビ画面へと意識を沈めていく。


 * * *

 

 ——同刻、宮殿から遠く離れた暗闇の中。

 影に溶け込むような漆黒の毛並みを持つ一匹の黒猫——『メル』が、拾ってきたナッツを前脚で転がし、ついにカリリと噛み砕いた。


『——生体認証クリア。暗殺教団の座標展開、起動を開始します』


 二つの黄金色の瞳が、妖しく三日月のように細められた。

 初日のスタートダッシュ連続投稿を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

 自堕落を極めたいスエドと、どこまでも健康で正論なスネブ。

 二人の噛み合わないようで最高に噛み合っている世直し(サボり)旅は、まだまだ始まったばかりです! 「この先の展開が楽しみ!」「二人の掛け合いをもっと読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、【ブックマーク追加】や、評価の星(☆☆☆☆☆)を押して応援していただけると、今後の執筆の大きな力になります!

 明日からも【毎日 18:10】に最新話を更新していく予定です。 果たしてスエドは無事に二度寝を守り切ることができるのか——!? どうぞお楽しみに!


【お時間のある方へ】

稲盛皆藤の他の作品でもどうぞお楽しみくださいませ。


連載 転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜 代表作

全48エピソード完結済


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