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スエドとスネブの異世界無双?!解明道中記 〜「普通なんて全部檻だ」万年床を愛する男と、キレッキレお説教の美容オタク美少女と、愉快な仲間たちの世直し旅〜  作者: 稲盛 皆藤
普通という名の檻

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炭酸ゲップと絶対城壁(前編)

 今日の窓から見える風景は、すっかり鬱蒼とした密林と化していた。

 俺の不用意な発言から生み出された『ゼルヴァの薬草大森林』から、マイナスイオンとむせ返るようなハーブの香りが、この白磁の大理石と黄金が輝く最高級宮殿へと吹き込んでくる。

 ……が、俺の敷いているパーソナルスペースは、相変わらず一ミリたりとも進歩していなかった。


「……ふむ。やっぱり長命のエルフが目的もなくダラダラ旅するアニメは名作だな。

 この圧倒的な『時間の無駄遣い感』……俺も千年間くらい、布団の中でダラダラ過ごしたいね。

 気のせいかな?生活魔法はいっぱい出てくるのに、攻撃魔法が結局一種類しか出てこない気がするんだが?」


 俺——スエドは、大理石の上に敷かれた煎餅布団に丸まり、魔法結晶テレビを観ながら『せんべい』をポリポリと噛み砕いていた。

 俺の肩の上では、コロコロと丸っこい手乗りサイズの羽毛生物が、小さな前脚でせんべいのかけらを器用につまみ、「ピヨピヨ」と幸せそうに齧っている。


「だろ、ピヨちゃん。この素朴な焼きせんべいさえあれば、もう他には何も要らないね」


 まさに、その時だった。


 ドガーンッ!!!


 宮殿の重厚な大理石の扉が、叩き割らんばかりの勢いで開け放たれた。

 

「——ス! エ! ド! また布団の中でせんべいの粉をボロボロこぼしながらアニメ観てるわねーーーっ!!」

 

 仁王立ちで怒鳴り込んできたのは、同居人の美少女・スネブだ。

 今日の彼女は、湯気が立つ木製ボウルと、例によってドロリとした深い緑色の『特製濃縮生搾りケール汁』の入ったグラスを抱えている。


「ピヨッ!? ギニャアアッ!?」

 

 緑色の凶悪な香気とスネブの大声に恐怖した羽毛生物は、秒で俺の着物の袖の中へとダイブし、ブルブルと震え出した。


「いいかげんにしなさい! 朝は温かいスープで内臓を温めるのが美肌の鉄則なのよ!」

 

 スネブはずかずかと歩み寄り、木製ボウルを俺の目の前にドカンと置いた。

 

「ほら、私が作った『オーガニック・ボーンブロスシチュー』よ! 有機ハーブと純粋コラーゲンがたっぷりなんだから!」


 俺は渋々布団から顔を出し、ボウルの中のドロドロした、いかにも『健康食品は見た目や味にはこだわってませんよ』的なシチューを木製スプーンでひとすくいして口に運ぶ。

 ……やはり味覚を探す旅に出るレベルで、味がしない。


「……薄い。味が薄すぎるぞ、スネブ。塩気という概念がキレイサッパリ欠落している」

 

「むくみは美肌の極悪な天敵なのよ!! 純白の精製塩なんて毒と同じ!

 あなたは全然運動しないんだから、高血圧になって死ぬわよ。死にたくないなら、文句を言わずに、ハーブと素材本来の出汁を感じなさーい!」

 

「素材の出汁にも限度があるだろ。これじゃお湯に雑草を浮かべただけだ。刑務所の食事のほうがまだ塩気があるぞ。行ったことは無いがな」

 

 俺が呆れ顔で吐き捨てると、スネブはニヤリと悪魔のようなドヤ顔を浮かべた。


「ふふん……せっかく私が作ったのよ。私の手料理に文句を言う反省しないスエドには罰よ!」

 

「朝イチ生搾りの『濃縮ケール酵素エキス・百パーセント原液』を一気飲みしなさい! どう!? 参ったでしょ!」

 

「ギ……ギャアアアアッ!? ケール!? ケール原液だけはご容赦をぉぉぉ!!」


 俺は顔を絶望に歪め、大根役者も真っ青な棒読み悲鳴をあげながら、差し出されたケール汁のグラスを奪うように受け取った。

 そして、ゴクッ、ゴクッ、と一気に飲み干す。


(……うひょーっ!! 無添加・無塩・生搾り百パーセントの超高濃度酵素!! 五臓六腑に生きたビタミンが染み渡るぜ……最高に体が喜んでる……ッ!!)

「くはぁっ……生きたビタミンが効くぅ〜〜……っ!(※心の声)」


「フフン! 泣くほど嫌がってるわね!

 これに懲りたら大人しくシチューを召し上がりなさーい!」

 

 スネブは大満足そうにドヤ顔で胸を張った。完全に「スエドはケールが嫌い」だと思い込んでいる彼女は、俺が裏で至福の健康エネルギーをチャージしていることなど夢にも思っていない。

 俺は口直しにと、傍らに転がっていた缶を引き寄せ、プシュッと勢いよく開けて一気に喉へと流し込んだ。

 シュワシュワと弾ける炭酸が、喉を爽快に刺激していく。

 そして——


「……ゲフッ!!!」


 豪快極まりないゲップが、俺の口から吐き出された。


「ちょっと! 朝から何飲んでんのよ! 女の子の前で盛大にゲップ吐かないで汚い!!」


「フッ……失敬。だがスネブ、お前は境界線というものの本質を分かっていない」

 

 俺は偏光グラスの端を指先でくいっと持ち上げ、自分に酔ったトーンで語り出した。


「世の中の奴らは、すぐに『壁』だの『境界』だのを作りたがる。国境、防壁、他者との隔たり……だが、そんな堅苦しい壁を作るから摩擦が起き、争いが発生するんだ。

 向かってくる力に対して、壁を立てて抵抗するから衝突する。全部受け流して無に帰せばいいのさ。そう、この炭酸の泡が空気に溶けて消えるようにな」

 

「なにゲップした直後に高尚っぽいこと語ってんのよバカ!!」


 ただの行儀の悪いゲップ。自堕落なニートの言い訳。

 ——しかし、世界を記述する基幹システムは、ボロ布団の中から吐き出されたその豪快なゲップと屁理屈を、恐るべき絶対防衛コマンドとして誤認識した。


『——音響波動コマンド【物理指向完全拡散(ベクトル・リバース)】を受理』

『——対象空間の空間反発係数を極小へ再構築。構築済みの【重力城壁】に対し、あらゆる外力的敵対の軌道を百パーセント散逸・反転させる絶対防衛領域を展開します』


(後編へつづく)

 初日のスタートダッシュ連続投稿を最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

 自堕落を極めたいスエドと、どこまでも健康で正論なスネブ。

 二人の噛み合わないようで最高に噛み合っている世直し(サボり)旅は、まだまだ始まったばかりです! 「この先の展開が楽しみ!」「二人の掛け合いをもっと読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、【ブックマーク追加】や、評価の星(☆☆☆☆☆)を押して応援していただけると、今後の執筆の大きな力になります!

 明日からは【毎日 18:10】に最新話を更新していく予定です。 果たしてスエドは無事に二度寝を守り切ることができるのか——!? どうぞお楽しみに!


【お時間のある方へ】

稲盛皆藤の他の作品でもどうぞお楽しみくださいませ。


連載 転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜 代表作

全48エピソード完結済


連載 最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜

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