↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スエドとスネブの異世界無双?!解明道中記 〜「普通なんて全部檻だ」万年床を愛する男と、キレッキレお説教の美容オタク美少女と、愉快な仲間たちの世直し旅〜  作者: 稲盛 皆藤
普通という名の檻

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/27

ホログラムの誘惑(後編)

 耳に心地よく響く、どこか芝居がかった透き通るような爽やかな声。

 

「な、なに……!? 誰よこの無駄に爽やかなイケメンは!?」

 

 スネブが素で驚いて声をあげる。

 俺はボサボサの前髪の奥で、偏光グラスの端を指先でくいっと持ち上げ、色眼鏡の奥の瞳を冷ややかに細めた。

 

(……チッ、ルエシーか)

 昔からの腐れ縁というか、とにかく顔と口だけは爽やかな胡散臭い男だ。

 表面上は恭順なイエスマンのフリをしているが、太鼓持ちみたいな顔をする奴ほど裏で何を企んでいるか分かったもんじゃない。

 

『諸国連合の重厚な関門すらその身1つですり抜けたと聞いてね。相変わらず君の規格外ぶりには感心させられるよ。だが、この先の中間文明層へ進めば、諸国連合評議会の本格的な軍勢が君たちを待ち構えている。

 ……そこでだ、親愛なる友人として、君に素晴らしい提案があるんだ』

 

 ホログラムのルエシーは、胸に手を当てて優しく語りかけてくる。

 

『この先の大渓谷の奥深くに、旧時代の遺構『安眠の聖堂』と呼ばれる隠された古代の聖域(システムノード)が存在する。

 そこへ君の神殿を接続すれば、あらゆる外敵の追撃も、世界を苛む不吉な異変すら完全に遮断され、君は永遠に誰にも邪魔されずに安眠できるんだよ。

 さあ、僕の案内(ナビゲート)に従ってその渓谷へ進むといい』

 

「えっ、本当!? 永遠に安眠できる聖堂なんてあるの!?」

 

 スネブが思わず身を乗り出す。

 だが、俺はボロ布団の中から気怠そうに鼻で笑った。

 

「……断るね。見ず知らずの爽やかイケメンのナビほど怪しいものはない。それに『永遠の安眠』なんてね、それ完全に墓場のキャッチコピーだよ。

 騙されるほうもどうかしてるね」

 

『フフ、相変わらず猜疑心が強いね。『見ず知らず』なんて言っちゃって、本当に君はいつもひどいことを平気で言うよね。だが、僕は本気で君の安眠を願っているんだよ?

 気が変わったら、いつでも僕の案内(ナビゲート)を頼るといい』

 

 爽やかな笑顔を残し、ホログラムの映像はフッと霧散した。

 

「なんなのよあいつ……親切な顔して、怪しさ満点じゃないの……!」

 

 簡単に騙されていたスネブが、いつの間にか敵愾心を向けて、腕を組んで怒り狂う。

 

 俺は偏光グラスのフレームをほんの数ミリ上へとずらした。

 ――能力表示(ステータス)画面、起動。

 偏光グラスの奥の視界に、さきほどルエシーが提示した「大渓谷の安眠の聖堂」の座標データが真っ赤な警告色で明滅していた。

 案の定だ。そこは巨大な重力落とし穴と敵の伏兵が待ち構える、完璧な詰み(デッドロック)の罠エリアである。

 

「……やれやれ。他人が用意したナビなんてのはね、人間の思考力を奪う最大の罠だよ。

 『あっちへ行けば楽になれる』『これが正解のルートだ』なんて提示された道に素直に乗るくらいなら、俺は自ら泥沼を選んで二度寝するね。自分のサボり場所くらい、俺が自分で決めるよ」

 

 ただのナビへの不平不満。

 ただの指図されたくないニートのひねくれた屁理屈。

 ——しかし、世界を記述する基幹システムは、ボロ布団の中から吐き出されたその自律拒絶の屁理屈を、絶対的なシステムオーバーライド・コマンドとして誤認識した。

 

『——言語コマンド【自己決定権の絶対行使《ナビゲーション・リファクター》】を受理』

『——対象空間の誘導座標を破棄。偽りの完璧な詰み(デッドロック)の罠を完全遮断(ブロック)し、安全圏への自律迂回経路(バイパス・ルート)を再コンパイルします』

 

 ブワッ……!!!!

 

「な、なに……!? 神殿が勝手に進路を変えた!?」

 

 スネブが窓の外を見て叫んだ。

 時速六十キロで猛進していたキャンピング・パレスは、ルリやヴァルカンが見守る中、ルエシーが誘導しようとしていた危険な大渓谷の手前でスムーズに旋回すると、青々とした安全な街道の迂回ルートへと全自動で進路を変更したのだ!

 

「素晴らしすぎます、ロード・スエド!」

 

 ヴァルカンが眼鏡をキラーンと光らせて感涙した。

 

「敵の巧妙な誘惑罠を一瞬で見抜き、神殿の自律航法を安全領域へと書き換えられるとは……! これぞ全知全能の意思!」

 

「ただナビに指図されるのがムカついたから屁理屈言っただけでしょーーーーっ!! どんなひねくれ方なのよバカ!!」

 

 スネブのキレキレなツッコミが響き渡る中、俺の偏光グラスの視界の端で、赤色の文字画面が静かに一秒刻まれた。

『——警告:|将来的な構造崩壊の可能性《システム・クラッシュ》。世界の残存演算フェーズ、あと73』

 

「やれやれ……今度こそ、二度寝の邪魔をしないでくれよ」

 

 俺はボロ布団を頭までかぶり直し、『不気味な黒い果実』をポリポリと齧りながら、再びテレビ画面へと意識を沈めていくのだった。

 

 * * *

 

 ——同刻。

 ルエシーが指し示した大渓谷の入口近くには、教団の「救済の光」を信じ込んで集まってきた大勢の避難民が身を寄せ合っていた。病と貧窮に喘ぎながらも「耐え抜けば神の救いがある」という教団の言葉を縋るように信じ、自ら罠の口へと追い詰められている惨状である。


 大渓谷の待ち伏せ地点。

 

「隊長! 標的の宮殿が接近中! ルエシー様の誘導通り、この大渓谷へ向かって一直線です!」

 

「よし! 結界の準備はいいか! 奴が谷底に入った瞬間に総攻撃をかけるぞ! 我ら諸国連合暗殺部隊の恐ろしさを骨の髄まで……」

 

「はっ! ……あ、あれ? 隊長、標的の宮殿が手前の交差点で思いっきり右折していきましたが……」

 

「え……? 来ないの……? 嘘でしょ、俺たち昨日からここで徹夜で陣形組んでたのに……」

 

 はるか遠く、ルエシーが誘い込もうとしていた大渓谷の陰で、待ち伏せしていた諸国連合の暗殺部隊と大軍勢が、何ひとつ現れない空の街道を前にアゴを外して呆然としている。

 その大渓谷の上の物陰。

 暗闇の中で、一匹の漆黒の黒猫——『メル』が、しなやかな長い尻尾を揺らしながら黄金の瞳を細めていた。

 

『……ククク。ルエシーの薄っぺらい誘導の罠すら鼻で笑って回避するか。相変わらず、理屈の通じない無茶苦茶な主だ……』

 

 メルは前脚で拾ったナッツをピンと弾くと、闇の中へ向かって静かに、だが冷酷に告げた。

 

『——教団の影の刺客三十名、罠の現場で呆然中。

 主の手を煩わせるまでもない。これより全自動清掃(裏処理)を開始する』

 

 夜の闇の中へ、黒い影が音もなく滑り出していった。

 最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!

「この先の展開が楽しみ!」「二人の掛け合いをもっと読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、【ブックマーク追加】や、評価の星(☆☆☆☆☆)を押して応援していただけると、今後の執筆の大きな力になります!

【毎日 18:10】に最新話を更新しております。 果たしてスエドは無事に二度寝を守り切ることができるのか——!? どうぞお楽しみに!


【お時間のある方へ】

稲盛皆藤の他の作品でもどうぞお楽しみくださいませ。


連載 転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜 代表作

全48エピソード完結済


連載 最強の光神(マロー)は、二度と夜を許さない。 〜絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜

全48エピソード完結済


連載 異世界カフェ~裏メニューは勝者への道~現代ストレスからの逃亡者たちが勇者パーティとなって異世界を救う件

全17エピソード完結済


連載 異世界クラウドファンディング 〜研究室の殺人事件から、舞台はドバイ、そして異世界へ〜

全28エピソード完結済


連載 『12人の侍』〜資本主義すぎて草。前世でブルシットジョブを極めた侍たちが、利他共栄主義革命を成し遂げるまでの転生未来記~

全25エピソード完結済


連載 What a way! 〜帰国子女の転生魔法士、びっくり仰天魔法で異世界を優しく変えちゃう件〜

全7エピソード完結済

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。