第6話「書店の外にも、読者はいた」
そんな本の動きを、私は書店の中からずっと見ていた。
その後、私は書店を離れた。
書店で働く前の私は、活字が本気で苦手だった。
「『名探偵コナン』を開いて、『文字、多っ』」
と思い、そのまま閉じたことすらある。
そんな私が、書店で働くようになって本を読むようになった。
そして、書店を離れたあとも、それは変わらなかった。
書店を離れてから、私はストレス発散のつもりで物語を書き始めた。
誰かに読んでもらうためというより、自分の中のものを吐き出す作業に近かった。
それでも書いたものは、いつしか小説投稿サイトに載せ、SNSで宣伝するようになっていた。
読んでほしい、という気持ちが、いつの間にか芽生えていたのだと思う。
そこで、私は書店で働いていた頃には見えていなかった世界を知った。
「え、こんなに読む人いるの?」
いくつもの作品を追いかけている人。
毎日のように誰かの作品を読んでいる人。
感想を書く人。
好きな作品の更新を待っている人。
書店で働いていた頃、私から見えていた「本を読む人」は、当然、書店に来る人だった。
棚から本を抜く人。
中を開いてみる人。
そのままレジまで持ってくる人。
けれど、自分が物語を書くようになり、投稿サイトやSNSの中に入ってみると、そこにも別の「読む人」がいた。
電子書籍を読む。
小説投稿サイトで読む。
SNSで作品を知る。
物語に触れる場所そのものが、増えていた。
「読む人がいなくなった」
そんな単純な話ではないのかもしれない。
読む場所が、変わった。
読む方法が、増えた。
そして私は、それまで書店の中からは見えなかった読者を、少しずつ見るようになった。
考えてみれば、不思議な話だ。
『名探偵コナン』を開いて、
「文字、多っ」
と閉じていた人間が。
今では、本を読んでいる。
そして。
自分で物語まで書いている。




